Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    comame_maki

    @comame_maki

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 23

    comame_maki

    ☆quiet follow

    お題ガチャをお借りしました。たーつむ初夜のお話。

    困る 丞と恋人同士になった。
     紬はずっとずっと長いこと丞のことが好きだったけれど、丞は違うんだろうなぁと思っていたから最初はとても信じられなかった。
     過去の丞の恋人は、みんな可愛らしくて素敵な女の人で。
     丞の好きは俺のとは違うはずで。
     長年諦めの理由にしてきたいくつもの否定材料を並べては、目の前の丞をきちんと見ようともしない紬に、丞はひとつひとつ根気強く教え込んでいった。
     紬を大切にしたい気持ちと、愛しく思う心。誰にも渡したくないのだという独占欲。紬に笑っていてほしい。辛い思いも痛い思いもして欲しくないのに、めちゃくちゃに泣かせてしまいたい欲望が、胸のうちに同居していること。
     まるごとぜんぶさらけだすような、丞の告白に紬は目を丸くした。
     驚いたのだ。丞があまりに必死で。
    「たーちゃんは昔からずっとかっこよくて、男の人にも女の人にもモテて、それなのに」
     俺なんかにこんなに必死になるの。
     紬がそうこぼすと丞は「関係ないだろ」と、傷ついたような、怒ったようなそんな表情で低く唸った。
    「つむじゃないなら……他の誰に好かれたって同じだ」
    ——丞の隣でお芝居ができればそれだけで幸せだと思っていたのに。
     そんなふうにまっすぐな瞳で射抜かれてしまったら、溢れ出てしまう。見ないふりをしていた紬自身の欲が。震える声で、紬は丞に尋ねた。
    「触っても、いいの」
     丞に、俺が。それでも伸ばすことができない臆病な指先を、丞は力強く掴んで引き寄せる。触れた丞の頬はすこし硬くて、あたたかかった。丞はくすぐったそうに目を細め、微かに笑った。
    「嫌じゃない? 俺に触られて」
    「そんなわけあるか。……紬、もっと触ってくれ」
     触ってくれと言ったのに、紬がそうするより早く、丞は紬の頬を大きな両手で包んだ。ぶつかるように唇が重なって、吐息が混ざり合った。視界が潤み、背筋が震える。丞の手が、紬の体に火を灯すように背中を撫であげる。
     もう信じるしかないと、紬は思った。丞の気持ちも、自分自身の気持ちも。そしてふたりの関係が変わったことを。
     離れがたくてその日はずいぶん長いこと、体のどこかしら、触れ合わせていたように思う。もっと、いちばん深いところまで近づきたい。繋がれた手の熱さに、丞も同じ気持ちなのだと今度は素直に信じることができた。
     思い立ったが吉日とはさすがにいかなくて、互いの休みと諸々の準備、条件が揃った日。ようやくふたりでホテルに出かけた。
    「丞はこういうとこ、来たことあるのかな……俺は初めてだから、その、えっと」
    「は? あ、ああ」
    「まずはお風呂に、俺から、いや、丞から入る?」
    「ん、」
     嬉しいような恥ずかしいような、そして少し怖いような気持ちで、紬はついつい饒舌になる。反対に丞はほとんど喋らない。心ここに在らずという様子だ。結局紬から先に、それから丞が順番に風呂に入ってベッドの上で向かい合う。
     もう話す言葉もなくなってしまって、口をつぐむ。目と目が合った。指先を絡め、キスをする。幼い頃から何度も繋いできた手。心臓はうるさいくらいに高鳴っているけれど、こんな時でもしっくりくるんだなぁと紬は頬を緩める。キスも、あれから何度もした。寮の二〇四号室の中、丞の車。日が落ちたあとの中庭でも、こっそり、一度だけ。
     軽く触れ合わせて舌を伸ばして、徐々に深く。丞の手が紬の丸い後頭部を撫でて、うなじをくすぐる。丞のタイミングや、キスのくせ。体がそれを覚えていて、考えるよりも早く応えてゆく。紬の方は丞ほど経験が多いとは言えないけれど、きっと紬のやり方も、丞にうつっている。
     抱き合ったところから熱が生まれて、たまらずに紬は丞の腕の中で身を捩った。ホテルに備え付けられていたバスローブと下着は、気づけば鮮やかな手つきで脱がされていて、紬だけがもう生まれたままの姿だ。恥ずかしさを誤魔化すように、丞につよく抱きつく。丞の匂いが近い。ふっと笑う気配が、頭の上からした。
    「丞も脱いでよ」
    「ん」
     バランスよく筋肉のついた体が目の前に現れる。思わずほう、とため息をついて厚い胸板にそっと指を這わせると、丞の唇から熱っぽい吐息がこぼれた。
     そうして下着のゴムに指を引っ掛け、そうっとおろして——紬は息を呑んだ。
     恋人として初めて目にした丞のものが、すっかり形を変えてそこにある。
     頬が熱くなる。どうしよう、こんな。
    「おおきい……」
     心の声がそのまま口から出てしまった。丞が小さくみじろぎをして、ごくりと唾を飲み込む。
    「こんなの入るの?」
    「入らなきゃ困る」
     独り言のようにこぼした言葉に丞は間髪入れず、きっぱりと返した。両肩を掴む手の力強さから、必死さが伝わってくる。紬は耳まで赤くして、蚊の鳴くような声で言った。
    「こ、こまるの……」
    「あ、いや、それは」
     ようやく自分が言ったことに気付いたのか、じわじわと丞も頬を染める。あー、とかうー、とか、しばらく唸ったあとで、
    「……困るだろ」
     そらされた目が、小さく突き出された唇が愛しくて、胸が詰まる。ああ、なんてかわいいんだ。紬は丞のものにそっと触れると、柔らかな笑顔を浮かべた。
    「おれ、頑張るね。たーちゃん」
     
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💘💘💘💘💘🍌🌋🍼💞💯💖👍😭😭💕💕💕💕💚💚💙💙
    Let's send reactions!
    Replies from the creator