冴が来た(3) 冴が『レ・アール』のスカウトの一件を話した時。世一は笑っていたが、一瞬の隙間に、何か考えるような素振りをしていた。最初に気付いたのも冴だ。また世一が泣いていると身体が反応するように振り返れば、遠くを見るような目で上の空の世一がとぼとぼと付いてきている。
「潔、ぼうっとしてると危ないよ?」
「うん、ごめん」
凛も世一の様子に気付いている。凛も冴に続いて世一の変化に聡いところがある。二人以上に、世一はたまに心を覗いたように鋭い。
その夜。冴は突然、世一に告白された。
凛と世一が先に寝入り、リビングで夜遅くまでサッカーの中継を視ていた冴は、大あくびをかきながら部屋に戻ろうとしていた。階段へと続く廊下を歩いていた時、世一が物音を立てずに階段を駆け下りて来た。
7901