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    はととぎ

    創作BL/平凡受け/ハピエン

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    【創作BL】美形×平凡

    #創作BL
    creationOfBl
    #平凡受け
    mediocreReception

    男だけど幼馴染の男と結婚する事になった2「瞬ちゃんただいまー」
    ガチャリと鍵を開ける音がしたかと思うと、玄関から彗の間伸びした声が聞こえてきた。
    俺は夕飯の準備をしていた手を止めて彗を迎えに行く。
    「おかえり彗!すまん、俺もさっき帰ってきたばかりでまだ飯の準備が…」
    そう言いかけたところで彗が持っているものに気づいた。
    「…随分大荷物だな」
    彗は右手に赤い花束を抱え、もう片方の手にはケーキらしき箱を持っていた。
    「俺たちが結婚して今日でちょうど1ヶ月でしょ?ちゃんとお祝いしたいなーって思って」
    「気持ちは嬉しいけど…ちょっと大袈裟じゃないか」

    彗は昔からサプライズ好きで毎年俺の誕生日をマメに祝ってくれてはいたがまさかここまでするとは。
    どうやらこいつがモテる理由は顔だけじゃないらしい。
    彼女いない歴=年齢の俺には『2人の記念日を祝う』という発想すらなかった。

    「まぁ、俺の自己満だから瞬ちゃんは別に気にしなくていいよ。それより俺お腹すいちゃったー」
    彗はそう言って微笑むと俺に荷物を全て預けリビングへと向かった。
    その背中を見送りつつ何気なくケーキの箱に視線を移すと駅前にある有名な洋菓子店のロゴに気づいた。
    店の前にはいつも行列ができていて店内に入る事すら難しいと噂の…菓子に疎い俺でも知っているような人気店だ。
    花束も花屋で買ってきた物らしく、赤を基調としたバラなど色とりどりの花が絶妙なバランスで束ねられていた。

    「……これ高かったんじゃないのか?」
    「ん~、どうだったかなあ。忘れちゃった」
    彗は部屋着に着替えながらはぐらかすように笑ったが、きっとそれなりの値段がしたに違いない。
    そうでなくてもわざわざここまで用意するのは大変だっただろう。
    いや、モテる男にとってはこの程度のサプライズ朝飯前なのかもしれないが…

    俺はケーキを冷蔵庫に仕舞うと晩ご飯の準備に戻った。
    今日のメニューは野菜炒めとチャーハンにする予定だったのだが、こんな事になるならもっと豪華な物にすればよかった。 

    「何か手伝うことある?」
    キッチンに立つ俺の横にやってきた彗が手元を見ながら聞いてくる。
    「いや、大丈夫だ。座っててくれ」
    「じゃあ先にお皿並べとくね」
    そう言うと彗は鼻歌を歌いながら布巾で食卓の上を拭き始めた。
    「ついでにさっきのお花も生けちゃうね」
    「ああ、頼む」

    何だこの夫婦みたいな会話…
    本当に新婚さんみたいじゃないか。
    俺は少しこそばゆい気持ちになりながら料理を続けた。

    「わぁおいしそう」
    テーブルの上に並んだ料理を見て彗は嬉しそうな声を上げた。
    「ただの野菜炒めとチャーハンだぞ…」
    「どっちも俺の好物だから問題ないでーす」
    ニコニコしながら席に着く彗の前に俺も自分の分の食事を並べると向かい合う形で椅子に腰掛けた。
    「いただきます!」
    2人揃って手を合わせ、早速食べ始める。
    俺が作ったなんの変哲もない料理を彗は幸せそうに微笑みながらパクパクと口に運んでいく。
    「そんなにうまいか?」
    「うん。瞬ちゃんの作るご飯は何でもおいしいよ」
    そんなセリフをさらっと言ってしまうからコイツは恐ろしいのだ。
    彗は誰に対してもこんな態度で接しているのだろうか。だとしたら危険すぎる。
    俺が女だったら間違いなく勘違いしてしまうだろう。

    「…そういえば花束ありがとな。ケーキも…用意するの大変だったろ」
    俺は照れ隠しに話を逸らす。
    「ぜーんぜん。サプライズとか好きだからむしろ楽しかったよ」
    こういう所だよなぁ…
    俺には到底真似できそうにない。

    その後食事を終えた俺たちは彗が買ってきたケーキを食べながらのんびりとくつろいでいた。
    「……うまい」
    「良かった。この前先輩がここのケーキ差し入れしてくれたんだけどさ、それがすごく美味しくて」
    瞬ちゃんにも食べさせたかったんだよね、と彗が満足げに笑う。
    ただの偶然かもしれないがケーキのチョイスも俺の好みをしっかり押さえている。
    「昔から思ってたけど彗ってほんとマメだよな。俺が女に産まれてたら絶対惚れてた」
    「えー?俺は別に男の瞬ちゃんでも大歓迎だけどな〜」
    「あほか」
    俺が小突くと彗は大袈裟に痛がり、それからまた笑い出した。
    その笑顔を見ているとつい釣られて俺まで頬が緩んでしまいそうになる。

    そんなやりとりとしていると不意に今朝浮かんだ疑問が頭を過った。
    「なあ、彗」
    「んー?」
    「お前ってさ…俺のことどう思ってんの」
    俺は思い切って尋ねてみた。
    母親の企みにまんまと嵌められた俺たちは半強制的に入籍する事になってしまったが、彗は実際のところこの状況をどう感じているのだろうか。
    どうしてあの時きっぱりと断らなかったのだろうか。
    不器用な俺ならともかく、彗ほど口が達者で器用な奴なら祖父と母親を上手く説得して結婚を回避できたんじゃないだろうか。
    掴みどころのない性格をしているこいつの本心を知る機会なんてそうそうない。
    これだけ付き合いが長くなっても未だにわからない事だらけだ。

    「瞬ちゃんのことは好きだよ。恋愛的な意味で」
    彗は残りのケーキを口に運びながら当たり前のようにサラリと答えた。
    あまりに自然な答えだったので俺は自分の耳を疑い、慌てて聞き返す。
    「…わ、悪い。良く聞こえなかったからもう一度言ってくれ」

    「俺は恋愛対象として瞬介さんのことが好きです」
    彗はフォークを持ったまま俺の方に向き直るとはっきりとした口調でそう言った。
    「……まじですか」
    彗の口調に釣られて俺まで敬語になる。
    「まじです。でも安心して。俺こう見えても一途だから」
    彗はいつもヘラヘラしていて何を考えているのか分からないところがあるが、この手の笑えない冗談を言う奴ではない。

    「い、いつからですか…」
    「んー?気づいたら好きになってたから正確には分かんないけど…はっきり自覚したのは高2の夏休みですかねぇ」
    高2の頃という事はもう12年も経っているということか。
    「彗の恋愛対象は男ってこと…ですか」「自覚する前は女の子が好きだったからなぁ〜どうなんだろうね。少なくとも瞬ちゃん以外の男に興奮したことはないですよ」
    彗は照れる様子もなく淡々と答える。
    『俺以外の男に興奮したことはない』と言うことは俺にはあるのか。

    「そ、そうですか」
    まだまだ疑問は山積みだが、俺はそれ以上何も聞けず黙り込んでしまった。
    今までそんな素振りを一切見せてこなかっただけに、急にこんな告白をされても全く実感がわかないのだ。
    まぁ、単に俺が鈍かっただけで彗は昔からずっとサインを送り続けていたのかもしれないが。

    「ねえ瞬ちゃん」
    その声に俺はハッと我に帰る。
    「な、なんだよ」
    「これからも瞬ちゃんのこと好きでいて良い?」
    彗の顔を見ると彼は珍しく真剣な眼差しでこちらをじっと見つめていた。
    俺はその視線に射抜かれて動けなくなってしまう。
    「…もちろん、今の結婚生活に何かを期待する事はないし、瞬ちゃんの嫌がる事だって絶対にしないよ。だから瞬ちゃんもこれまで通り友達として接してくれたら嬉しいな」
    「……それなら…まぁ…」
    「いいの?好きでいても」
    「…うん」
    「やったー!」
    彗は俺の反応を見て楽しそうに微笑むと空になった皿を持って立ち上がった。
    「じゃあ俺お風呂沸かしてくるから瞬ちゃんはゆっくりしてて」
    「あ…ああ、悪いな」

    こうして俺と彗の奇妙な新婚生活が“本当の意味で”始まったのだった。
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