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    やまと

    @umasukesankana

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    やまと

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    東の海の新聞きっかけにバラティエのことを話すサンジくんとブルックを書きたかったんだけど全然ブルックが突っ込んだ会話してくれなくて詰んだ。続きもう書けなさそうなので供養。

    ##ワンピ

    サンジとブルック 港を出航した初日は大忙しだ。買い溜めた食料を航海予定日数と何かあったときのために更に追加で何日分かに分配し、塩漬けや酢漬け、オイル漬けや砂糖漬けと食材に合った方法で大量の保存食を作る。余裕があれば肉やチーズを燻製にすることもあるが、クルーの人数が増えてきてからあまりその余裕は無いに等しい。一度の航海の日数も偉大なる航路に入ってから長くなったので、その分保存食を作る量も自然と多くなった。新世界に入ってからは更に増えた。
     基本的に一人でこなすため——だからといって手助けが欲しいかというとそうでもない。食料が減る危険性が大いにあるからだ——丸一日かかるなんてことはザラだ。その間、食事の準備もあるため一日中ほとんど忙しなく動き続けている。
     保存食の仕込み二日目。まだ少しだけ作り終わっていないものがあった。昨日焼いておいた堅パンをもう一度オーブンに入れ、更に火を通す。パンに含まれている水分をしっかり蒸発させると虫がわかなくなり、保存期間も随分長くなる。船乗りに欠かせない保存食だ。
     パンを焼いている間、山積みのキャベツに手を伸ばす。手早く小さく切り刻み脇に置いてある樽に敷き詰めた。気が遠くなるくらいの数のキャベツを刻み樽いっぱいになるまで詰め、大量の酢を流し込む。長期間の航海において、船乗りの生命線となるザワークラウトの出来上がり。
     ザワークラウトの樽を食料庫に運び終えると、堅パンがちょうど良い焼き具合に仕上がっていた。オーブンから取り出し、冷ますためにキッチン台に所狭しと並べた。
    「よし、こんなものか」
     あとはパンが冷めるのを待つだけ。キッチンでおもむろに伸びをすると、煙草を取り出して火をつけた。
     ようやくひと息ついて腰を下ろすと、ダイニングテーブルの上に置いてあった本や手帳や新聞を目の前まで手繰り寄せた。昼食の準備までまだ時間があるのであらかじめ用意しておいたものだ。堅パンとはいえ、冷ましている最中に私物を取りに行こうものなら食欲の化身とでも言える奴らの餌食になってしまう。
     まずは手帳を開き、作った保存食の記録をつける。昨日調理を始める前にまとめておいた配分も眺め、今回の航海での食事風景を想像した。
     今回はバターが手に入った。悪くなる前にさっさと使い切りたいが、バターは何にでも使えるのでどう使ってやろうかと決めるのに随分悩んでしまった。やはり堅パンだけじゃ寂しいから、小麦粉もまだたくさんあるので山型パンも焼いてあげたい。このあたりで釣れるというトビカレイもバターでソテーすると絶品らしい。買い出しのときに魚屋の主人から他にもいろいろレシピを教えてもらったので、船長たちの釣果次第で随時メニューを変えるのも悪くないと思った。小麦粉の余裕があるから、ダンプリングを作ろう。魚を包んで煮込んだときはかなり好評だった。
     紙の上に並ぶ備蓄食料の一覧を眺めていると、頭の中に次々と料理のアイデアが湧き上がってくる。あれも作りたい、あれも食わせてやりたい。船員たちの喜ぶ顔を想像して思わず口の端が上がってしまった。
     ただ好き放題作ればいいというわけではないのが、船のコックの悩みどころでもあり腕の見せどころでもある。かつて海上レストランで働いていたころも従業員の栄養状態には気を配っていたが、数日おきに買い出し行くことができたし、契約している行商船が定期的に食材を運びに来てくれていた。
     長く航海して残り僅かになった食料をうまく分配し食いつなぐことができたとき、その僅かな食料で似たようなものが続いても飽きさせないようなメニューを提供できたとき、限られた食材を腐らせる前にうまいこと使いきれたとき。レストランに居たときとはまた違った達成感ややりがいが、今の自分を支えてくれている。
     手帳に献立のメモを書き込んでいると、ダイニングに誰かが入ってきたので目線だけを扉の方へ移した。長身の骸骨が少し屈んで扉を通っているのが見えた。
    「調理は終わりましたか? いつもありがとうございます」
     ダイニングテーブルでくつろぎながら手帳を開いている様子を確認してブルックが言った。
    「いや、好きでやってるんだ。どうってことねえよ」
    「お水、もらってもよろしいですか? コーヒーを淹れようかと」
     おれが淹れようか、と言いかけると、ブルックは慌てて席を立たないよう肩に手をかけて静止させた。
    「ああ、違うんです! サンジさんを労いたくて。コーヒーを淹れさせてください」
    「じゃ、お言葉に甘えて。ソーサー割るんじゃねえぞ」
     この老紳士、意外と抜けたところがある。以前皿を割りそうになったことがあるため一応釘を刺しておいた。故意ではないのでキツく言う気にはなれないが、逆に故意ではないからこそタチが悪いとも言える。
    「ああそうだ、それと」
     ナミさんたちにも、という言葉が口から出る前にブルックの声が耳に届いた。
    「分かってますよ。お嬢さんたちにもちゃ〜んとお届けします」
    「頼むぜ」
     コーヒーを淹れている音を聞きながら、手元に視線を落とす。手帳の他に、栄養学についてや食べられる動植物についての本も重ねて置いてある。新しく入手した本もあるので読まなくてはと思うのだが、それよりも新聞に手が伸びてしまう。
    「珍しいですね。東の海の新聞ですか?」
     コーヒーを持ってきたブルックが、手元の新聞を少し覗き込んで言う。
    「ああ、港でわざわざ買ったんだ。少し高かったけどな」
     大いなる航路の、それも新世界で東の海の情報だけ載っている新聞を手に入れるのはひと苦労だった。だがどんな場所にも物好きは居るもので、東の海だけでなく他の三つの海の新聞も取り寄せて売っている変わり者を見つけることができた。
    「あとで読ませていただいてもよろしいですかね。あまり東の海のことは知らなくて。ちょっと興味あります」
    「もちろんだ」
    「それではごゆっくり」
     そう言うと、給仕係のようにコーヒーをふたつ乗せた盆を持ってダイニングを後にした。
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