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    Tonya

    2025.2 再開。お絵描きの習慣化を目指して、しばらく練習記録を投げる予定です。

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    POIPOI 16

    Tonya

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    だいぶ古い文を発掘したので。
    鋼。シャンバラ後の兄弟。

    駅へ戻ると楽しそうなはしゃぎ声が聞こえてきた。弟の背中を見つけて近付くと、アルが小さな子供を肩車している。
    「アル、悪い。待たせて……」
    「あ、兄さん!」
     振り返った姿を見て、エドは言葉を失った。アルの肩に乗った少女が、不思議そうにエドを見つめる。
     見覚えがあった。茶色のおさげ。くりくりした大きな瞳。
      救ってやれなかった子。
    「ニーナ……」
     茫然とするエドに対し、アルは手慣れた様子でバランスを取る。その姿に巨体の鎧を空目した。
    「この子、迷子らしいんだ。さっき会ってさ、話してるうちに仲良くなった」
      説明を加えるアルに、首を傾げて少女が尋ねた。
    「お兄ちゃん、この人だあれ?」
    「この人はね、エドワードっていうんだよ。僕の兄さんなんだ」
    「お兄ちゃんのお兄ちゃん?」
    「そう。仲良くしてあげてね、ニーナ」
      ニーナは手元のアルとエドの顔を交互に見比べ、にっこり笑った。
    「よろしくね、エドワードお兄ちゃん!」
     胸の中に色々な感情が湧き上がる。懐かしさ。後悔。それらをゆっくり呑み込んでから、エドも笑ってみせた。
    「こっちこそよろしくな、ニーナ」
     そのとき、改札口から一人の男が抜けてきた。小脇に紙袋を抱えている。まわりを見回して三人の姿を認めると、慌てた様子で走り寄ってきた。
    「ニーナ!」
    「あっパパだ!!」
    地面に下りたニーナは、父親の膝に抱きついた。
    「パパ、おかえりなさい」
    「一体どこに行ってたんだい。探したじゃないか」
     肩で大きく呼吸をしながら、男は深く安堵のため息を吐いた。
    「お父さんが見つかってよかったね」
     嬉しそうに頷く娘に、男は驚いた表情で二人のほうを見た。近くに人がいたことに気付かなかったようだ。
    「君達は……?」
    「一緒にパパを待っててくれたの。エドワードお兄ちゃんと、アルフォンスお兄ちゃんだよ」
     男は恐縮した口調でお礼を言うと、家族で駅へ来る途中に妻とはぐれてしまったことを話した。道を戻って飼い犬の餌を買っていた妻と合流したはいいものの、今度は娘の姿がないことに気付き、慌てて引き返してきたのだという。
    「すまなかったね。近頃物騒な話も聞くから、焦ってしまったよ」
    「いいですよ。それより、もうニーナの手を離さないであげてくださいね」
     男は丸眼鏡の奥の目を細めて、もちろんだ、と答えた。
     遅れてきている母親を待つと言い、父娘は改札のそばに並んだ。黙ったままのエドに、アルが「大丈夫だよ、兄さん」と囁く。
     改札口から女性が現れ、駆け寄ったニーナを抱き締めた。男は家族と幸福そうに笑っていた。
     まもなくベルが鳴り響き、列車が軋んだ音を立てて構内へ入ってくる。 娘を真ん中にして、親子は車両に乗り込んだ。
     ホームの乗客をあらかた乗せ終えた列車がゆっくりと動き出す。
    「エドワードお兄ちゃん、アルフォンスお兄ちゃん、バイバイ!」
     窓からニーナが元気よく手を振る。手を振り返す間にも、列車はどんどん遠ざかっていった。
     線路の向こうに車両の最後尾が消えた頃、エドは呟くように言った。
    「……そうだな」
     わかっている。ここはもう、夢の中じゃない。この世界で生きる彼らには、彼らの人生がある。
     ただ、今度はあの小さな少女が幸せでいてくれればいい。
    「俺達も行くか」
    「うん」
     二人は並んで歩き出す。ホームに吹き込んだ風が、兄弟の髪を揺らして通り過ぎていった。
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    Tonya

    TRAININGお題「神のハゲ」
    ボクタイ ジャンゴ
    大変なことをしてしまった。
     ジャンゴは頭を抱えていた。
     窓の外はしとしと雨が降っている。おてんこは籠に入って眠り込んでいた。はみ出たひまわりに似た頭部は不自然につるりとしている。てっぺんの花びら型のパーツが一枚、欠けているためだ。
     欠けたものはどこへいったかというと、ジャンゴの手の中にあった。
     痛ましい相棒の姿にジャンゴは再び視線を下げた。
     おてんこさまを毟ってしまった!
     故意ではない。不慮の事故である。
     なぜこんなことが起きたのか。
     遡ること数十分前。

     最近は雨続きで、今日も細い糸のような雫が街を包んでいた。雨は雨で恩恵がある。リタやマルチェロは結構好きだと言っていた。染み込んだ雨水は大地を潤し、草木の糧となり、やがて空へ帰っていく。自然の循環を感じるらしい。なるほどと思う。
     しかし、ジャンゴは太陽少年である。銃のバッテリーチャージには日光が必要だ。他の武器でも戦えはするが、ソル・デ・バイスのない今、属性攻撃の際にはやはり銃が入用になる。お天気下駄は切らしているし、回復用アイテムでまわすにしても諸々の返済で懐はひと足早く冬を迎えている。太陽スタンドの中身は言わず 4226

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