5/26チェミゲ掌編「慰めないでくれ」と、急にチェーザレが言った。
「何を」
「私が今後どんな目に遭って死んだとしても、心の中で私を慰めないでくれ」チェーザレは特別何かを憂いてる様子もなく世間話の調子で言った。
だから俺もそういう風に、世間話をするように返した。
「ああ」俺は言った。「そうする」
「お前が死んだときも、私は慰めたり憐れんだりしないことにする」
別にこっちからは頼んでいなかったが、今のところ死んだ後の自分の扱いに関心はないので「わかった」と返しておいた。
チェーザレは朝からベッドでごろごろしていて、俺は少し離れた椅子に掛けて話し相手をやっている。窓の外に目をやるとそれはもうバカみたいに空が晴れており、丘のふもとにある風光明媚なスポレートの街と、平穏な畑と、その向こうになだらかな山々の重なる影が見えていた。チェーザレはそれら全てに背を向けてごろごろしている。
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