といえ「わたしのかわいい弟と結婚の約束をしたのか?」
校舎の廊下で呼び止めてきた友に出会い頭にそう問われて、月島はぽかんと口を開けて固まった。
「結婚?」
「ああ、先週の日曜の話なんだが。」
対する友・・・平之丞は口元は微笑んでいるけれど内から放っている威圧感が全く隠せていない。平素は菩薩のような穏やかな男が珍しい、と月島は内心首を傾げた。今はまるで菩薩の面を顔に貼り付けた般若だ。
「覚えがない。先週の日曜・・・? そんな話は一度も・・・」
困惑しながらそう答えつつ、だがこの男が何の根拠もなくそんな話をしてくるとはとても思えない、と目を瞑って月島は件の先週の日曜に想いを馳せた。
「・・・そういえばあの子に連れションに行こうと誘われたけど結局行かずじまいだったな。」
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