君の神様になりたい その夜、奉行所勤めであるおそ松は少し忙しかった。
以前から不審者の目撃情報が上がっていたのだが、巡回中に当の不審者が目の前に現れたためである。
その男は色のついた眼鏡と杖を持ち、商店の前に積み上がった樽と樽の間でもぞもぞと動いていた。
「おい」
おそ松が声をかけると、男はあからさまに跳ね上がって驚いた。
「おお! びっくりしたなあ!」
「それはこっちが言いてえよ。一体なんだってこんなところに蹲ってんだ、あんたは」
「いやー、まあ、用事があってな」
「用事? 泥棒かい?」
男が立ち上がり、ふっ、と髪をかきあげる仕草を見せた。だが坊主なので一本も風になびくことはない。
「そう、それは、探し物さ……」
「そうか。じゃあ続きは牢屋の中で聞こうかね」
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