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    あわ…

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    シャチョコン(ユキモモ)
    ユキさんはYUKI、モモくんはmomoって名前の設定です。出会って遊んでるだけの関係。

    書きたいとこだけ書くシャチョコン 品出ししてるときに気付いた。あ、YUKIさんのアバター、この人に似てるなって。

     経済雑誌の表紙になってるすごくかっこいい人。会社のイメージモデルか何かだと思ってたら社長さん本人らしい。表紙だし、加工されまくってんのかな。それにしても異様なくらいかっこいい。イケメンだ。

     家に帰ってから名前を検索してみる。IT系ベンチャー企業の社長さん、名前は折笠千斗さんだって。名前までイケメンだ……。インタビュー記事とか出てきたけど、あまり顔出しはしないみたい。あんなにかっこいいのにもったいないな。テレビ出演とかはしてないみたいで、動く姿は見つけられなかった。残念。声も聞いてみたかったのに。

     検索はほどほどにして、ゲームを立ち上げる。今夜もYUKIさんと遊ぶ約束をしていた。

    (YUKIさん、あの社長さんモデルにしてアバター作ったのかな)

     確かにすっごいイケメンだもんなあ。CGみたいだった。オレは自分に寄せるタイプだけど、理想の姿にキャラクリしてくださいって言われたらモデルにしちゃうかもしれない。それくらいかっこいいし、YUKIさんのキャラメイクは雰囲気掴んでた。思い返しながら待ってると、音声アプリからいい声が聞こえる。

    『もしもし、聞こえる?』
    「はーい、こんばんは! momoです!」
    『YUKIだよ、こんばんは』

     最近知り合ったYUKIさん。初心者さんなんだけど、オレとよくマッチングして、テキストチャットじゃ話が進まなくってもどかしかったから、よく知らない人なのに繋がっちゃった。でも繋がって正解だった。この人の空気感、すごく面白い。

     ぶっちゃけ、オレは件の社長さんよりも、こっちのYUKIさんのほうが好きだな。アバターの見た目は似てるけど、この人めちゃくちゃかわいいんだ。かわいいとか言ったら失礼かもしれないけどさ……。

    『momoくん、今日はどのステージ連れていってくれるの』
    「あ、はい! まずは射撃場でテストしてから、イベントバトル行きましょうか!」
    『テストって、僕ひとりでしょう。momoくんと一緒にゲームしたいんだけど。そのために僕、今日一日頑張って働いてきたんだよ』
    「あははっ、何ですかそれ! も~YUKIさんオレのこと好きすぎでは~?」
    『好……、momoくんは面白いから、楽しいから、気に入ってるんだ。それより僕は勘がいいからテストなしでできるよ、早く遊ぼう』

     オレよりも年上っぽいのに、寂しがりやで甘えたな感じがする。たま~にこういう感じの人と組んだことあったけど、そういう時ってなんか粘着されたりして怖かったんだけど、YUKIさんは慣れてない感じがするからか、かわいいって思っちゃうんだよな。声がやわらかくて、聞きやすいのもあるかなあ。不思議な人。

    『あっ、momoくん! 落ちた! たすけて!』

     案の定新マップで足踏み外して救助要請してるところなんて、ほんと。マップ確認したらスタートしてすぐのとこじゃん。そう、こういうところも放っておけなくてかわいいって思っちゃう。

    「あははっ! もう! だから言ったのに! すぐ行きます、待ってて!」
    『コントローラが悪いのかな、L押したのに進まないんだよ。壊れてる?』
    「滑空するときはLとB同時押しですね!」
    『B? 僕のコントローラBないんだけど……ニセモノ?』
    「あ、じゃあ✕かな?」
    『ばつ。ばつ、ある。あるけど、あれ 何、momoくん! ゲーム終了された!』

    ─YUKIが離脱しました─

    「ちょ、YUKIさん! オレもやられるから待ってて!」
    『momoくん……』

     めっちゃしゅんとした声がする! 救助待ちの時に✕とL(とたぶんレバガチャしてstart?)押して無言抜けしていった。これ、組んでるのオレじゃなかったらブラリ入れられちゃうんじゃない……? ほんと、かわいいな~!

    『ごめん……』
    「あははっ、もう、大丈夫ですって!」

     オレより多分大人で、働いてる男の人なのに、なんでだろう。すごく癒される。YUKIさんはオレと遊ぶ時間楽しみにしてるって言ってくれたけど、オレもおんなじかも。バイトでクレーム言われても、時給上がんなくても、急にシフト変更になっても、寝る前の少しだけ、YUKIさんとゲームするのが癒しになってる。

    ***

    「今日も楽しかったです! 明日ちょい早いんでもう落ちますね」
    『僕ももう寝ないとヤバい……眠い……』
    「あはは! 付き合ってくれてありがとうございました、また遊びましょうね! YUKIさん、おやすみなさ~い!」
    『うん、momoくん、おやすみ……』

    ─通話が終了しました─

     寝る前におやすみって言ってもらえる日々、久しぶりだな。あと、なんでだろう。YUKIさんのおやすみってなんだかドキドキするんだよなあ。ゲームが楽しかったから興奮してんのかな? 変なの。でも、もう一回聞きたいって思う感じ。明日も聞けるかな。楽しみだな。

    <YUKIさんも、お仕事がんばってね(*´v`*)>

     通話の終わった画面にテキストでもメッセージ送ってしまった。これくらいならキモくないよね。さあ、明日もがんばろ!

    ***

    「うっわ……」

     momoくんからメッセージが届いた。momoくんは顔も知らない少年だけれど、夜遅くまで僕の相手をしてくれて、とても優しくて朗らかで……胸が締め付けられるくらいかわいい。メッセージ見て思わず声が漏れるくらい、かわいい……かわいすぎ……。

     下心や他意のない、純粋な親切がどれだけ僕の心を癒してくれているか。もしかしてハニトラなんじゃないかって警戒するほどにやさしくてかわいい。女の子じゃないから大丈夫だと思うけど。僕の素性も明かしてないし。

     僕が入力ミスしたり、行き先を間違っても、怒りもせず、責めもしないどころか、かわいらしく笑い飛ばしてくれる。おそらく初歩的な操作についてもわかりやすく丁寧に教えてくれるし、成功すれば気持ちよく褒めてくれる。僕の人生のなかで、ここまで優しくされたことなんてなかった。僕の才能や外見に左右されず、ただただ優しい。人からの施しなんていらないと思っていた。それなのに彼と過ごすバーチャルな時間は新しい発見しかない。

     momoくんと会話する時は、僕も素直になれる。
     明日も、彼の声を聞くのが楽しみだな。

    <momoくんも、頑張ってね^^>

     らしくなく、返事なんか送ったりした。恥ずかしいけど、浮かれてるのは薄々自覚してた。これくらい、いいよな。

     幸せな気分で眠りについた。現実に戻りたくないな。はぁ。
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