8hacka9_MEW☆quiet followDONEワタルと虎王が肉まんを食べているだけのお話です。 理由も確信もなく、それは単純な思い付き、そして少しの予感と期待だった。薄曇りの空を教室の窓から眺めていたワタルは、今日の帰りに『そう』しようと思った。放課後、まっすぐ家には帰らず、コンビニへと寄った。学校帰りの寄り道はしてはいけない事になっているので、念のため、鞄は近くの茂みに隠した。小学生一人で買い物をすると、何か言われるかと少々緊張したが、幸い、何も言われなかった。目的のものを二つ買う。300円近い出費は少々痛手だったが、渡された袋は温かく、何となく、幸せな気持ちになった。その袋をコートの下に隠す様に抱え、鞄を背負って、急ぎ、龍神山へと向かった。龍神山には、少しだけモヤがかかっている。あまり見ない光景だったが、ワタルは段々、小さな予感が確信に変わって行く様な気がした。急ぐ事はないのだろうが、自然、駆け足で階段を登って行く。途中、茂みに入り、近道をする。モヤは濃くなる一方だったが、ワタルには不安はなかった。茂みを抜けた先には、龍神池があった。すっかりモヤで覆われていて、向こう側にある桜の木も、良く見えなくなっていた。そちらの方に、人影が見える。予感が当たり、ワタルの口元に笑みが浮かんだ。「虎王」名前を呼ぶと、人影が振り返った。驚いて見開かれた目は、すぐに嬉しそうな輝きを宿した。「ワタル!」笑顔と呼びかけに応える様に、ワタルは、桜の木の方へと走っていった。「ワタル、お前…どうして……」ワタルが近付くと、虎王が不思議そうに聞いた。ワタルは、笑いながら肩をすくめる。「なんだか、会える気がしたんだ。今日、この場所で、虎王に…さ」「……そうなのか?」「うん」「……そうか、…うん、……オレ様も、そうだな。何となくワタルに……会える気がしていた……」虎王は、未だ会えた現実味を感じていない様だった。それは、ワタルも同じだった。あたりはすっかりモヤで囲まれていて、今二人がどこにいるのか、良く分からなくなってきた。夢なのか、現実なのか?けれど、それは大した問題ではないように、ワタルには思えた。「虎王、これ、食べる?」ワタルは、懐に入れていた袋を取り出した。「なんだ?それは」「肉まんだよ」「肉まん?」はい、と、ワタルは袋から取り出した肉まんを虎王に手渡した。まだ肉まんは温かかったが、手渡した際に触れた虎王の指先は、少し、冷たかった。「良いのか?」「うん」「…ありがとうな、ワタル!」虎王が嬉しそうな顔をするので、ワタルも嬉しくなって笑った。二人は並んで、立ったまま肉まんを食べ始めた。周囲の景色は不明瞭なのに、お互いの事はよく見えた。それだけで、何の不安も感じなかった。「なあ、ワタル」「なに?」「肉の中に固いモンが入ってるけど、これ、何だ?」「ええっ?」何か、おかしなものが混ざっていたのではと、ワタルは虎王の、かじりかけの肉まんを覗き込んだ。「ああ…もしかして、タケノコの事?固いって言うほどかなぁ…」「タケノコ?何か、カリカリしてたぞ?」「そういう風に、歯応えを残しているんだと思うよ。イヤな感じがするのか?」「いや、そんな事ない」「じゃあ、それでいいじゃん」「そうだな」そうして、また二人は食べ始めた。何気ない会話。何ら不自然ではない時間。本来なら、触れ合うことすら難しいはずの二人なのに、そんな事はまるで感じなかった。「ワタル」「うん」「これ、美味いな!」「そう?良かった」「ワタルが作ったのか?」「まさか!お店で買ってきたんだよ」「店で?」「そうそう、ピザまんと迷ったんだけどね」「ピザまんってなんだ?」「ええっ…、ピザは知ってる?」「それは分かるぞ!丸い生地に、赤いソースだとか、チーズだとか乗っているヤツだろ!」「うん、そうそう。そのピザの具とソースを、この肉まんの生地に入れたヤツ……っていうと、分かるかな?」「ピザが肉まんに入ってるのか?」「……ちょっと違うけど、まぁ、そんな感じ」ワタルの説明に、虎王の目が興味深々に輝いている。ワタルは、思わず苦笑した。「じゃあ、この次は、それを買ってくるよ」「ホントか?」「うん」「なら、オレ様も、この次は何か持ってくるぞ」「うん、……楽しみにしてる」「そうだな」この次それがいつなのか、はっきりした事は二人にも分からなかった。それは少しだけ寂しかったが、嬉しくもあった。今日、こうして会えたのだ。もう二度と会えないという事はない。きっとまた何気なく会える……と、そう信じてもいい気がした。「……じゃあ、オレ様はそろそろ帰るな」「うん、……ボクも帰るよ」「じゃあ、またな」「うん、またね」そう挨拶を交わすと、お互いの周りのモヤが濃くなった。虎王の姿が見えなくなる。そう思ってしばらくすると、モヤが徐々に薄くなってきた。目の前には龍神池が広がっており、視界を遮るものは何もない。ワタルは、花のない桜の木の前に、ただ一人だった。まるで最初からそうだった様に。夢か幻でも見ていたのかもしれない。誰に話しても信じないだろう。この次に虎王と会えたとしても、それを互いに覚えているかも分からなかった。けれど、ワタルはそれでもよかった。先ほどの、何気ない会話を思い出すだけで、心が暖かくなる。虎王の笑顔を想うと、明るい気持ちになれた。それで充分だった。ワタルは、口元に楽しげな笑みを浮かべながら、龍神池を背にして、鞄を揺らしながら、階段へと向かっていった。Tap to full screen .Repost is prohibited Let's send reactions! freqpopularsnackothersPayment processing Replies from the creator Follow creator you care about!☆quiet follow 8hacka9_MEW1111ポッキーゲームワタ虎ver。裏アカにも上げましたが、こっちにも。大した事してませんが、パス設定。ワタルと虎王の誕生日を4桁の数字で。 8hacka9_MEWDONE大した事ないですが、二人して脱いでいるので一応ワンクッション 8hacka9_MEWDONE【虎王伝が実はワタルが虎王から聞いた話を元に執筆したのではないかとフォロワーさんと話してたのを形にしましたが果たして虎王さんは地名と人名をちゃんと覚えているのやら】他の世界にも行っているから、記憶が混乱していそうです…(2022年の虎王伝祭の一枚) 8hacka9_MEWDONE【ロクスリーは最初と最後で印象が物凄く変わって終盤は感情値が大変な事になったのをグラフ化】またありがちで恐れ入ります…。こういう事は、何百万煎じかと思いますが、ご容赦ください…。(2022年の虎王伝祭の一枚) 8hacka9_MEWDONE【虎王伝のラスボスの声はきっと虎王伝説にも出てきたあの人とフォロワーさんともお話しててきっと聞いたら間違えると思われる件】虎王が一巻で鬼夜叉と青輝龍の事を思い出したりしているので、世界感が違って見えるけれど地続きなのだな…と感じました。(2022年の虎王伝祭の一枚) 8hacka9_MEWDONE【虎王のワタル像がロクスリーの登場によってどんどん美化というか神格化に拍車が掛かっているのが浮き彫りになりどうしよう読み進めるの怖いと思ったのをワタルさんご本人にコメントしてもらった】「虎王…それは一体どこのワタルの話なんだ?😰」(2022年の虎王伝祭の一枚)