見てる ここで受ける日差しは地上とはどこか違う。青年はそう感じていた。しかしそう思わせる理由が何なのかまではわからなかった。ただここに来てからの青年は、日向にいる間いつも少し目を細めていた。遠くを見る時は額に手のひらを寄せ影を作り、更に細める。睫毛が風に揺れる。浮いた小島の上で動く赤い光を二つ、青年の目が捉えた。青年はその左手に握った錆の目立つ盾を握り直す。下ろしていた瞼を戻すと、赤い光の見えたすぐそばに青い光があることに気が付いた。
真っ直ぐに伸びる赤い光とは違う、ぼんやりと滲むその青い光の正体を知る青年はまた目を細めた。右手を上げ、自身の顔に影を作る。青い光をまとう白く豊かな髪が青年の目に映る。視線の先でその人物は青年に背を向けたまま、赤い光の主を見つめているようだった。青年が右腕を下ろし、自身の右手——青年の実感により近い形で言うならば、自身の右手に成り代わったものを、まじまじと眺める。長い爪と骨張った関節。防具のような装飾。そして何より、自身の肌と全く異なるその色。青い光の浮かぶ手の甲を遠ざけるように腕を伸ばす。小島の上の赤い光と青い光。そして腕の先にある光。青年はそれらに視線を巡らせ、それから踵を返し、伸びる階段の先へと歩みを進めた。