タイトル未定 Bパート抜粋「あぁ、ヘクトールか。ちょっとこれを見てくれ」
アヴィケブロンが指さした先には、キラキラと輝く色とりどりの小石のようなものが調理用のバット並べられていた。
「なにこれ?宝石?」
「これは琥珀糖。寒天で色をつけた砂糖液を固めて表面を乾燥させて作る菓子なんだが、ゴーレムの材料にしたいと言って聞かないんだ」
今やキッチンの守護者と呼ばれているエミヤがそう説明してくれた。ゴーレムにして役立てると言っても食べ物を粗末にする行為は、彼にとって許せないのだろう。
「食糧兼兵器。君もいい案だと思わないか?籠城戦で活躍すること間違いなしだぞ」
「それはちょっと魅力的かも」
十年に渡る籠城戦を経験した身として食糧を得ることと戦力の維持は重要な要素だ。それを同時に解決できるとあれば、アヴィケブロンの言い分も一理ある。
「ヘクトール、君まで」
「状況によっちゃありってだけだよ。なあ、エミヤ。ほんの数個ぐらいいいだろう?」
「……少しだけだからな。ちょっと待っていたまえ」
エミヤはそう言うと、ポケットから小さな小瓶を取り出して琥珀糖を何個か入れ、アヴィケブロンに渡した。
「大事に扱うように」
「分かった。感謝する」
アヴィケブロンは小瓶を受け取ると、ギリギリ聞き取れる声で「フフ……。これで一歩前進だな」と呟いた。不穏な気配がだだ漏れている。彼の作るゴーレムがエネミーとならなければいいが、と本気で思った。そんなことを考えていると、通信のノイズが入る。