ハロウィンあむこ「コナンくん、ハロウィンはどうするの?」
いつものポアロの指定席。窓際の隅のカウンター席に座って、店員の梓さんと「すっかり寒くなったね」なんて会話を交わした後。
カウンターの中から、唐突に安室さんがそんな質問をするものだから、オレはどう答えたものかと戸惑った。
「どうするの?ってどういうこと……?」
問いかけられた言葉は何通りかに捉えられる。ハロウィン当日の予定はあるの?とか、何をするの?とか。
「予定はあるの?」
一番最初の質問だったのか。それなら初めからそう聞いてくれたらいいのに。
「その日は夜に探偵団のみんなとこの辺の知り合いの家を訪ねる予定だよ」
「じゃあ、その後は?」
「……?帰って、お風呂入って、寝るけど?」
「じゃあさ……お風呂入って寝るの、僕の家でもいいよね?」
「へ?安室さんち?行っていいの?」
「来てくれる?」
「それはもちろん……あっ、でも小五郎のおじさんと蘭ねーちゃんがいいって言ったらだけど」
「それは僕に任せて。うまく説明するから」
「あ、じゃあ、お願いするね?」
「じゃあ、ポアロで待ち合わせしよう。お泊まりセット、持ってきてね」
にっこりと、それはもう嬉しそうに安室さんが笑う。
そんな会話をしたのがハロウィンの三日前。そして当日の夜。
オレは安室さんの家で、安室さんを正座させて、安室さんの前に仁王立ちして怒り狂っていた。
「安室さん、これはなんですか」
「……君に似合うと思って用意した衣装です……」
「で、なんの衣装ですかこれは」
「………………逆バニーです」
「なんで!?こんなものを?!オレに着せようとしてんのかなぁあんたは!?」
「お風呂に入る前に着てもらってちょっといい感じになりたかったです」
「バカなの?安室さん疲れすぎてバカになっちゃったの?!そもそも馬鹿正直に答えすぎじゃない!?小学生の男児にこんなの着せて喜ぶとかおかしいよ!?」
「君に小手先の言い訳なんか通用するはずがないし……一応ニップレスとパンツはあるから最低限は隠れるし……あと君と付き合って体の関係まである時点で僕がおかしいのなんかわかってるコトだと……」
「なんか言った?」
「すみません」
ぶつぶつと言い訳をする安室さんを黙らせる。本当になんなんだこの衣装。隠さなきゃダメなところが全部丸出しじゃないか。
「なにがちょっといい感じだよ!えっちなことしか考えてないじゃん!こんなことなら来なかった!!」
「ええっ、そんな」
「あむろさんのばか!こんなんトリックオアトリートどころじゃないじゃん!悪戯しか考えてないじゃん!」
「それは言い返す余地もございません」
「無いのかよ!この変態警察官!!」
「すみません」
「なんだよその潔さ!!」
腹が立ってしかたない。そんな恥ずかしいの、着れないよ。いくら安室さんの頼みでも。それに……
「……そんなのなくたって、安室さんになら悪戯されたって、いいのに」