ごはんを食べよう⑨「うん」
手を繋いで歩く。こんな穏やかな日がいつまで続くのかわからない。
ある日突然荘園に戻されるかもしれない。
そうなったら、自分たちはどうなるのだろう。
また、命懸けのゲームができるだろうか。
ベーコンは家にあるから、じゃがいもやにんじん、玉ねぎなどの野菜を買う。
イソップとイライの住むマンションの近くにはそう大きくはないが商店街があり、その中にいくつか飲食店がある。
ふと香る出汁の香りに、イライが足を止めた。
「ここ、うどん屋さん、美味しいよね」
「入りますか?」
「いいの?」
「そろそろ昼食の時間ですから。どうせ昼は外で食べるつもりでした」
手で開けるタイプの、イソップ達には慣れたドアを開ける。ちりん、と軽いベルの音がして、腰の曲がった店員が「いらっしゃい、お好きな席にどうぞ」と笑いかけてくる。
軽く会釈したイソップの隣で「ありがとうございます」と口にしたイライと連れ立って、なんとなく、奥の窓際の席に座る。
メニューを開いてうーん、と唸るイライをよそに、イソップはざるうどんにしよう、と頷く。
……天ぷらもつけようか。
イライが何を頼むかにもよるが、イライはここに来て結構食べるようになった。
天ぷらもイライが好きなものの一つだ。イライの注文に天ぷらがなかった場合、分けてあげればきっと喜ぶ。