種族による本能って完全捏造だけど、もし⚖️にリカオンの本能があったらジャックラビット+アンテロープって美味しそうすぎるだろうなっていう
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ジャロップが自宅に来るのは初めてではないが、やはり地味で殺風景なこの部屋に彼は馴染まない、とリカオは改めて思う。しかし、彩度の低い背景の中で浮いてしまうほど鮮やかなその姿を眺めるのは、不思議な感覚ではあるが悪くないと感じていた。
上がり込むなりまるで自分の家のように寛いでいるこの客人は、黙ってさえいればそれなりに端整な顔立ちをしていた。カラフルに染められた髪もよく似合っているし、身長こそ高くないもののスタイルの良さで補って余りある。その目を惹く容姿の中でも、とりわけピンと立った小さな兎の耳と華奢な曲線を描く一対の角は、リカオにとっては形容し難い感情を呼び起こさせた。
行ったことのないはずの草原の景色の中で
あの耳と角が揺れているのが目に浮かぶ
誰かに取られる前に 追いかけて 捕まえて 捩じ伏せて
手に入れなければ、そんな衝動が目を覚ます
「リカオちんどした?プリン食べないの?」
いつにもまして険しい目つきになっていたであろうリカオの顔を、一切の遠慮も恐怖もなく覗き込んでくる。琥珀色の瞳はカラメルシロップのように煌めいて、美味しそうで。
「ああ 早く食べよう……です」
「だよねー!マブダチと一緒だとテンションも食欲もアゲ的な?」
ジャロップが持参した手土産の箱を手際よく開けていく。必要ないと何度も言っているのに毎度必ず用意してくるあたり、いいかげんなようでこういった気遣いは欠かさないのだ。そういうところなのだろう、と至極納得する。
ジャロップの瞳は好物を前にそわそわするリカオを映して満足げに細められる。その笑顔を眺めながら食べると、ただの空腹感とは別の渇くような感覚さえ満たされるような気がしていた。こんな感情が単なる友人との間にあり得るだろうか。
「マブダチなんかじゃない……です」
ジャロップへと向かいそうになる欲の代わりに、スプーンを目の前のプリンに突き立てた。たまご色の柔肌は僅かな抵抗の後ぷちんとあっけなく弾け、中から艶を帯びたカラメルが溢れてカップの底を満たしていく。
追いかけて 捕まえて 捩じ伏せて
俺はこいつを
犯したかったんじゃなく
食したかったのかもしれない。
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あーもう すっごい恥ずかしい
なんか長くなっちゃったからちょっとそれっぽい文体にして遊んでみたんですけどぉ 文章むずかし!
クラシックな部屋の具体的なイメージがなかったのと
プリンをえろく書くをやってみたかっただけです
楽しかった!ありがとうございました!
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(追記)
リカオがプリンを頬張る。先程まで鋭く研がれていた瞳は緩み、一文字に結ばれていた口元が綻ぶのを、ジャロップは羨ましげに見つめていた。
ジャロップはリカオとキスしたり、押し倒されたりするときにふと、本当にこのまま食べられてしまったら、と考えることがある。取り留めない妄想に耽るうちに、いつも艶やかな歌声を響かせている彼の口元へと無意識に視線が吸い寄せられていく。
あの歯で噛み砕かれて あの舌で溶かされて あの喉を通って
彼の血肉とひとつになれたなら どんなに気持ちがいいだろうか
けれど何度思い浮かべても、想像の中のリカオがこんな風に「美味しい」と笑ってくれることは一度たりとも無かった。きっと酷く苦しんで、リカオ自身を責めるのだろう。彼を笑顔にできるプリンが羨ましいと思った。
「いいなあ」
「?お前も食べればいい……です」
「あは まじありがと!」
そっちじゃないんだけど、と言いかけた言葉を飲み込んで、差し出されたプリンを口に入れる。卵の甘さとカラメルのほろ苦さが舌の上で混ざりあう。互いに自分の形が変わってしまうと知りながら、少しずつ溶けあっていく。それが心地良いから、ただもう少しこのままでいたいと願った。