トーチ「鳥が好きなんです」
特に猛禽の類いが。
落ち着いた低い声の青年は言った。青年の肩には凛々しい顔つきの鳥が静かにとまっている。
日差しと砂に囲まれた活気のある国。それが私達の国だ。家には子どもの楽しげな声響き、市場には行商人やら異国の人間やらが行き交い賑わっていた。それは瑞々しい果物から宝飾品まで手に入らないものはないのではないかと思う程である。
しかし砂漠の夜は一転するものだ。
日中のからりとした暑さは何処へ行ったのか、死が微笑んでいるかのように底冷えをする。近頃は王族の継承争いの影響で立ち去る旅人がぽつりぽつりと増えてきた。それでも一見、賑わいが欠けていないように見えるのは、かわりに見慣れない人間たちが紛れ込み始めたからだ。
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