さぁそこへ膝をつけ三ツ谷は危ない性癖なんて持たない、健全な男子であると自負している。
(恋人はそれでも自分のことを変態だのと呼ぶが)
ないったらない。だが帰り道に通りかかったペットショップの店先、そこに置かれた首輪を見た時に脳裏に浮かんだのはそれを着けてる恋人の姿だった。だったらあとはもう、実行に移す他ないだろう。
「って、事なんですけど」
「へぇ」
差し出された黒い首輪を見て返事をするその声は、地を這うように低い。まだ着けてくれ、とも何も言っていないのだが、腕組みをしてこちらを見る恋人の圧の前では経緯しか説明出来ない。
三ツ谷は至って健全だ。健全だと自分では思っている。恋人の可愛い姿を見たくて何が悪いのか。その一心で人間の首におさまるように質のいい皮を買ってきて作り上げたオーダーメイドのその一品。決して引き下がるわけにはいかないのだ。どうにかして言いくるめ、はたまた取り引きをして着けてもらいたい。そう気合いを入れ直し口を開きかけたその時。
1275