ミツイト 二人で金を出し合ってバイクを買うと決めたとき、三橋はバイク選びに対して妥協に妥協を重ねた。俺が買ったバイク雑誌の1ページ1ページを食い入るように眺め、やれ二人で乗るにはこれはちいせぇだの、見た目の割にガソリンが入らねぇ値段が高すぎると、ぶちぶち文句を言うこの男にそういうもんだと返したのは一度や二度のことではない。俺ほどではないとはいえ、あのシルエットに動かされる男心をちゃんと持っている三橋は、最初は二ケツしてもカッコイイと思えるぐらいデカいのがいいと言って譲らなかった。目当てのもの――というより、三橋が我慢できる値段のものだ。デカくてかっきーバイクはいくらでもある――が見付からないと、最後は決まって三橋は俺の顔に向かって雑誌を投げつけてきたし、俺はそれを毎回顔面で受け止め続けてきた。
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