〈玄関先の植木鉢から生えてきた右腕が、流暢な外国語で話している。〉〈玄関先の植木鉢から生えてきた右腕が、流暢な外国語で話している。〉
ポットに植えた指から腕が生えたので、狭いと大層居心地悪かろうと思い、とりあえず玄関先の植木鉢に植え替えた。水をかけてやると喜んで、ぽきぽき鳴る手首をゆるやかに動かしていたが、次の日には息をするようにゆっくりと手のひらが閉じたり開いたりして、その次の日には堂々とピースサインが咲いていた。
「アーアー、ハーイ、エー、ヤー、ハロー、グーテンモルゲン、ボンジュール」
植え替えから一週間が経った今日、気持ちのいい朝日に目を細めてカーテンを開けてみたら、サムズアップした手首が何やら言葉を喋っていたのだ。生憎日本語しか分からないので何を言っているのかわからないが、流暢な外国語ということだけはわかった。
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