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    chirohipu

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    chirohipu

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    先にあげた『ジャンキーキャンディーナイト』の双子です
    こちらもツイッターのタグ企画で書きました
    結局は自己中野郎な左馬刻さんとそれを結局は許してしまうじろちゃん
    支部にも同じものをあげてます

    #さまじろ
    upsideDown
    #R-18

    junkie childish knight『左馬刻さん真ん中バースデーって知ってる?』

    秋の終わりに来たメッセージは知らねぇ言葉で始まっていた。
    知らねぇと返すと俺の言葉など意に介さず、ポンポンと秒で返ってくる。
    『あのさ、オレと左馬刻さんの誕生日の間をとるんだって! そんでさ、オレたちの真ん中がなんと! いつだと思う?』
    なんと、の後は答え出すだろ、普通。
    面倒だが返事はしてやる。知らねぇ。
    『なんと! クリスマスイブなんだってよ! 凄くねぇ?』
    何が凄いのか分からねえが、二郎が嬉しそうだからいっか。それに画面の中からでも二郎の興奮が伝わってきて、こっちまで頬の筋肉が緩んできちまう。実際その後、ぴょんぴょん跳ねる犬のスタンプが連続で送られてきて、二郎の喜ぶ姿が重なる。
    『でさぁ』
    それまでとは一気に返信のスピードが落ちる。でさぁ、その後はなんだ?
    返事を待つ間にビールをひと缶、三本の煙草を灰にした。
    ガキのあいつは寝落ちしちまったか、風呂にでも呼ばれたか。
    朝か昼にでも見りゃ、また続きがあるだろうとソファにスマホを投げると、画面が明るくなった。
    『その日さ、終業式なんだ』
    終業式ねぇ。
    つまりはアレか。冬休みってヤツか。
    で、何が言いたい?
    分かってるけどな。分かってはいるが、あいつから言わせたい。
    『そっち行っても良い?』
    予想通りの答えにまた頬が緩む。
    二郎は普段自分からこういうことを言わねぇ。こりゃ相当頑張った方だな。そしたらきいてやらねぇと。
    大人の世界の面倒な年末進行だとかそういうのは置いといてやるか。
    しかも週末と来やがったが無理してでも空けといてやろう。
    わかった、と返事をしたあと二、三遣り取りをする。子犬が寝ているスタンプが送られてきたあとは黒い画面のままだった。





    それからは予定を空けるために怒涛の日々を送っていたが、俺様としたことが下手を打っちまった。
    かっこ悪りぃから詳細は省くが、全治一ヶ月ってとこか。事故を装った相手が得物を出してきて刺されちまった。
    刺傷と裂傷だが大したこたぁねえ。
    運転手は壁と破損した車体に足を挟まれてしばらく動けなかったが、なんとか出てきたあと俺を庇って腹を刺されてまだ入院中だ。退院したら労ってやんねぇとな。
    二台の車に挟まれた衝突事故、その後大人数を相手にした割には、俺は軽い怪我で済んだ。
    肩の脱臼に、腕の裂傷が二十針、太腿の刺し傷が十二針、足の薬指と小指の骨折、くらいだな。
    指の骨折なんて大したことねぇのに着けるギブスは膝下までの大袈裟なモンでよ。女みてぇにスカートでも穿けっつぅのか? すんげぇ不本意だが、ゆるゆるのハーフパンツしか穿けねぇのが一番クソだ。
    もう冬だぞ? さみぃっつぅの。
    風呂やらなんやらが面倒だし、上が折角の機会だからってんで入院することにした。
    まぁ表向きの仕事の方はクソみてぇに働いてたおかげで、俺が居なくてもあとは上手く回るだろうし、何よりあの事故がきっかけで潰したかった組織が一気に潰せたのが大きいだろう。久々に鉄砲玉代わりになったって訳だな。
    まぁそれよりも、だ。
    二郎になんて言い訳をするかを考えねぇといけねぇ。
    とりあえず年末だから忙しいとかなんとか、あとは出張とか接待とか会合とか、まぁとにかく二郎にとって関わり合いの無い言葉をずらずら並べると阿保みたいにあっさり了承した。
    『大人って大変なんだな! 大人ってかさ、ヤクザって普段何してんの? 表の仕事はなんとなく分かるけどさぁ〜。ヤクザの仕事ってなに? 喧嘩が仕事とかだったらウケる』
    だとよ。
    うけねぇわ。
    喧嘩が仕事って何だよ、ゲームじゃねんだぞ。勝ったら金と経験値貰える訳じゃねぇっつうの。
    ……あ? いやでも似たようなモンか。
    とりあえず松葉杖だけで歩けるようになってギブスが取れるまでは入院して、その間二郎とはメッセージと電話だけで会わなかった。
    それまでもそんな頻繁に会ったりはしなかったし、別に淋しそうにもしてなかったから大丈夫だろう。
    うけるとか言ってやがったし。
    退院したら二郎へのクリスマスプレゼントを用意しとかねぇと。
    なんか貰ったら喜ぶだろ。





    やっとギブスが取れてしばらく経った終業式の日。
    二郎のプレゼントを車に乗せて、学校まで迎えに行ってやるか。
    学校から帰ったら電車で来るっつってたし、ちょうど良いだろ。
    驚く顔も見れるしよ。
    多分このくらいだろうって時間を見計らって、校門から離れた路肩に停車する。中からぽつぽつ生徒が出てきたが二郎はまだ来ねえ。三十分待ったのは俺にしちゃ長い方だ。もうそろそろ電話で呼び出しても良いだろ。
    スマホの履歴をスクロールしてタップすると、慌てた声の二郎が出た。
    『……ちょ、なに、どしたの』
    後ろから聴こえる騒めきが遠ざかり、二郎の声が響く。誰もいねぇ場所に移動したんだろう。
    「まだ終わんねぇのか」
    『まだってなに、えっと終業式は終わったよ。ホームルームも。これからダチとメシ、』
    話してる途中で遠くからダチの声がして二郎が返事をする。
    『……ちょ、待ってあとで連絡するから先行ってて! 悪りぃ!! ……ごめん、左馬刻さん、なにどうしたのまじで』
    二郎が声をひそめて話す。
    「外、早く出てこいよ」
    『え? そと?』
    「お、あれがさっきのダチか?」
    校門から出てきた集団を見てそういうと、床を噛む上履きの音がした。
    『えっ、うそ、まじで?』
    電話の向こうでガラッと音がする。
    「あー……、どこだ?」
    『えと三階の……、ってまじかよ』
    校門より奥の校舎の窓に二郎が小さく見えたから車のウィンドウを開けて手を出してやった。
    『…………行くから、もうちょっと待ってて』
    二郎はそう言うと、俺の返事も聞かずに電話を切りやがった。
    それから十五分ほど待つと、校門から出てきた二郎が真っ直ぐ車に向かって歩いてきた。
    助手席側のドアを中から開けてやると無言で乗り込んでくる。
    「おー、おつかれさん」
    「…………うん」
    「このままヨコハマ向かうぞ。寄ってくとこあるか?」
    「ううん、だいじょぶ」
    「どうした、疲れてんのか」
    「……そうかも。ちょっと寝る。着いたら起こして」
    「おー、わかった」


    「二郎、着いたぞ」
    二郎の肩を揺するとすぐに目を開けて車から降りた。そしてそのまま何も言わず、二郎は駐車場から真っ直ぐ部屋へと向かって歩く。
    本当は二郎が乗ってすぐプレゼントを渡して、喜ぶ顔を横目に見ながら運転するはずだったが、なぁんか様子がおかしい。まじで疲れてんのかもな、と思って隠すつもりも無いプレゼントを抱えて後ろを歩いた。
    部屋につくなり二郎はシャワーを浴びに行っちまった。まじで様子がおかしいのが気になってきたが、考えても仕方ねえ。とりあえず二郎へのプレゼントを置いてソファに座る。
    まだ完治してねぇ足が鈍く痛む。
    二郎の前ではシャンと歩いていたが、今は一人だし引き摺ってもいいか。
    立ち上がって冷蔵庫から水のボトルを取り出し、痛み止めを飲んだ。
    「……あのさ、左馬刻さん風呂入って考えたけどさ、やっぱすっきりしねぇから……、」
    いつの間にか二郎が後ろに居て、話してる途中で急にやめた。
    「おー、早かったな」
    「……何飲んでんの、それ」
    二郎が俺の手元を見る。
    病院の袋をまとめて棚に突っ込んだ。
    「ビタミン剤」
    「……ふぅん」
    「んで? なんだ?」
    「…………あぁ、いや、態度悪かったなって反省した。ごめん」
    首から掛けたタオルを握って二郎が俯く。
    「別に気にしてねぇ」
    まじで気にしてねえのに。そんなことよりプレゼント見せてやれば喜ぶだろ。前にちらっと欲しいって言ってたヤツだしな。
    「ダチとさ、メシ行くって言ってたんだ。明日から休みだし。そんで一回家に帰って夜には行こうと思ってたんだけど……。迎えに来てくれたのさ、嬉しかったんだ。左馬刻さん忙しいのは分かってるし、でも、オレにも一応予定あるっつーか……。で、なんかすっきりしなくて風呂入ってちょっと考えてさ、やっぱオレの態度悪かったなって思って」
    「そうか。悪かったな」
    「……いや、うん、……それだけ、」
    「それより二郎、ここ座れ」
    キッチンからソファまで二郎の腕を引いて歩いて隣に座らせ、プレゼントの包みを持たせた。
    「開けてみろ」
    二郎が戸惑ったように動かねえ。
    「ほら、早く」
    早くお前の喜ぶ顔が見てえんだ。
    「うん、ありがと」
    紙袋から出して包装紙を慎重にめくると、目に入ったロゴに二郎の目が少しだけ輝いたように見えた。
    「これ、オレが前に言ってた……」
    二郎の肩を抱き寄せて洗い立ての髪にキスをした。
    「欲しいって言ってたろ」
    俺がそう言うと、二郎は嬉しそうな顔を一瞬浮かべたあと、さっと暗い表情になった。
    「オレ……、オレもプレゼント用意したんだ。でも家に置いてるから」
    なんだそんなことか。気にしなくて良いのによ。
    「別に良いから気にすんな」
    「…………そっ、か」
    お前が側に居たら俺はそれだけで良いんだ。
    歯のうくような事は言えねえし、口下手なのは自覚してる。
    だからせめて態度で伝わるようにしようと気をつけてるつもりだ。
    今日だってわざわざ敵地に迎えに行った。死ぬ気で予定も空けた。プレゼントも用意した。そんで今、言葉の代わりにキスやハグを贈ってる。
    それで充分伝わるだろ。


    二郎をぎゅっと抱きしめて、いつもみてぇに膝に乗せようとしたら傷のことを忘れててよ。刺し傷ってのは深いから治りが遅えんだったわ。
    バレねえように小さく唸ったはずなのに、二郎の動きがぴたっと止まった。おまけに俺の腕を掴んだ手を何度か行き来させてやがる。
    「……なに、これ」
    傷痕がケロイド状になってるそこを、二郎が指で辿って確かめる。
    「いや、別に、」
    「別に、じゃなくね?」
    別に誤魔化さなくても良いんだが、二郎のいつもと違う声色に、つい言葉が詰まっちまった。
    「何センチあんの。結構な怪我じゃねぇの? なんで黙ってんだよ。あと足。足もだよな」
    唸った時に浮かせてたケツを二郎がドスンと落とす。
    「……っぐ、」
    「あとさ、さっき引き摺ってただろ。ばれてねぇと思ってんの?」
    やべぇな、と痛みに耐えていると二郎の顔が肩に沈んだ。
    「……オレってさ、そんな信用出来ねえ?」
    は。なに言ってんだ。
    「オレさぁ、ガキだし、そんな大人のやってることなんて分かんねえけどさ、……だけど今日だってちゃんと予定終えてから来るつもりだったし」
    二郎の声が震え始める。
    「ガキにだって、付き合いとかあるし、……そりゃ左馬刻さんに比べたら大したモンじゃねぇかもしんねぇけどさ、プ、プレゼントも……、意地張って置いてきちまった、けど、」
    「二郎、俺は、」
    「でも! ……でも、ちゃんと、言ってくれよ」
    二郎の髪に手を伸ばす。
    「……いつなの、それ」
    二郎が俺の腕をなぞる。
    「…………三週間くらい前、か」
    「全治は」
    「一ヶ月」
    「……入院は」
    「先週まで」
    「なんで言ってくんなかったの」
    「……悪かった」
    「なんで」
    「言うほどのモンじゃ、」
    「言うほどのモンだろ!!」
    二郎が俺の傷痕を強く握る。
    「……っ、」
    「痛えんじゃん! まだ痛えんだろ! さっきも薬飲んでたじゃん!! なんで誤魔化すんだよ!! 言えば良いじゃんか!!」
    なんで、……なんでだ?
    ……あぁ、かっこ悪りぃからだ。
    二郎の前ではかっこ悪りぃとこなんて見せらんねえし、弱ってるところも見せらんねえだろ。
    思ったままのことを言うと近距離から
    拳が飛んできて顔面にヒットした。
    「責任とか! そういうのは知らねえよ! ガキだからな!! でもさ、迷惑だとか面倒だとか、かっこ悪りぃとか、そんなん思うなよ!!」
    責任とか知らねえって逆に潔いな。
    あー、すんげぇ男前なんだな、お前。
    「悪かった」
    「悪かったじゃねぇよバーカ! こんな時までかっこ付けんじゃねぇ!!」
    そう叫んだ二郎の拳がまた顔面にヒットして、おまけに足の先を踏ん付けやがった。
    「いいぃってぇなぁ!! オイ!」
    いくらなんでもやり過ぎだ。怪我した彼氏を労うどころか追い討ちかけてきやがるとはな。
    「なにかっこ付けて内緒にしてんだ! 心配くらいさせろ!!」
    「かっこ悪りぃだろが!! 事故装って襲われてる時点で情けねえのによ、その上刺されて入院してたとかよ!」


    釣られて俺も大声でそう言うと二郎の顔色がさっと変わった。
    「……事故? 刺された? 喧嘩じゃねえの?」
    あ、と気付いたときにはもう遅かった。諦めた俺は全てを話した。
    事故を装った二台の車にぶつけられたこと、大人数を相手にやり合ったこと、運転手はまだ入院中なことと怪我の詳細。
    全てを聞いた二郎はくしゃっと顔を歪めて俺の襟を弱く掴んだ。
    「……し、死ぬ、かも、しれなかったんじゃん…………」
    「大した怪我じゃ、」
    「まだそんなこと言うんだ」
    「いや実際、」
    「事故って大したことだろ!? 刺されたって大したことだろ!? どっちも……、どっちかだけでも死ぬかもしれないことだろ? それをさ、なんで言ってくんねぇの……」
    「心配させたくなかっ、」
    「心配くらいさせろって、さっきも言ったじゃん」
    そう言った二郎の目から涙が零れた。
    「……なんも出来ねえかもしんねぇけどさ、でも、心配くらいさせてくれても良いじゃんか」
    二郎が俺の襟から手を離して力なく項垂れた。
    「…………悪かった。これはかっこ付けてるとかじゃなくて、あー……、なんて言えば良いんだ? とにかく、悪かった」
    二郎の頭を引き寄せて肩に埋もれさせる。耳元でずびずび鼻を啜る音がして、肩口が段々濡れてくる。
    「……もう良い」
    二郎が鼻声で呟く。
    「もう、オレのしたいように、する、さっき、殴って、ちょっとだけ、すっきりした、し、もう良い」
    そういや二発殴られてんな。口ん中が切れて血の味がする。気持ち悪りぃなと思ってたら二郎の顔が近づいてきた。お、自分からキスするなんて珍しいな。
    「……ん、う、……いってぇ!」
    二郎のヤツ、キスしたついでに俺の唇の端に噛みつきやがった。
    「うるせぇ、反省しろバーカ!」
    俺の上に跨って見下ろす二郎の目からボロボロ涙が溢れ出す。終いにゃ俺の顔に涙が降ってきた。
    バーカ、と呟きながら二郎がまたキスをする。今度はぎこちない、いつもの二郎のキス。さっきまでの勢いを忘れたかのように遠慮がちに唇を触れ合わせるだけのガキっぽいのを何度か。
    「……ばか、あほ、かっこつけマン」
    罵倒の言葉が震えてんぞ。
    「自分勝手、な、自己チュー野郎」
    涙声で罵りながら、ちゅっ、ちゅっと可愛らしい音を立てる。
    「オレの予定も聞け、自己満で喜ぶ勘違いクソ野郎」
    はむっ、と自分が噛んだ傷口を甘噛みする。
    「……ふ、んぅ、もっと、言わなきゃ、いけねぇ、……こと、ちゅっ、あ、んだろ」
    二郎が傷口に舌を這わせて血と混ざった唾液を啜る。
    「こと、ばに、……しねぇと、わか、んね……、んだって」
    俺もお返しに二郎の制服のネクタイを解いて、シャツの裾をズボンから引っ張り出す。
    「オレにだっ……、て、んぁ、……さま、ときさん、の、こと、しんぱい、した、り……、よ、よろこばせ、たり、
    させろ、ってぇ、……ふ、んぅ」
    俺が二郎の身体を弄るのと同じように、二郎は俺の傷痕を確かめて触る。
    「……くちべた、なの、と、おも、ってることを、いわね……、のは、ちがうん、だ、ぞ」
    シャツのボタンがもどかしい。面倒になってシャツを捲り上げ、白い肌に吸い付いた。
    「は、……あぁ、これ、から、は、……ちゃん、と、ことば、で、つたえろ、……この、巨チン野郎」
    二郎が腰をグリッと動かして挑発する。この野郎。巨チンは褒め言葉だ。分かってんのか。
    「……こんな、ガキの、しかも、おとこなんか、抱いて、勃ってるくせに」
    ゆらゆらと腰を前後に動かして、二郎が一丁前に煽る。
    よし、そっちがその気なら迎え撃ってやる。


    「言葉が足んねえのは自覚してる」
    二郎の脇腹に噛みついて、手は胸を乱暴に弄る。
    「自分勝手で、言葉足らずで、自己中で、お前の前ではかっこつけたくて」
    たどり着いた突起を指で捻る。
    「お前に喜んでほしくて、お前になんでもしてやりたくて、お前に心配かけたくなくて、逆に怒らせて、かっこ悪りぃのが、俺だ」
    脇腹から乳首に向かって舌を這わせ、たどり着いたそこにむしゃぶり付く。
    「こんな、真っ平らな胸の、柔らかいとこなんてねぇガキの、クッソ生意気で、クソ可愛いやつの、こんな格好見て、ちんこ勃たせてんのがな」
    二郎のベルトを引き抜いてホックを外し、ファスナーを下ろす。
    「なんでお前、風呂入ったのに制服着てんだ、帰るつもりだったのかよ」
    俺と同じように硬くなったそこを揉みしだく。
    「ちがっ、部屋着、……用意すんの、わすれ、た、からぁっ……、あぁっ」
    「わざわざネクタイまで着けて、か」
    雑に結ばれたプレーンノットに指を引っ掛け、犬っころのリードみてぇに引っ張ってやる。
    「……ふ、そのほう、が、コーフン、するくせ、に」
    そうか? まぁ確かにそうかもしれん。こんなガキに、と思うと同時に、こんなガキにやられちまってることに、こんなガキを良いようにしてることに興奮してんのかも。
    「俺ァ、ブクロの番犬が、俺に懐いてることに興奮するよ」
    「はっ、変態ショタコン野郎め。噛みついてやる」
    二郎がそう言ってニヤッと笑い、俺の服のボタンを外した。傷痕を実際目にすると少しだけ顔が歪んだが、すぐに挑戦的な、それでいてすんげぇ腰にくるような目をした。
    「すっげぇエロいな、その顔」
    「……やっぱ変態ショタコン野郎じゃん。じゃあそこで見とけよ」
    二郎が舌を伸ばし、俺の腕のボコボコと盛り上がった醜い傷痕を舐める。赤黒い皮膚の隆起にそって、その自慢の舌が艶かしく動く。
    二郎の舌が俺の傷に触れるたびに、ちんこが痛いくらい膨れ上がる。
    「……じろ」
    俺が動こうとすると二郎が傷痕に噛みついた。
    「動くなって、見てろよな」
    あー……、こりゃかなりキレてんな。
    これまで他愛のない喧嘩やしょうもない言い合いはあったが、二郎が本気で怒ってるのを見たことが無かった。
    これが本気で怒ってる、『対俺用』の二郎か。
    静かに、それでいて激しく、涙も鼻水も罵倒の言葉もかっこ悪いところも全部吐き出して、くるくると表情も温度も変えていくのか。それで行き着いたのがこんなにも最高にドエロいツラなんてよ。
    さすが『対俺用』。
    俺に刺さることしかねぇわ。


    縫ったところ以外にも細かい傷がそこかしこにある。
    そこをひとつひとつ大切なもののように二郎が舐め上げていく。傷を癒すように、俺を煽るように舐めながら、手元はバックルを外し、ベルトを引き抜いて、ファスナーを性急に下ろそうとするが、パンパンに勃ち上がったちんこが邪魔をして中々うまくいかねぇ。
    「じろ、引っかかって痛え」
    腰を突き上げて催促すると、二郎は笑って俺の股間を指で弾いた。
    「動くなっつったじゃん」
    そんな生意気な言葉とは裏腹に、二郎が鼻先を貼ったテントの先に埋める。
    「……あは、すげぇ匂い」
    さっきまで全部の感情をぶつけて泣いていたとは思えねえ。
    「じろう……」
    堪んねえ。早くその口の中に、お前の腹の中に俺を入れてくれ。
    「もー、わがままちんこだな〜」
    口ぶりは余裕そうだが、お前の顔も興奮しきって真っ赤になってんぞ。
    ファスナーが下されて染みのついたボクサーが露わになると、二郎はそこに迷いなく口を付けた。
    いや、そんな可愛いモンじゃねぇな。
    正しくは、噛みついた、だ。
    文字通り、歯を立てて。
    痛みと快楽と、その向こうに見える二郎のとんでもねぇ本性に、今すぐにでも出ちまいそうになる。だが本性はどうでも実技が伴っちゃねえ。
    ソファに放り投げた二郎のベルトを拾い上げて、未だに俺の腕の傷痕を握る手を縛り上げる。
    「このバックルんとこ噛むヤツ、誰がこんな布のベルト使うんだって思ってたけどよ、案外役に立つモンだな」
    金属の歯が繊維を噛んで、ほどよく締まる。
    「縛るなんてまじ変態じゃん」
    そんなことを言いつつ、二郎もこの先を期待した目で俺を見る。
    「んじゃ、変態らしいこと追加してやるよ」
    床に落ちているネクタイを拾い上げ、二郎の色違いの目を覆って立ち上がる。ベルトを持って上にあげると、二郎の腕も必然的に上がる。床に膝をつき、腕を縛られた姿を見るとこれ以上ねぇってくらい張り詰めてたモンにまた血が通う。
    ふたつの色を隠された二郎は期待と不安に満ちたような言葉を吐いた。
    「ねぇ、なにすんの、ってなにされんの、オレ」
    そう言って不安を隠すように口元だけは生意気にも笑ったように見せる。
    「……歯ァ立てんな、よっ!」
    拘束されて何も見えない二郎の口にガチガチのちんぽを突っ込んだ。
    うぐぅ、と反射で締めた喉奥にぎゅっと包まれて腰が溶けそうになる。
    「あー……、やっっべぇ」
    あったけぇ口ン中、どろりと溢れる唾液、締まる喉、時々ぎゅむっと奥歯があたる。
    「……んふぅ、んっ、んぐ」
    喉奥に突っ込んだままでいると、二郎の苦しそうな声が聴こえて来て、その呻き声を聴きながら腰を緩く前後に動かす。
    「んっふぅ、……んおっ、ゴブッ」
    あー、最高。
    二郎の目を覆ったネクタイの色が変わって、鼻からもだらしなく鼻水と涙目と唾液の混ざったモンが出てくる。
    「あー……、すっげぇ、お前のクチん中どろっどろ……」
    苦しそうな呻き声をあげながらも、俺のちんぽに歯を立てないように舌で包んでいるのがいじましい。
    「そうだ、もっとベロ使え、……竿んとこ、も、吸って喉奥締めろ」
    逆流した唾液が鼻から流れ、二郎の口元の黒子を伝う。
    綺麗な二郎の顔が苦悶に歪む。高校生の二郎がヤクザの俺のちんぽを咥えている。家族にしか懐かなかった番犬が、狂犬の俺には股を開く。
    あーーーー…………、最高だ。
    勿論俺は二郎が何処の誰でも高校生じゃなくても同じように愛してる。
    それは嘘じゃねぇ。
    だがな、恋愛なんてなモンは如何に脳をバグらせるか、だろ。それによって愛が深まるし、ドラマや映画にはそういう逆境を乗り越えたり、ギャップがスパイスになって盛り上がるだろ?
    俺の場合はセックスの時にそういうことを再確認しちまう。
    普段はまじでどうでも良いんだ。
    二人の関係性とか、立場の違いとか、年齢差とかはまじでどうでも良い。
    共通の話題はラップがあるし、ジェネレーションギャップを感じるほど俺もおっさんじゃねぇつもりだ。
    でもよ、セックスん時は別モンだ。
    ガキの癖に生意気で、俺を恐れず言い返して、ちょっとの喧嘩でもすぅぐ手ェ出しやがって、そのくせそのあと悪りぃことしたと思っておずおず謝ってきやがって、未だにセックスに慣れねぇクソ可愛い二郎をよ、俺の好きに出来るってのが最高なんだよ。
    セックスに慣れねぇくせに興味はあって、優しくされたらすぅぐ絆されやがって、甘い言葉は嫌がる癖に抱きしめたらとろとろに蕩けて、ちょっと強引な俺が好きな二郎のさ、ぐずぐずになった顔が見られるのが最高なんだよ。
    ……まぁでも今回はさすがに反省するわ。
    口下手なのと思ってること言わねえのは違うってか。確かにそうだな。
    二郎には二郎の考えがあって、二郎には二郎の付き合いがあんだな。
    よし。じゃあ、
    「二郎、どうして欲しい? 俺ァクソ自己中野郎だからよ、どうして欲しいか教えてくれよ、なぁ? こんまま喉奥に出されてぇか、それとも腹ん中に出されてぇか……、なぁ?」
    二郎の口ン中にちんぽを突っ込みながら一応訊いてやる。返事が出来るかどうかは知らねえけど。
    「……ふ、んんぅっ、ング、……んぶっ、んっんんっ」
    なぁんか返事しようとしてんのか。でもなぁ、もう玉パンパンになってんだよな。
    「なぁっ、もう、……出してぇ、ん、だ、けど、……っ、こんまま、出すっ、ぞっ、じろ、じろう」
    二郎の口からぐっぽぐっぽ音が出て、鼻水も止まんねぇな。あー、こりゃやべぇか? でも悪りぃが腰も止まんねぇしな。
    「は、……っ、イってやるから、な? 苦しいだろ? 全部、さ、飲め……、よっ」
    二郎の縛られた手首と髪を掴んで腰を振りたくる。二郎はもう俺に快感を与えるための動きはやめ、ただのオナホールと化している。俺はその穴にちんぽを夢中で突き立て、射精した。


    反射で飲み込んだザーメンは少しで、あとは開きっぱなしの口から涎と一緒に流れ出す。
    二郎は酸欠でトンだみてぇで、ちんぽを口から離すと前に倒れ込んだ。
    手首のベルトと目を覆ったネクタイを外し、濡れタオルで顔を拭ってやる。
    涙と鼻水と涎とザーメンで汚れてるってのに、二郎は綺麗だ。
    縛られていたのと、泣いたせいで赤い目元はあとで冷やしてやんなきゃな。綺麗で汚れを知らなそうなのに、こんなヤクザに捕まっちまってよ。でも、俺なりに二郎を大事にしてるつもりなんだがな。
    そう思ってると二郎の目が開いて、しばらくぼんやりしてたかと思うといきなり拳が飛んできた。
    「いいいぃぃってぇなぁ! おい!」
    三度目のパンチに思わず叫ぶ。
    「いてぇのはこっちだ! 死ぬかと思ったっての!! 窒息するわ! あんなデッケェの口ン中入れられて息も出来ねえし鼻も詰まるしよ!!」
    まだ振り上げそうな拳を掴んで、なんとか四度目を防ぐ。
    「いやでもお前気持ちよさそうにしてただろ」
    そう言ったら今度は腹に蹴りを入れられた。
    「バカか! 何が気持ちよさそうだ!! 苦しいだけだっての!」
    「いやだから訊いただろうが」
    「なにを!!」
    「口ン中出されんのと腹とどっちが良いか」
    「口塞がれて答えられる訳ねぇだろ!! バカかあんたは!!」
    「お前でもパンツん中見てみろよ」
    「はぁ!? パンツぅ?」
    二郎が制服のズボンの前を引っ張り、中を覗く。
    「…………嘘だ」
    青い顔をして呟いてるが、俺は気づいてたからな。お前がちんぽ突っ込まれながらビンビンに勃たせてたこと。
    グレーのズボンの前が染みになって色まで変わってるってことはよ。
    「お前、よかったんだろ」
    濡れて気持ち悪いだろう前を、ズボンの生地ごと掴んで揉み解すと、ぐちゅっと音がする。
    「なぁ、二郎。無理やりちんぽ突っ込まれてよ、苦しくて、縛られて痛くってよ。それでも……、ここ、こんなになるくらいにはよかったんだろ?」
    二郎の動きが止まる。必死に耐えてるような、信じらんねぇとでも言いたそうな顔をして。
    「同じことしてみるか? 俺の口ン中に、お前のどろっどろのザーメンまみれのちんぽ突っ込んでよぉ」
    ズボンを下着ごと下ろすと、ガチガチに勃った二郎の可愛いちんぽが出てくる。
    可哀想に。
    俺につかまったせいで女に突っ込むことのねぇ、綺麗なピンク色のままだ。
    「ほら。二郎、やってみろよ」
    口の前で親指と人さし指で輪を作り、そこから舌を出してやる。
    「じーろう」
    舌を動かして挑発してやる。
    「オラ、Mr.Hcの口にちんぽ突っ込める男なんてお前だけだぞ」
    そう言うと、二郎がガッと俺の頭を押さえて腰を突き出した。
    「……っは、さまっ、さまときさん」
    「ングッ、……っ、ん、んぅ」
    「さまときさん、さまときさんっ」
    「んぶっ、んぉ、……ん、ん」
    あー、やっべぇな、二郎のヤツすんげぇツラしてやがる。ほっぺ真っ赤にしてよ、……恍惚ってやつか。
    クッッッソエロいな。
    俺の口ン中犯してクソエロい顔してるお前を今すぐ犯してぇ。
    まぁでもただ突っ込まれてるだけってのも芸がねぇな。年上の余裕ってのを見せとかねぇと。
    口ン中で好き勝手暴れてる二郎の童貞ちんぽの根元を握り、亀頭を思いっきり吸って舌で舐め回してやる。舌をぐるんと巻き付けて唇で締め付けると、それだけで二郎は腰を引いた。
    こんなモンじゃねぇぞ、二郎。
    亀頭を吸いながら顔を前後させて竿全体を可愛がってやる。舌を伸ばして裏筋を刺激し、亀頭を吸い、根元は手でシコって、もう片方の手で玉を揉む。
    そしたら二郎のヤツ、俺の口を犯してるくせにまるで犯されてるみてぇな声を出しやがる。クソエロいツラで俺の髪をぐしゃぐしゃにして。
    「……っはぁっ、あっああっ! さまっ、ち、んこ……、とけ、る、とけ、やあぁっ、きもちぃっ、きもちぃ」
    あーーーー、クッソ可愛いな。
    溶けねえっての。そんな簡単に溶けたら困るだろ。俺も困る。こんな可愛い二郎はもっと何回でも見たい。


    「あぁんっ、きもちぃっ、もっ、もっと、……あっ、さまっ、さまときさ、はら、はらんなか、」
    お。
    そうかそうか、足りねえんだな。
    二郎のリクエストには応えてやんねぇとなぁ?
    二郎の先走りでどろどろになったちんぽに指を滑らせ、たっぷりと濡らす。その指をお望み通りの場所にあてがった。見なくてもくぷくぷと収縮してるのが分かるほどのそこは、風呂で洗ったのか少し柔らかかった。
    俺に思うところがあったはずなのにしっかり準備してるとか、どんだけ可愛いんだコイツは。
    可愛い二郎はケツの穴まで可愛い。
    柔らかくて、指を挿れたら最初はちょっと俺のことを拒むふりをして、でもすぐにグズグズんなって受け入れる。
    本当は舐め回して舌を突っ込んでやりてぇんだが、二郎が恥ずかしがってやらせてくんねぇ。
    こないだ無理やりやろうとしたら顔面に踵が飛んできて鼻血が止まらなかった。止まらねぇ鼻血にビビった二郎が謝って、その日は色んな体位でやったからすげぇ良かったけど。
    今度は絶対にケツの穴を舐め回してやろう。まじで。
    そんな可愛い穴に指をまずは一本。
    確かめるように抜き差しして、奥を広げる。二郎のもどかしいような、切ない声は無視して広げることに専念する。悪りぃな、そうしねぇとお前も俺も辛えかんな。
    自分でやっただけじゃ中までは柔らかくなってねぇな、やっぱ。
    あったかい肉に指を挿れるときゅうきゅう締めつけてきやがってよ。やだやだ言いながら身体は正直ってな。こんなん言うとおっさんかって言われちまうけどまじでそう思うわ。
    「……んんっ、さま、……はぅ、も、つらいぃ〜、ゆびっ、もっ、」
    指を二本三本と増やすたびに触れる面積が増える。そうすっと避けていた所にも触れちまうわな。そこが二郎が辛いって言ってるところ。もどかしくて、もっとやってほしくて、でも言えなくて。腰が動いてんの、気付いてねえだろうな。
    よしよし。我慢した奴にはちゃぁんとゴホービやんねぇとなぁ?
    三本の指をぐりんと中で回し、広げながらその内の一本で二郎の大好きなところーー前立腺をぎゅうっと押し込む。それと同時に、目の前でぷるぷる震えてた桃色ちんぽを一気に咥えた。
    「はああぁぁっっ……!!」
    突然の快感に二郎が喘ぐ。相変わらず良い声だな。それにしても桃色ちんぽって言葉エロいな。エロいし可愛い。正しく二郎にピッタリだ。
    そんなエロ可愛い二郎がとんでもなく唆る声で叫ぶように喘いだ。
    喘いで、腰を振って、俺の口ン中でちんぽ震わせて、俺の髪を引っ掴んで掻き乱して、俺の傷なんで気にしねえで思いっきり握りしめて。
    最後には俺の口ン中に潮まで吹いて、盛大にイった。





    あのあとソファからベッドに移動して二郎を散々可愛がってやった。
    口下手なのはいけねぇなと反省した俺はひとつひとつ確認をとった。
    何処が良いか、ここに触って良いか、気持ちいいか、良いと言われなきゃ触んねえ、どうして欲しいか、どうしたいかを一つ残らず確認し、それの返事を全部聞いてから、な。
    そしたら二郎のやつ、終わってから真っ赤な顔で俺のこと睨んできやがってよ。ぷんぷん怒ってるのが可愛くて、また風呂でおんなじことをした。
    だって可愛すぎるだろ。
    触ってほしいのに言えなくて、でも焦ったくてよ、目にいっぱい涙溜めてるくせに睨んでくんのがさ。
    甘えたくても自分の好きなようにするって言った手前出来なくてよ、でも気持ち良くて流されちまって。それでも俺のこと睨んで噛みついてくんのが堪らなく腰に来ちまった。
    あんな顔する二郎が悪い。
    獰猛な子犬みてぇなさ。
    まぁとにかくだ。今回ばかりは二郎もまじでキレてやがったし、俺もさすがに反省したわ。ちっとだけな。
    そんで二郎と約束事を決めたんだ。
    ちょっとやそっとの怪我なんてなモンは付き物だからいちいち言ってらんねぇけど、入院ほどの怪我は報告しろ。サプライズは嬉しいけどダチとの付き合いもあるからやめろ。クソ格好付けんのは逆に格好悪りぃからやめてくれ。だとよ。
    それ聞いて拍子抜けした。
    だってなぁ? あんな殴られるほどのことしたんだぜ? 死にそうになるほどの。
    「いや、お前死にそうだったって殴って来ただろが」
    「え? なにが」
    「あ? だからイラマ」
    「いらま?」
    「……窒息しそうだったって言ってたろうが」
    「あーー…………、うん」
    それだけ言うと二郎は顔を真っ赤にして何も言わなくなった。
    はぁーん……、良かったんだな。
    なんだかんだ言って強引なのが好きってか。ほぉーん。
    「うし、んじゃ行くか」
    そんな気に入ったんなら見繕ってやらねぇと。
    「行くって何処に? まさかクリスマスイルミネ、」
    「アダルトショップ」
    「あだ、あだるとしょっ……」
    「うちのシマでやってる店にこないだ行った時によ、お前に似合いそうな首輪あったんだよな。あんときゃそんな趣味はねぇかってスルーしちまったけど……、そういやすげぇ下着とかもあったな、あとは尿道に……、や、まだありゃ二郎には早えか?」
    やりてぇことが一気に広がって上機嫌で服を着てたら、二郎は動かずベッドの上で震えてやがる。
    「おい、二郎? どした」
    出かけねぇのか、と顔を覗き込んだら顔面に二郎の拳がめり込んでいた。
    「……さいってぇだな!! このクソ自己中巨チン野郎!!!!」
    だから巨チンは褒め言葉だっての。つうか痛え。クソ痛え。
    「オレはもっとクリスマスっぽいことしたいの!! プレゼント交換したり一緒にケーキとかチキン食ったりイルミネーション見たりしたいの!! それに言っただろ? 真ん中バースデーだってお祝いしてぇんだって!! セックスのことしか考えてねぇのかよ! この絶倫年中発情期!! 少しはオレのケツも労れ!!!!」
    真ん中バースデー……。
    完全に忘れてたわ。
    てか二郎のやつ人のことばっか言っといてテメェもじゃねぇか。
    言いたいこと溜め込んでやがったな。
    ……まぁアレか、大体が俺のせいか。
    よし。


    「アダルトショップはまた今度だ」
    「なんだよ、しばらく黙り込んでたから今度こそ反省してんのかと思ったけどアダルトショップには結局行くのかよ!!」
    「それは行く。これは決定事項だ。あの首輪とあの下着は絶対お前に似合うからな」
    「んだよそれ」
    「お前がやりてぇこと全部やんぞ。クッソ恥ずかしいけど全部叶えてやる。なんだっけ? プレゼント交換にイルミネーションにケーキにチキンか? ピザもつけてやる。それとなんだ? 真ん中バースデーか? それも結局今日なんだったら祝うもクソもねぇだろ。なにやって祝うんだ?」
    知らねえことは調べちまえば良いと、スマホを手にして検索してみた。
    「…………あ?」
    サジェストの『計算』をタップして、その先に出てきた日付けは二郎が言っていたのとてんで違う。
    「おい、俺とお前の真ん中バースデーってのは六月だぞ」
    俺がそういうと、二郎はまだ噛み付く気満々の顔で睨んで威嚇する。
    「ほらこれ見ろ」
    検索の一番上にあったサイトをタップして表示されたのを見せる。ピンクのギンガムチェックの背景にポップな文字で半年先の日付けがでかでかと書いてある。
    「……え、は? なんで?」
    二郎は何度もそれを見て、やがて諦めたようにため息を吐いた。
    「間違ってたのか……」
    残念そうに言う二郎の手を引いて立ち上がる。
    「どうせ今日も知らねえおっさんの誕生日、いや前日だろ? 俺らが祝う義理はねぇんだよ。オラ、行くぞ」
    「行くって何処に、」
    駄目だこいつ、と思いながら手にしたスマホでクリスマス/デートなんてクソさみぃものを検索する。
    「あー、ここら辺なら何処だ? おい、さみぃからあったかくしてけよ。イルミネーション見て観覧車ァ? ふっざけんなまじかよ、オススメのカフェにディナー……、は、予約がねぇと無理か。んじゃチキンでも買って帰るか。観覧車なぁ……、やってやんよ」
    「なに、左馬刻さん独り言怖えって」
    二郎がやり過ぎて痛めた腰を摩りながら、変なモンでも見てるかのように俺を見やがった。
    「独り言じゃねぇわ! お前のお望み通りのクリスマスデートに行くのに提案してんだろうがよ」
    「クリスマスデートぉぉ〜? そんなモンわざわざ検索しなくても左馬刻さんならクソほど経験してんじゃねぇの」
    ぷいっと横を向いて二郎が言う。
    その顔は拗ねてるのを隠さず、口まで尖らせてて。
    はっ、こいつのこういうところまじで馬鹿だな。
    「アホか。ンなクソ寒くてクソ面倒なことやってたまるかよ」
    お前まじで人に偉そうに言う前に、テメェの溜め込んでるモン吐き出せよ。
    でもクソ可愛く見えたから良しとしてやるか。
    二郎の髪をぐしゃぐしゃにかき混ぜて、キスをひとつくれてやる。
    「そんなモン、お前が初めてだっつうの」
    二郎が目をぱちくりさせて間抜けヅラを晒す。
    「クソさみぃことも、クソ面倒なことも、クソ恥ずかしいこともお前となら良いんだよ」
    あー……、っと、そろそろまじで恥ずかしくなってくんな、これ。
    手持ち無沙汰で車のキーを手のひらの中でくるくる回していると、遠慮がちに袖が引かれる。
    「……手、とか繋ぐ、かも」
    「おー」
    「写真も撮りたい、二人で」
    「おー」
    「パンケーキ食いてぇ」
    「……おー」
    「観覧車乗るの、……嬉しい」
    「……そか」
    「あ、ありがと」
    「おー」
    そのあと黙りこくって下を向いた二郎と俺の間に変な空気が漂う。
    アレな、大人の余裕を見せとかねぇと。あとアレだ、クソ恥ずかしい観覧車に挑むんだったわ。
    考えてることを悟られねぇように顔を作って、二郎の手を取った。
    「まずはパンケーキをぶっ倒して、そのあと買い物しまくるぞ。そんで荷物を一旦車に置いてイルミネーションを見倒したらラスボスの観覧車にトドメ刺しに行くぞ。んで帰ったらメシ食って……、真ん中バースデーとやらはまた半年後な。そんときゃ最高の祝い方してやるよ」
    「…………言葉のチョイスが全部不穏じゃん。てかもうサプライズはダメだからな」
    「よし、んじゃ行くぞ」
    クソ恥ずかしいこと全部、二郎に捧げるためにようやく歩き出した。


        junkie childish knight 終
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    chirohipu

    DONE『えっちの下手くそな左馬刻様書きてえ』から始まりました

    スパダリではない、自分勝手でクソ自己中野郎だけど自分なりにじろちゃんのことを愛している不器用左馬刻様と、初めての経験でなにも分からず憧ればかりが先行するじろちゃんがステップアップするおはなし


    こちらはツイッターの企画『さまじろ逆真ん中バースデー』用に書いたもので支部にもアップしてます
    ジャンキーキャンディーナイト乱れたシーツ、互いが吐き出したものと汗の匂い、高くなった体温と冷めていく興奮。汗がひいて肌寒くなった二郎はブルッと身体を震わせて、毛布を手繰り寄せた。
    さっきまで暖かかった体温がなくなり、身体に巻きつけた毛布の中で二郎はそっと足の間のおさまらない熱をひと撫でする。
    「いたっ……」
    むずむずと駆け上がる熱を治めたいのに、そこを触るとひりひり痛む。得体の知れない感覚が腹の中で一頻り蠢いた後、小さくなっていった。


    山田二郎には恋人がいる。
    人生で初めて出来た、家族以外に大事だと思える人が。
    知る人ぞ知る、ヨコハマディビジョンの碧棺左馬刻。
    人よりも遅い初恋を迎えたのが高校生になってから。それも相手が男だったり兄の因縁の相手だったりと、二人が付き合うまでに一悶着もふた悶着もあってなんとか乗り越えて来たが、それはまた別の話。
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