ヒューベリオンは女神となった武道が新たに結成したチームと関東卍會が激突し、ようやく万次郎を負かすことができた武道はすでに満身創痍で、息をしているのがやっとな程であった。
「マイキー君…、負けた気分、どう、ッスか?」
「…なんでこんなに気持ちが晴れてんだろうな……。」
「ははっ……、じゃあ、もう大丈夫だ…。」
「待ってよ、タケミっち…!オレが悪かったから!死ぬんじゃねぇ!!」
「大丈夫、まんじろ、には……みんなついてるから。」
ニコリと笑って万次郎に語り掛けるが、万次郎は大粒の涙をこぼしてブンブンと首を横に振った。その度に万次郎の涙が武道の顔に雨のように降りかかる。
それはまるで、武道が恋した男を失ったあの雨の日のような──
(次があるなら、オレは……)
そこで、花垣武道の意識は途絶えた。
はずだったのだが、目が覚めたら自分の実家の部屋だった。
「えっオレ、死んだんじゃ……?あれ、なんか声が……?」
自身の体に違和感を覚えた武道はベッドから起き上がってカレンダーを確認したら、なんと2003年の7月31日だった。
マイキーの兄である佐野真一郎が死ぬ日まであと2週間しかない、と慌てた武道は急いで作戦を練らなければと思って、先ほど感じた違和感の正体に気づいた。
「…オレ、小学生に戻ってンのかよ!………って……まさか……」
そーっと着ていたパジャマのズボンと下着を引っ張って覗き込むと、血の気が引いていくのが自分でも分かった。
─性別まで変わっていたのだ。
「ちょっと待ってくれよ、タイムリープの次は逆行で?しかも性別まで変わってるとか何なんだよ~……………………ま、いっか。とにかく、せっかくここまで戻れたんだ、真一郎君を助けてマイキー君の闇落ちを阻止してみせる!」
幾度となく繰り返したタイムリープにより強靱な精神の持ち主となった武道は、今度こそみんなを幸せにするんだと意気込んだのだった。
(中略)
武蔵神社での抗争時、清水将貴─キヨマサ─に刺された龍宮寺を救うべく、20kg以上重い巨躯を背負って一歩一歩進んでいく。
「男ン時と変わらない力で助かった…。待ってて、ドラケン君、オレが、必ず助けるから…!」
そこにキヨマサ達が現れたが、武道は立ち向かった。以前と同じように、左手の手のひらを短刀が貫通しても折れずに、前回と同様に絞め落とすことに成功し、残った取り巻きの連中も溝中五人衆が駆けつけてくれたおかげで事なきを得た。
その後、一時は生命の危機を彷徨った龍宮寺だったが一命を取り留めた彼はその時に不思議な夢を見た。
武道が、何度も何度も時空を超えて、万次郎をはじめとした様々な人間を泣きながらも救っていく夢だった。
その中で、龍宮寺は狙われた武道を庇って拳銃で撃たれて死んでいた。しかし、彼にはその事について何の悔いもなかった。
なぜなら、龍宮寺は武道のことをいつの間にか愛していたから。
(今の俺と全く同じじゃねぇかよ。つーか……夢ン中でもキヨマサに刺されるとか)
『夢じゃねーよ、これは、タケミっちがずっと繰り返してきた記憶だ。』
(あ”?誰だよテメェ)
『オレは、タケミっちがこの時代に逆行してくる前にいた時空でのオレだよ。
アイツさ、ヒナちゃんやマイキーだけじゃなくてオレも助けようと足掻いてんだワ。見ただろ?オレがタケミっち庇って死んだの。』
もう一人の龍宮寺は、今の自分よりも少し年上なのだろう。少し大人びていた。
そんな彼が見せてくれたのが、武道が繰り返してきたタイムリープでの出来事の一部始終だった。
そして、万次郎を負かしたその後で息も絶え絶えな武道が望んだこと。
─次があるなら、オレは……。女の子になれたらいいな…そしたら、ドラケン君を好きでいれる……─
『何の因果かしらねーけど、アイツ何でか女になってんだよ、気付いてたか?』
(…あぁ、つっても、気付いたのはさっきだけどよ。)
『大事にしろよ?』
(あたりめーだろ、別の世界での分も含めて大事にする。)
最後にそれだけ言って、もう一人の龍宮寺は消え、急に真っ白な光に包まれた。
「…オレは……助かったのか?」
「ドラケン君!!」
不意に聞こえた声は、今聞きたいと思っていた声だった。
目を開くと、そこには大きな目にいっぱいの涙を浮かべて心配そうにこちらを見つめる武道がいた。
「タケミっち……ありがとな。オマエは命の恩人だ。」
「いや、そんな……オレがもっとうまく立ち回ってれば……。」
力の入りにくい腕を持ち上げて、包帯を巻かれた左手を優しく撫でた。
女の身体に傷を残してしまったが、それが自分を守るために戦ってくれた傷だと言うことが途方もなく嬉しいと思ってしまう。
「女だってのに、キヨマサに立ち向かってオレを守ってくれるとかよぉ……どんだけオレを惚れさせれば気が済むんだよ?」
「うぇ!?お、オレが女っていつ気付いたンスか?って、ちょ、惚れたって…え?」
「オマエが女だって気付いたのは、オレを背負って運んでくれてた時、だな。ちっと胸に手が当たっちまって、少し膨らんでるのに気付いた。
ちなみに惚れてんのは、割と出会ってすぐくれぇだったぜ。」
龍宮寺は武道を見つめて、『オレと付き合ってほしい。』とシンプルに伝えた。
しかし当の本人は、龍宮寺を守るためとはいえ怪我をさせてしまった事への責任を取って付き合うのだと思い、断ろうとしていた。
(中略)
付き合うようになってから、集会に行く時は武道の家か龍宮寺の部屋のどちらかの部屋で一緒に過ごしてから、龍宮寺にサラシを巻いてもらって一緒に出るのがルーティンとなっていた。
この日も、集会前に武道の部屋に立ち寄って、武道は龍宮寺の膝の上に乗ってマンガを読んで、その後ろから抱えるように龍宮寺が武道の方に顎を乗せて一緒にマンガを読んでいた。
すると不意に龍宮寺の手が動いて、武道のささやかな胸をその大きな手のひらで掴む。
「わっ、ちょ、ドラケン君…っ。」
「んー。」
「こんな、んっ、小さいの触ったって…」
「ばっかだなぁ。サイズなんか関係ねーよ。でもよぉ、これをオレが育てるのが楽しみなんだワ。」
ムニムニと小さいながらも柔らかい胸を揉みながら武道を呼んで横を向かせると、かぶりつくように口付けた。
時折出る喘ぎ声は龍宮寺の唇によって塞がれているため、部屋には湿った水音と武道のくぐもった声のみが響く。
「んぅ、ふ…っ、ちゅ、…あっ!」
「きもちーだろ?」
「うんっ、あ、やっ、そこダメぇ…」
「なんで?乳首こうやってコリコリされんの好きだろ、オマエ。」
「でも…この後集会あるし、んあっ!」
「あ"ー、早く抱きてぇなー。……さて、そろそろサラシ巻いてやっから脱がすぞ。」
武道が抵抗する間もなく、着ているシャツやスポーツブラを脱がして上半身裸にする。
先ほどまでの愛撫ですっかりたちあがっている乳首を片方は指でカリカリと引っ掻き、反対側はパクリと咥えて舌で転がしたり吸ったりして、武道の性感を高めていく。
こうすれば女性ホルモンが活発になるんじゃないか、龍宮寺は考えているため、サラシを巻く時はつい悪戯をしてしまうのだ。
「あっ、や、ドラ…ケンくぅ、んっ!」
「悪い、オレだって恋人なんだからさ、オマエの可愛いおっぱい触りてぇんだよ。」
「うぅぅ………。それは、オレも男だったから分かるし、いいッスけど……集会の前はちょっと控えてほしいッス。」
真っ赤な顔をして、潤んだ大きな目で見つめられた龍宮寺は自爆した。ダッシュでトイレに駆け込み暴発した残骸を処理すると、武道に廊下からシャワーを借りる旨を伝えた。
シャワーで洗い流している間に武道が替えの下着(週1で泊まるので置いてある)とバスタオルを用意してくれてあった。
(なんか……夫婦みてぇだな。)
こんな話を落ち着いたら書く予定。