ふわふわとして甘く、「魈」
凛とした声に喚ばれ、風に乗り音もなく夜叉は舞い降りた。
穏やかな響きと喚ばれた場所からして危険が迫って召喚されたわけでは無いと判断し、声の主の前に傅く。
「……魈、召喚に応じ参上いたしました」
「急に呼び出して済まなかった。先程旅人にもらったから傷まないうちにと思ってな」
何のことだと顔を上げれば、声の主――鍾離の手には白いなにかを乗せた皿がある。
ふわりと漂う甘い香りと、上に四角く切られた果実と清心の花が乗せられていることから菓子だろうと検討はついたが、人間の文化に疎い魈にはそれがなんだか分からなかった。
「ケーキというものだ。璃月ではあまり流通していないからお前が知らないのも無理はない。旅人がたくさん作っては配っていたので俺も一つもらったところだ」
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