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    現パロ再録 👮‍♂に補導されかける先生なディミレト

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    「先生! すまない、遅くなった」

    いつも待ち合わせに遅れるのはベレトの方であったが、たまには逆の立場になるのもいいものだと感心する。と言ってもディミトリは、約束の10分前には辿り着いているのだから流石としか言いようがない。ベレトは首を振りながら「そんなに待っていないから大丈夫だよ」と笑い掛ける。

    「それにしても、今日は随分遅くまで仕事だったんだな」
    「ああ。先程まで取り引き先にな。今日は社には戻らずにそのまま帰ってもいいと言われて」
    「なる程。よかった。俺も帰りが遅かったから、ディミトリの夕飯の心配をしていたんだ」
    「せ、せんせぇ…!!」

    忙しなく揺れる金糸に、ベレトはふわりと笑みを浮かべるとディミトリの顔が赤く染まる。今日はディミトリひとりで夕飯を済ませる筈が、取り引き先との商談に時間がかかってしまったのだ。駄目元でベレトと外食でも出来ないかと連絡をすると、ベレトももう少しで仕事が終わるとメッセージが返ってきたのだ。そして今、ベレトの職場の最寄り駅で待ち合わせをしていたのである。

    「それより、お腹空いたから早く行こう」
    「ふふ、そうだな。今日は何にしようか、先生」
    「そうだな…」

    何気ない会話をしながら歩き始める。ベレトはいつも私服なせいか、今日の服装はなんだか幼く見える。大学生…、下手をすれば高校生に間違われてもおかしくないような格好だ。ディミトリはそう思いながらも、本人に教えたら何が飛んでくるかわからないのでそのままにしておくが。そんな事をディミトリが思いながら2人仲良く歩いている時だった。

    「君、駄目じゃないか。未成年をこんな夜遅くまでつれてちゃ」

    そう背後から声を掛けられ、2人して目を瞬かせる。そこにいたの警察官の制服に身を包んだ2人組の男。ひとりはディミトリの肩に手を伸ばしている。ベレトとディミトリがぽかんとしていると、別の警察官がベレトの元へ歩み寄る。

    「君、未成年だよね? 今何時かわかるかい?」
    「えっ…? 未成年……?」
    「同性でも、簡単についていっちゃ駄目だよ。君みたいな子を狙っている危ない大人もいるんだから。さぁ、交番に行って親御さんに迎えに来てもらおうか」
    「っ、ちょっ…!」

    警察官に手を引かれ、ベレトは慌てふためく。そんなベレトを見たディミトリは「先生!」とベレトを呼ぶと、警察官の男2人は目を見開く。ディミトリは先程の嫌な予感が的中してしまったと思うと、ベレトは溜め息をつきながら「身分証明書があるので、良いですか?」と警察官に問い掛ける。

    「ベレト=アイスナー。現在は予備校講師ですが、教員免許も持ってます。今年で26歳です」
    「な……!?」
    「26…歳…!?」
    「運転免許証があるのて、生年月日の確認をして下さい」

    淡々とした口調で警察官に運転免許証を見せると、2人は顔を青くさせる。そして慌てて笑顔を作ると「こ、これはこれは…あまりにもお若く見えましたので、つい…」と言うのにベレトも綺麗な作り笑顔で「よく言われます、未成年って」と棘のある返事をする。その光景にディミトリはまたやってしまったと溜め息をついた。

    「あと、彼は私の最初の教え子で年下ですよ。それでは、職務中に失礼しました」

    呆ける警察官を置き去りにし、ベレトはディミトリの手を引くとそそくさと歩いて行く。些か小走りな彼にディミトリは肩を竦めながら「すまない、先生…」と謝った。

    「疲れてつい、髪を解いてしまったから…屈強な男が幼気な少年を誘拐しようと彼等には見えていたのだな」
    「誰だ、その幼気な少年って。俺は立派な成人男性だ」

    明らかに不機嫌になってしまったベレトに、ディミトリはどうやって機嫌を直してもらおうかと考える。実はこうやって夜に2人で出歩き、警察官に声をかけられるのは今日で初めてという訳ではない。ディミトリは今朝、家を出る際には長い金糸を結っていたのだが、取り引き先に行ったりとばたばたしてしまい髪も乱れてしまった。仕方ないとそれを解いてしまったから、こんな面倒事になったのだろう。

    極めつけに、ベレトとディミトリは結構な身長差がある。そしてディミトリは身長も高く、体格も良いため警邏中の警察官には「未成年を連れ去る男」の様に見えてしまったのだと想像がつく。ディミトリはベレトの手を握り締め直すと「せんせい…」と甘えた声を出す。

    「ディミトリのせいではない。俺にもっと大人の魅力があれば…」
    「先生は今でも魅力的だぞ?」
    「…………そういう意味ではないのだが、何だかどうでもよくなってきた……」

    ベレトが諦めた瞬間、盛大に腹の虫が鳴く。これ以上騒ぐだけでも体力の無駄だと悟ったベレトは、「もうこの話はなし! そして今日の夕飯はディミトリの奢りだ!」と言うと「もちろんだ、先生」と笑みを浮かべる。愛らしい照れ隠しに堪らなくなり、その手を引き寄せると恋人繋ぎにする。赤面したベレトが目を逸らすのに、ディミトリは気にせず歩き出した。


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