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    kira2starlb1

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    kira2starlb1

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    はっぴーサン穹デー

    ネズミがチュー「あのですねぇお兄さん、僕だって暇じゃないんですよ」

    呼んだら来るだろ、と思ったら本当に来た。
    両手いっぱいの手土産を持ちながらやれやれとため息をつきながら現れたその男は、もはや腐れ縁である詐欺師のサンポだ。

    「はいこれ、食べます?」

    と押し付けられた紙袋の中に入っていたのは随分と可愛らしい缶だった。
    おおよそ中身はチョコレートやクッキーの類だろう。

    「嫌だなぁ、爆発なんてしませんよ。した方が面白かったですか?生憎急に呼び出されたものでサプライズなんて仕掛ける暇もなかったんです」

    と言うので、目の前で缶を開けて中身を確認したところ本当にただのクッキー缶だった。
    食べたら腹を壊すだろうか、それとも声がワントーン高くなったりするだろうか?
    獣の耳が生えたり、視界がモノクロになるかもしれない…けれどそれはとっても面白そうだ。

    「そんなむしゃむしゃと…僕が言うのもなんですが、詐欺師からもらった物を目の前で開けて食べ始めるのなかなかに狂ってますよ?警戒心ってものはないんですか?」

    「ある、例えば消火器の置いてある場所の前には座らないようにしてる」

    「いや違…そういう警戒心じゃなくて」

    残りはなのたちにでもあげよう、と半分食べ切ったところで蓋を閉じた。

    「歩きながら缶の中のクッキー食べる人間なんてお兄さん以外に見たことないですよ、見てて飽きないですね全く」

    と呆れた声音だったがその顔は本当に愉快そうだったのでまぁ、いっか。と思う。
    そして未だサンポの手にある重たそうな紙袋の中に注意が向いたところで、その視線に気づかれた。

    「あぁ、これは違いますよ。大事なお仕事の荷物なんですから…こっちは爆発するかもしれませんよ?ほら」

    といってこちらに押し付けようとするので、自分宛のお土産ではなかったことに落胆しながら丁重に跳ね除けた。
    それにしたって、さっきのクッキーだってどうせ貰い物だろう。彼は随分とモテるのだから。

    「サンポさ、彼女いたことあんの」

    「んぐっ、なっ…なんですかいきなり!」

    「だってお前…モテるだろ?顔いいし、性格も良くしようと思えばできるだろうし、俺のこと追いかけ回すぐらいの根気もある」

    「言い方!言い方が最悪です!まぁモテはしますよ、命狙われるぐらいには…ね?」

    と、たわいもない会話をしながら目的地へと足を進める。
    安全の保証されていない地へずんずんと進んでいく俺を、サンポは咎める事はない。

    「いいなぁ、でもモテるって大変だろ?人間不信になりそう」

    「いや…それ僕にいいますかアナタ…でもお得なことも沢山ありますよ?お金払わなくて良くなったり」

    「そうか、じゃあ俺もこの顔に免じて割引してもらおうかな」

    「………お兄さんの顔なら可能じゃないです?」

    顔目掛けて飛んできた羽虫のような敵をバットで薙ぎ倒す。
    前方の地面に転がったその物体を、サンポは道の端の方へと足で蹴り飛ばした。
    鈍い音を響かせたそれはもう二度と動くことはないだろう。

    「まあ…俺可愛いしな…」

    「そうですよぉ!だから穹さん、僕と手を組んでビジネスを…」

    などと抜かすので、バットを持っていない手で腹パンをかましておいた。
    サンポは腹が弱い…ノーガードだからだ。
    でもそんなの、あんな露出狂みたいな服を着ている方が悪い。

    「余計なこと言うと殴るぞ」

    「もう殴ってるじゃないですか!」

    「あ、いた」

    お目当てだったデカ目な素材の塊を発見する。
    さっさとバラして帰りたい、そして布団の上でゴロゴロしたい。

    「素材の塊って言い方失礼ですよ、モンスターと言えど怪物と言えど、仮にも命で」

    「ルールは破る為にある!」

    「あっ聞いちゃいませんね、はいはい」

    脳天を叩き割るように放った一撃に、後ろから飛んできた鋭い連撃があっけなく終わらせた。
    こんなものに同情してる暇はない、俺たちはさっさと前に進まなきゃいけないのだ。

    「お可哀想に、描写されることもなく儚く散っていく命…よよよ、同情しちゃいます」

    「思ってもないくせに」

    と、唇を尖らせると

    「当たり前でしょう?」

    といつもの笑顔を向けてくるサンポ。
    そうだな、こうでなくちゃ。

    「それにしたって、僕こんな一瞬で終わるようなことに呼び出されたんですか!?もっと大きい仕事で呼び出してくださいよ」

    「いいじゃん、1人で行くのもつまんないし」

    「勿論何か報酬はあるんでしょうね!?」

    と詰め寄ってくる大柄な男に対して別に今更圧なんて感じないし、財布を開く気にもならない。
    怒ったら怖いのなんて、別に知ってるし。
    これに怒られたところで肩をすくめて速攻で逃げればまだなんとかなる。
    何故なら今の俺は…足が早くなる靴を履いているから!

    「逃げようってことですか!?そうはいきませんからね!」

    「別に逃げるなんて言ってないだろ、ちょっと屈め」

    「もう、なんなんです…」

    素直に言うことを聞いて屈んだサンポの頬にキスをする。
    わかりやすいように可愛らしくちゅっ、と音を立てて。
    顔を離すと随分と間抜けな顔が目の前に現れたので思わず吹き出して、笑ってしまった。

    「は…?」

    「美少女のキスでチャラにしてよ」

    思考停止した随分なアホヅラに、面白くなってきてしまって止まらなくなったのでぽかんと開いた唇もついでに奪ってやった。

    「ほら、二倍のチューだぞ。これで許せ」

    「え……えっ?」

    「じゃあな!また呼ぶ!」

    捕まる前に逃げ出した。
    …訂正、走り出した。
    別に逃げたわけじゃない、ただまともに考えられるようになった時絶対金銭を要求されると思ったからその場から去っただけ。
    こんなに可愛い俺からキスしてもらえるなんて、サンポは随分お得な思いをしたな。

    「なっ………にがお得ですかーー!待ちなさい!」

    と本気で追いかけてくる大人に、俺は本気で逃げ出した。
    正直に言ってめちゃめちゃ面白い。
    若い俺の体力に、大人がついてこれるわけがないだろう。

    「お前がその気なら本気の鬼ごっこしよう、サンポー!」

    顔を真っ赤にして追いかけてくる鬼に、これが愉悦か…と込み上げてくる笑いが止まらなかった。


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