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    たまごやき@推し活

    アンぐだ♀と童話作家アンデルセンのこと考える推し活アカウント

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    POIPOI 162

    カルデアアンぐだ♀、付き合ってる時空

    2021.8

    ##FGO
    ##アンぐだ
    ##カルデア時空
    ##恋人

    もう一度では足りないほどに 恋人の部屋に招かれてベッドの上。
     量産品のシングルベッドがわずかに軋む。
     俺の腕の中の恋人はいつもより幾分しおらしい。
     ……ここまでの状況が整っていながら、彼女はぐっすりと眠っているのだ。
     さて、俺達の関係は一体何だったかと振り返りたくもなるだろう。
     あまりにも無防備な寝顔は俺を男と理解してるのかも疑わしい有様だ。分かっているんだろうか? こんな風に身体を預けておいて、どういうつもりだか。
     あぁ口が少し開いているせいで間抜けに見えるな、と唇に目をやった。きっとアレは俺の余りある想像力でも足りないほどの感触をしているんだろう。
     それで、つい。
     ――本人の知らぬところで勝手に唇を奪ってしまった。

     ほんの一瞬掠めただけの唇を離して、こんな僅かな時間ではよく分からない、と再度触れようとした。その瞬間に彼女がわずかに身じろいだ。そこでようやく、冷静さを取り戻したのだ。
     いや。魔が差したなどと言えども第一俺達は恋人の関係だ。違法か合法かで言えば合法なはず。いつもはあいつの方が勝手に俺に引っついてくるばかりで俺を困らせているわけだが。……それでも、本人に了承も得ずに褒められたことではない。白状して謝罪するべきか。いや、相手は起きていなかったのだからいっそ何もなかったフリをするか? ごまかす選択肢が出てくるなど我ながらどうしようも無い男だ。

    「ん……アンデルセン、もう起きたの?」
    「っ!」
     息が止まるかと思った。
     ろくに思考を働かせる時間もなく、さらにはぼんやりこちらを見ている彼女の唇ばかり意識してしまうばかり。
    (これはまずい)
     謝罪するにしろ無かったことにするにしろ、それ以前にこんな挙動不審を指摘されないわけもない。
    「アンデルセン?」
     そら、言わんこっちゃない。こちらを訝しむように彼女が身を乗り出してくる。鏡を見なくても分かる、己の顔色の変化が恨めしい。このままでは引き寄せられるようにまた身勝手に触れてしまいそうだ。そうなればもう言い逃れできない。気がつけば脱兎の如くマスターの部屋から脱走していた。

    「……いや、逃げてどうするんだ俺は」
     自室に戻り、冷静さも粗方取り戻してみればこれだ。頭を抱えてシーツに潜れど、状況は良くならない。
     逃げ出した時だってぽかんと口を開けた彼女の唇ばかり引き寄せるように目についてしまって。
    「――アンデルセン、入るよ?」
    「は⁉︎ おい待て……!」
     ノックから間髪入れずに侵入するのはノックをしたことにならない! 俺がスキルで隠れたりする時間を与えないための作戦だろう。都合の悪いことに、逃げる間も無くベッドの前まで彼女の侵入を許してしまった。シーツに潜った情けない姿のまま、目の前の彼女からの圧に潰されそうになるばかり。
    「――隙あり!」
    「うぉぁっ!?」
     あっさりシーツを剥がれ、姿を晒される。
    「いきなりなんだ、お前は!」
    「いきなりなんだはそっちでしょ、急に出て行っちゃうし!」
    「それは……」
     彼女の顔を見上げれば、やはり唇ばかり目に入る。一度じゃ分からないだの思ったくせして、妙に弾力のある感触が頭の中で鮮明にフラッシュバックする。
    「………………」
     今さら目を逸らしたところで、もう顔を隠せるシーツは床に落ちて遠くに投げ出されている。
    「もしかしてわたし、寝ぼけて何かしたかな? 」
     ベッドに腰掛けながらこちらの様子を見てくる彼女に、気を遣わせている罪悪感が芽生える。
    「お前は何もしてない」
     むしろ被害者だ。
    「わたし、は?」
     こいつのこの、妙に察しの良いところはどうにかならないのか。
    「…………怒るなよ」
     予測はできていたが、やはり白状する羽目になった。

    「え、アンデルセンが、わたしに?」
    「さっきからそう言っているだろう」
     洗いざらい白状したにもかかわらず、彼女は作り話でもきいている風だ。
    「や、だって! ……嘘じゃなくて?」
    「しつこいぞ! 嘘でもドッキリでもない!」
    「そ、そうなんだ……」
     何度目かの確認後、ようやく事態を受け止めたらしい。少しずつ赤く染まる彼女の頬を見ながら、やはり最終的にはあの唇で視線が止まって仕方ない。

    「アンデルセンはそういうの、あんまり興味ないのかと思ってた」
    「恋人になっておいて阿呆なことを抜かすな。そんなわけないだろうが! 俺だって少しくらいは初めてできた恋人に紳士的な顔くらいする」
    「ふふ……紳士って、勝手にキスしたのに! でもわたし、さっきのこと全然覚えてないよ」
    「そりゃあお前、寝ていたんだから当たり前だろう」
    「……キス、初めてだったのに」
     拗ねたように言いながら、こちらを見る目は俺を責めているわけではない。むしろ……。

    「そうか、俺も初めてだった。説明してやりたいが何しろ一瞬のことだ。臨場感たっぷりに解説してやるにはサンプルケースが足りないな」
    「わっ……!」
     強引に引き寄せればあっさりと腕の中に収まる彼女に、どうやら今からなら了承をとる必要はなさそうだ。
    「……さっきのは、無効にしてくれ」
     思い出にするならどちらも記憶のある方がいい。
     自分で奪っておきながら勝手な言い分だ。

     目を閉じる彼女の唇をもう一度見ながら、思う。
     さて、次はもう一回で済むと良いが。
     紳士的になんてカケラもなれないまま、彼女の顎に手をかけた。
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