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    Tonya

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    Tonya

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    お題「白い秋」
    ボクタイ

    鬱蒼とした森を抜け、薄野に出た。色づいた山と薄が夕日に輝き、一面が燃えているようだった。
    なんだか恐ろしい気がしてジャンゴはその場を離れた。野営地に戻り、火を起こし簡単な食事を終えてひと眠りする。
    夜半に目が覚めた。焚火はとうに消え、冷たくなった枯れ枝や灰が残っている。薄闇が辺りを覆い、取り囲む木々が見下ろしてくる。
    嫌な夢を見ていた。内容は思い出せない。首を振って起き上がり、水を一口飲んで歩き出した。
    周囲の墨色が質量をもってのしかかってくる錯覚を覚えた。曖昧な夢の続きに立っている気がして落ち着かない。とにかくひらけた場所へ行きたかった。
    月明かりをたよりに愛用の銃だけ持って歩き続け、野原に辿り着いた。
    そこが夕方と同じ場所だと、とっさにはわからなかった。視界を焼く斜光は鳴りを潜め、かわりに巨大な月が覗いていた。温度のないやわらかな光に一切の色を奪われ、周辺は白く変貌していた。薄の陰影が幾重にも重なり、それが実際以上の途方もない奥行きを感じさせる。
    呆けたように見つめていると、背後の茂みががさがさと音を立てた。
    夢の続きだ。息を呑んだとき、慌ただしい動作で茂みから野鳥が飛び立った。
    急に頭が冷えた。まとわりついていた気配が消え、ただ荒涼とした現実の只中に佇んでいた。
    夜風が吹き抜ける。ジャンゴは踵を返した。
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