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    八(はち)

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    八(はち)

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    #ワンドロライシテイ03

    モブ霊 1934
    CPということで、ワンクッション挟んでポイピクに投稿します

    #モブ霊
    MobRei

    海辺の師弟ある日の休日、まとまった家事洗濯を終えた霊幻は着信履歴が多く残る相手からの電話を取った。
    「ちょっと出かけませんか?」
    その一言で目的地も聞かずに財布と鍵に携帯電話といった軽装で家を出た。
    待ち合わせのバス停からバスに乗り、電車に乗り継いで出かけた先は味玉市から少し離れた町にある海岸。
    こじんまりとだが海水浴場として利用される海岸はシーズンオフなこともあってか周りには誰も居ない。
    寄せては返す波打ちの音、目の前に広がる大海原は空と繋がっているように思える。
    よく海の色が反射して空の色も同じように青いと言われているがそれは厳密には違う。
    太陽から注がれる様々な色の光が吸収や反射により海は青く映るが、空気中や雲の中にある水分など当たると光の進む方向が変わってしまい散乱された青い光がそのまま空の色になるのだ。
    霊幻はお出かけと聞いて仕事着でもある革靴からスニーカーにして正解だった。
    アスファルトや土の地面とは違い、踏みなれず歩き辛い砂浜は奥の崖まで続いている。
    ふと砂に目をやると、単なる砂だけではないことに気がつく。
    対が見当たりそうにない二枚貝や巻き貝らしい特徴以外に元の原形が残らない貝殻。
    波に揉まれたガラス片は研摩され、丸みを帯びて表面に傷が入った曇りガラス状態になっている。
    いつしかシーグラスと呼ばれるようになったそれも砂に混じっており、同じように丸く削られた小石と色とりどりに散らばっている。
    月に照らされた夜空の星と反するように、太陽が反射した輝きが足元に広がっている。
    誰も居ない海岸はこれらすべてが貸し切りなのかと錯覚しまう。
    「……ここ」
    「前にも来ましたよね」
    「そうだな」
    数年前にとある除霊の帰りに立ち寄った程度だったが、案外と記憶に残っていたようだ。
    帰りに見かけた勢いで海に向かい、ちょうど近くに移動販売していたたこ焼き屋でたこ焼きを買って海岸近くの石階段で座って食べた。
    たこ焼きに入っていたタコの大きさがなかなかのボリュームがあったのを覚えている。
    そんな当時を懐かしんでいた霊幻は隣の茂夫に尋ねた。
    「ところで、なんで海なんだ?」
    「いえ、何となく来たかったというか……」
    「何となく」
    「僕の青春は除霊の手伝いに費やされてしまったので、今からでも取り戻そうかと」
    「……悪かった。それについては本当に申し訳なく思ってるよ」
    初めて相談に来た小学生高学年の頃から中学生へとあがっても、霊幻に呼ばれては除霊の手伝いに駆り出されていた。
    当時の相談所は廃業間際からそれなりに稼げるまでの軌道に乗っていた頃だったために霊幻としても大事な時期ではあった。
    しかし、茂夫にとっての十代の青春は人生に一度きりの大事な時期でもある。
    どちらがより重要なのかは明らかで、それもふまえての霊幻の心から謝罪である。
    「良いですよ、師匠と来れたので」
    「……良いのか?」
    「はい、だって除霊依頼の関係なく師匠と出かけたかったので」
    「……」
    これまで除霊依頼があったり、今まで出かける理由づけに依頼を持ち出したこともあったが茂夫からはそれらに変わりはないのだろう。
    それを聞いた霊幻は出かける理由のバリエーションの無さを深く反省した。
    「それに僕と師匠って付き合ってるじゃないですか」
    「……ああ、うん。そうだな」
    「付き合えるようになってからも、師匠の出かけるお誘いの理由は変わらないみたいなので……今日は僕から誘ってみました」
    「まぁ、及第点だな」
    「本当ですか!」
    一週間前くらいに師弟の延長線から二人の関係が恋人になった。
    恋人ってのはもっと甘酸っぱいものだと思っていたが、あまり日にちが経っていないのもあって霊幻は付き合っている実感がないまま過ごしていた。
    そんな矢先の茂夫からのお誘いである。
    誘い方も当日という唐突で目的地もわからないままだったが、初めての誘い方にしては霊幻的にはかなり甘くはあるが満点だった。
    「今日、師匠を海に誘ったのは海に来たら一度やってみたいことがあったんです」
    「なんだ?」
    二人で手を繋いで砂浜を歩くのかと考えていた霊幻は茂夫に誘われた手前、できる限り叶えてやりたいと思っていた。
    「その、師匠と砂浜で追いかけっこしたいと思っていたんです」
    「……そ、そうか」
    そう話す茂夫のキラキラとした眼差しに霊幻は水を差すわけにはいかず、それに応える形で霊幻は砂浜で追いかけっこを実戦するために茂夫より先に走り出した。

    その後、素晴らしい海と空の景色に一切目もくれず砂浜に足をとられながら日頃から筋トレに走りこみを欠かさない十代の全速力と、一時期は体力作りをしていたが長くは続かず年々体力も落ち気味で数日後に確実にくる筋肉痛に悩まされる三十代との圧倒的な差を見せつけられたのだった。

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    humi0312

    DONE2236、社会人になって新生活を始めたモブくんが、師匠と通話する話。
    cp感薄めだけれどモブ霊のつもりで書いています。
    シテイシティさんのお題作品です。

    故郷は、
    遠くにありて思うもの『そっちはどうだ』
     スマートフォン越しの声が抽象的にしかなりようのない質問を投げかけて、茂夫はどう答えるか考える。
    「やること多くて寝るのが遅くなってるけど、元気ですよ。生活するのって、分かってたけど大変ですね」
     笑い声とともに、そうだろうと返って来る。疲労はあれ、精神的にはまだ余裕があることが、声から伝わったのだろう。
    『飯作ってる?』
    「ごはんとお味噌汁は作りましたよ。玉ねぎと卵で。主菜は買っちゃいますけど」
    『いいじゃん、十分。あとトマトくらい切れば』
    「トマトかあ」
    『葉野菜よりか保つからさ』
     仕事が研修期間のうちに生活に慣れるよう、一人暮らしの細々としたことを教えたのは、長らくそうであったように霊幻だった。利便性と防犯面を兼ね備えた物件の見極め方に始まり、コインランドリーの活用法、面倒にならない収納の仕方。食事と清潔さは体調に直結するからと、新鮮なレタスを茎から判別する方法、野菜をたくさん採るには汁物が手軽なこと、生ゴミを出すのだけは忘れないよう習慣づけること、部屋の掃除は適当でも水回りはきちんとすべきこと、交換が簡単なボックスシーツ、スーツの手入れについては物のついでに、実にまめまめしいことこの上ない。
    1305

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