体重何キロあるとおもってんの ベッドには、人が横たわっている。ベッドは簡易的なものではなく、決して小さくはない人物が、枕に頭をのせ、身体は新雪のように真っ白なシーツがかけられている。
悟は、ドアノブを握ったままなのを思い出し、手を離して脚を動かす。手をポケットに入れたとき、背後でドアが閉まる音がした。靴を履いていない足で歩みを進めるとそう広くはない部屋なのですぐにベッドにたどり着いた。
ベッドには、七海建人が横たわっている。高級感のあるマットレスは七海の体重を受け止めた分沈み込んでいた。悟は、七海の口元に手のひらをかざし、呼吸があるのを確認した。七海は生きてる。知らないうちに詰めていた息をふっと吐く。胸にわだかまっていた不安がすこし拭われた気がした。かざしていた手を七海の頬に滑らせる。あまりまろいところのない、彼の由来特有の削げた頬だ。血色は悪くはない。”労働はクソ”とは言いながらも、戦い続ける男の顔だ。
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