見えないお守り捜査の一環で借りた美術品を返すため、亜双義は借用元の貴族の屋敷を訪れていた。
通された部屋には、絵画に陶芸、ガラス細工…様々な美術品が置かれている。
趣味がいいのか悪いのか、多少知識はあれど審美眼までは持たない亜双義には
統一感のなさが気になった。
今回借りた美術品は中国の古い器だ。飾ってある品々をよく見ると中国、インド、それに日本のものもある。
東洋美術の収集で有名だと聞いてはいたが、その範囲は思ったよりも広いようだ。
椅子に座るよう促され、主人を待つ。
自分の周りに漂う香りに、ここにはいない師を感じていた。
訪問前、執務室にて。
亜双義から、借りた品を返しに行く旨を伝えられたバンジークスは、
何か考え込んでから、少し待つように言った。
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