「機械市場の少年英雄」「そこな少年、強くなりたくはないかえ?」
ふと、気がつけば、知らない場所に在た。この街の景色は日々、変わる。昨日あった建物が今日はもう其処には無いことなどめずらしくもない。日毎、破壊されてゆく街。街だけではない。昨日まで毎日いっしょに遊んでいた子が、今日はもう何処にもいない。街も、人も、みんな破壊されてゆく。けれど、此処はどこか奇妙だと、立ち止まってあたりを見回していたアーロンに、先程まで其処にはいなかったはずの老婆……らしき人物が声をかけてきた。アーロンはその老婆に近づいて、顔を覗き込もうとしたが、よく、見えない。目も鼻も口も何処にあるのかわからない。闇い顔から声だけがする。
「強さを求むるならば、少年、汝は運が良い。今日はそこに市がたっている」
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