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    お題サイトTOY様 触れ合い10題

    4背中合わせ ダイ×アバン 自分の体の一部のように扱っていた筈の剣が重い。回復の為に息を荒げるけれど、地上と違って魔界の空気は瘴気が交じり重く、幾ら吸い込もうと四肢に溜まっていく疲労は軽くならない。
     もう、剣を手放してしまいたい。今、この場で横になれるのなら、どんな代償でも払うだろうに。
    (……いや、諦めるなら簡単だ。この場から逃げるか、この手にしている剣で自分の胸を貫けばいい)
    「ダイくん!」
     聞き覚えのある声に顔を上げれば、大勇者たるアバンの姿があった。
    「せん、せい」
    「遅くなってしまって申し訳ありませんね、この場は一緒に切り抜けましょう」
     この人はカール王国で王配となって、国民の為に王杖を振るっている筈で、こんなモンスターが蔓延る魔界の底にいていい人ではない。
    「拍子抜け、ですか?」
     煤だらけの顔でアバンは笑う。よく見れば身に付けている衣装は所々切り裂かれ、血が滲んでいる。ここに辿り着くまで相当戦ってきたのだろう。
    「ヒュンケルかポップなら戦力になったのでしょうが」
    「そんなことないです!」
    「優しいですね、ダイくんは。でもね、私も勇者として幾つもの戦場を駆けた身。自分の実力の程は分かっているのですよ」
     これと同じ場面を自分は知っている。一体、いつの時の記憶だろうと探ると、大魔王の居城、バーンパレスにあった門をアバンの呪文で開いた時だ。
    「力だけが全てではない、知恵や心も強さの一つなんだって、教えてくれたのは先生じゃないか」
    「ダイくん」
    「おれ、実際、一人だったら諦めていた。でも、先生の姿見た途端に力が沸いてきたんだ」
     危うかった足元はしっかりとした大地へと生まれ変わり、暗かった視界は先生を中心に色彩を取り戻している。
    「おれの背中を守ってくれたら、それだけで十分、この戦場を切り抜ける事が出来るって確信しているんだ」
     アバンは目を見開いて、自分をとうに追い越してしまった弟子を見返し、少しくすぐったそうにして笑う。
    「キミが確信しているのなら、私も信じましょう。ダイくん、キミの背中は私が守ります」
    「はい、そして先生の背中はおれが絶対に守ります」
     そうして、何か思いついたかのようにダイが声を上げた。
    「あ、あの、もっとおれが強くなる方法があるんだけど」
    「ほお、それは何ですか?」
    「ちょっと、先生、背をかがめて」
     内緒話でもするかのように、二人は顔を近づけると、ダイの方からアバンの頬へと手を添えるとキスをした。軽く重ねるだけの刹那のキスだったが、今はそれで十分だとダイは思う。
    「ダ、ダイくん」
    「これで力を貰いました。十分、戦えます」
    「……そう、なんですか?」
    「はいっ!」
     触れ合った部分が熱を持ち、胸を熱くして生への渇望を強くし、それは闘志へと直結した。
    「先生、おれの背中、お願いします」
    「は、はい」
    「そして、また、向き合えた時にはキス、しましょう」
     もうすでにダイの視界には、相対すべき敵しか映っていないが、背中越しにアバンの戸惑う気配が伝わって、少し笑ってしまった。
    「……そういうのは駄目です、ダイくん」
    「何でです?」
    「ゲームでいう所の死亡の予兆という奴です」
    「ならば、おれ達でその予兆を覆すんだ」
    「覆す、ですか」
    「はいっ!」
     離れないでずっと、おれの背中で貴方の熱を感じさせて。
     次に向き合えた時、違う二人になっている筈だから。
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    natukimai

    DONE2023年4月8日WEBオンリー「先生はすげえんだから!」展示作品です。
    長い間、先生とポップの出会いはこうだったんじゃないかなぁと妄想していたものをようやく形にすることが出来ました。魔法のシステムは原作を踏襲してはおりますが、大分、独自の解釈が交じっております。
    あと物語を進めるための名前ありのモブキャラが出てまいりますが、あくまでの舞台設定上のキャラです。
    緑の軌跡緑の軌跡



    「すみません。もうついていけません」
     そう言って志半ばに去っていく背中を、幾度眺めた事か。
     彼は真面目な生徒だった。生真面目すぎるほどに修行に打ち込み、そして己の才能に限界を感じてアバンの元を去った。
     彼の志望は魔法使いで、魔法の成り立ちや、各魔法で使用する魔法力の値、禁忌などの座学は優秀だったが、実践ともなると危うさが散見した。
     理論だけで突き詰めるな、感覚で魔法を掴めと言っても、目に見えないものをどう掴むのかと詰め寄られる次第で、時折、昔の盟友である大魔導士に指導を頼もうかと思うこともあるが、一旦、引き受けた以上は自分が最後まで彼を導くのだと自分に言い聞かせた。
     これで彼自身が魔法力を持さない者ならば、戦士や武闘家の道を勧めるのだが、ある程度の基本的な呪文が契約が出来たことが、彼を余計に瀬戸際まで追い込んだ。
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