ネトゲボイチャ初めておじさん『わぁ、YUKIさんてイケボだ!』
「いけぼって? momoは声大きいね、でもこれで教えて貰いやすくなる。助かるよ」
『あははっ、イケメン声ってこと! 落ち着いてるけど通るからめっちゃプレイしやすい! 直結とか思われたらどうしようかって思ってたけど、ちゃんと男で良かったよ~』
初めて聞いたmomoの声は元気で若く、そしてマシンガンみたいだった。近頃の新入社員って、あんまり喋りかけてくれないから新鮮で、じつのところ、寂しかったんだ。
「momoはやさしいよね」
『えっ? 急になに?』
「ゲーム知らないおじさんの僕につきあってくれて、色々教えてくれるじゃない」
『開始位置と開始時刻が全く一緒の同期じゃん 同じタイミングでスタートするなんて運命! それにYUKIさんエイムめっちゃ上手いもん。オレ遠距離下手だから組めて嬉しいよ!』
「ありがとう」
『こちらこそだよ! さ、新マップも踏破しちゃいますかー!』
「そうね」
momoが飛び出して行き、僕のキャラが後を追う。この世のどこか、このキャラを操っているmomoが、この時間に存在しているんだ。声を聞いただけでグッとリアルを感じられて、こそばゆくなった。
会え……たら、嫌われちゃうかもな。僕は男に好かれないタイプらしいし。だから、今はこうして、画面のなかでだけでも。
「momoのおかげだ」
『えっ 今何か言ったー』
毎日が、楽しいのは。