異次元の旅人さん 不浄と冠する場所にそぐわぬ清水が、微動だにせぬ肢体から滲み出た血を体温もろとも攫っていく。流れの速さと、轟々と響く水音が、それが行き着く先は滝であろう事を伝えていた。
流れは早いが、事切れた体を運ぶ程には強くない。せいぜい血濡れた髪をすすぐくらいだろう。
辛くもと表現するに相応しい様相の勝利だった。お互い満身創痍で、最後の方は殆ど気力で打ち合っている様なものだった。少しでも己の信念に陰りが見えれば、地に膝をついていたのはバージルだったかもしれない。
バージルは倒れ伏すダンテ の顔を眺めた。
ぎゅっとへの字に結ばれていた口元は、込める力がなくなって弛緩してしまったのか、うっすらと開いて、決意に満ちていた強い眼差しも、今や瞼の奥に閉ざされている。
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