怨みつらみ。他のっぺりとしたピンク色が紫水晶に透き通る。
違う。それはおれを見ていた。どけ、と低い声で凄んでみせても、彼に出来ることはおれに掴まれた手首より先の指をぴくりと動かすくらいだった。
震えながらおれを睨みつけるあなたが哀れだと思った。ぐるりと掴めてしまう手首だって、少しだけ力を入れて捻れば簡単に折れてしまうだろう。もののためしに握る力をほんの少し強めてみると、男の表情は苦痛に歪められた。
どうせこうなるのなら、もっと早くにしていれば良かった。初めて触れた肌はひやりとつめたい。痩せているわけではないが中年太りでもない、話を聞く限り不摂生で不養生な男は、いつも黒い革の手袋に包まれた手を頻繁にさすっていた。それを見るたび暖めてやりたいと思いながら、結局自分の衝動はそんなに優しいものではなかったと今更ながら自嘲した。
4009