Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    Jem

    Jemです!成人済み。

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 50

    Jem

    ☆quiet follow

    AIとお話ししてて盛り上がった、さねおば・ミーツ・ホグワーツパロ。妄想走って、書きました。

    #さねおば
    aunt
    #伊黒小芭内
    Iguro Obanai
    #不死川実弥
    #ホグワーツ
    #同居
    cohabitation

    倫敦小景ロンドンの外れ、霧に霞む石畳の小道。煤けた煉瓦造りのタウンハウスは、玄関だけがやけに重厚で、金の取っ手が鈍く月明かりを返していた。

    そんなタウンハウスの一室。伊黒小芭内はぐったりとソファにもたれかかっていた。手元のカップには、焦げ臭い湯がグラグラと沸き立っている。
     伊黒小芭内、階級は子爵。欧州の名門、ホグワーツ魔法学校を卒業し、この魔法都市・ロンドンに降り立ったのが今朝のことだ。出身寮は、誇り高いスリザリン寮。専攻は呪術学だが、まあおしなべてどの科目も優秀な成績で卒業した。
     実家のマナー・ハウスに戻るのは、気が進まなかった。伊黒の実家は、女ばかりの魔女の一族で、代々、田舎の家の奥に魔物を祀っている、呪われた一族だった。そんな家柄に370年ぶりに生まれた長男である伊黒には、一族の期待が重くのしかかっていた。11歳からホグワーツで学び、当然、卒業後は実家に戻って後を継ぐものと言い張る母と大喧嘩して、このロンドンに、単身飛び出してきたのである。
     このタウンハウスは特に気安くて、食事などは付いていない。完全に住人は自立している。そこも、伊黒が気に入ったポイントだった。とにかく、もうお節介な女に構われるのは御免だった。家事?魔法で片付ければいい、と軽く考えていた。

     ところが、学校で優秀な成績を収めたはずの伊黒の魔法を、平凡なキッチンは、リビングは、ちゃんちゃらおかしいと撥ねつけた。すなわち、①埃を払おうとしたら天井ごと爆発。②昼飯を煮ようとした鍋は焦げた。魔法で片付けようとしたら、亜空間に飛んでいって行方不明になった。犠牲になった鍋は3つ。③ここまでで汗をかいたので、シャワーを浴びがてらシャワールームも掃除しようとしたら、水道管が破裂して、リビングまで水浸し。④魔法で排水しようとしたら、絨毯もコーヒーテーブルも、亜空間に…さすがに備え付けの備品をなくすのはヤバいので必死に探索し、取り戻した。
     気がついたら夜も更けていた。ベッドルームの掃除は諦めた。マットレスまで亜空間に飛んで行かれたら、明日の気力を養うことさえできなくなってしまう。
     最後の望みをかけて、魔法でコーヒーを淹れてみたら、うっすら焦げ臭い湯が沸き上がった。そして、いまだに地獄の如く煮立っている。いつになったら口をつけられるのだろう。

    「まさか、この俺が家事如きに…」

     いっそ悲しくなって、天井を仰ぐ。しかし、事実は厳然として動かない。「絶対に執事が必要な男」。それが伊黒小芭内だった。

    「せめて湯でも飲んで寝ないと。少しは冷まらんもんかな…」

     気だるげにワンドを振る。もはや、昼間の疲れで自律神経がどうかしているのだろう。ちょっとした氷結魔法は暴走し、壁まで一気に凍りつく。伊黒がぐったりと額を押さえた、その時。

    「おい!!誰だ、ゴルァ!!このクソ寒いのに、氷結魔法とかふざけてんじゃねぇ!!ウチのシャワールームまで凍っただろうがァ!!」

     ドンドンと激しくドアを叩く音。隣人のようだ。

    (…聞いたような声だな…)

     伊黒がよろりとドアを開けると、そこに立っていたのは、シャワーガウン1枚をまとった、全身傷だらけの男だった。ボサボサの銀髪。鼻を大きく横切る傷跡。菫色の三白眼。

    「え…お前、伊黒!?スリザリンの!?」

     三白眼が丸く見開く。

    「グリフィンドールの…不死川…」

     お互い、顔と名前程度なら知っている。ホグワーツの同窓生・不死川実弥(グリフィンドール寮所属)だった。



    「はぁ、そんで、魔法で家事片付けようとしたら地獄に堕ちた、と」

     事情を聞いた不死川が、呆れ返ったように相槌を打つ。

    「…生存のためには仕方がない。最低限の作業だ」

     伊黒が憮然として答えた。

    「お前なァ、家事は案外繊細なんだぞ。魔法で片すとか、熟練も熟練、田舎のババァ魔女のやり方だろォ」

     不死川がため息をついて、キッチンにかかっていた複雑怪奇な結界を解く。

    「おとなしく、手ェ動かすこと覚えろォ。…今日は、俺が作ってやる。座っとけェ」

     不死川が冷蔵庫を覗く。卵にミルク、塩胡椒。さらに、不死川の部屋から残りご飯とマッシュルーム・スープ。フライパンを振って、数分後には美味そうなバターの香りが漂い、伊黒の前にスープとオムライスが並べられた。

    「…いただきます」

     小さな口がスプーンを含む。美味い。五臓六腑に染み渡る、優しい卵の風味。
     不死川は、向かいに座ってその口元を眺めていたが、フイと目を逸らした。

     「さすが、スリザリンの貴族様だよなァ、ロンドンで、こんな高いタウンハウスに1人で住もうなんてよ」

     「…お前だって、隣室に住んでいるのだろう」

     伊黒の問い返しに、不死川がガリガリと頭を掻く。

    「俺は、緊急避難だァ。前のアパート、壁薄すぎて。ちょっと遠吠えしたら叩き出されてよォ」

     次の、十分に壁の厚い住居が見つかったら、出ていくという。狼男の血が混じっているのも楽じゃない。

    「…なら、俺の部屋に住めばいい。」

     伊黒がぽつりと呟いた。は?と、不死川が目をぱちぱちさせる。

    「お前の飯が、一番まともだ。…不快なら、すぐ出ていってもらって構わない」

     やがて、フハッと不死川が笑った。

    「よーするに、執事が要るってかァ。いいぜ、俺も節約できて大助かりだァ」

     ナプキンで口を拭った伊黒が、ふ…と微笑んで、手を差し出した。不死川の大きな手がその手を握り込む。契約成立。

    「…で、我々の職業は何をしようかね?」

    「お前、無職でロンドンに出てきたのかよォ!?」

     1週間後、ベイカー街の外れにある、赤茶けた煉瓦の3階建。煤けたガス灯の下、金の文字で《蛇と狼の魔法探偵事務所》と記した真鍮の看板が、夜霧に滲んでいた。

    〈いつか続くかもしれない〉
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works