ドラゴンフラワー******
轟々と水はうねり、巻いて流れていく――幼い子を飲み込んだまま。
「ヒュンケル!」
私はすぐさま急流渦巻く川の中へと飛び込んで、不幸な子を探したが、青くも暗い水底は見通すことが出来ず、ただ、岩にぶつかり弾く大質量の水の音を轟かすだけ。
「ヒュンケル!」
私の中には後悔が渦巻く。何故、あの時、あの子の剣を受け止めてやれなかったのかと。
いや、受け止めるのは無理な話だと、もう一人の私が言う。
あの心臓を的確に狙った突きを躱すには、剣ごと上へと弾き出すことが正解だった。
だが、その衝撃で子供は大きく弾かれ、川へと落ちて行ってしまったのだ。
――こうなることは、予め分かっていた筈なのに。
父の仇と私の傍へと付き従いつつ、いつでも殺せるようにと相手の隙を淡々と窺っていた、あの子――ヒュンケルなら、卒業の儀式に浮かれている私の隙を狙って来るだろう。
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