五条誕2017 ガチャガチャガチャン。金属が激しくぶつかり合う音がする。ドアノブを乱暴に回しているのは来客だ。足音は聞こえなかったが、気配で誰が来たのか、恵はすぐに分かった。くるまっていた毛布を乱暴に押しのけ、扉に向かう。毛布に包まれていた裸足の指先に冷えた廊下がこたえる。足裏に冷たさがピリピリ電流のように伝わった。
つま先立ちで跳び上がるように進んだ。数秒のことだったが戸外の客は待ちきれないらしく、ますます強く取手を動かした。急がないとドアが壊れてしまう。そのくらいは朝飯前のはずだ。
「夜中に騒ぐのはやめてください」
「いいじゃん、ケーキ食べようよ」
「だから、声、デカいんで」
静かにしてください。顰めた小声で注意しながら恵はドアに手を伸ばす。小言なんて聞いていない五条が恵の脇をすり抜け、勝手に部屋の中に入っていった。同時に冷たい風も侵入し、恵の部屋着を冷やす。寒い。急いでドアを閉め、五条が脱ぎ散らかした靴を揃えて自分も台所へ向かった。
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