タイトル未定 Cパート抜粋 仮面で顔は見えないが、きっと得意げな顔をしているのだろう。アヴィケブロンの声は、普段より少し弾んでいる。
「僕はしばらく地下にこもる。頃合を見て地上に戻るから、周辺の警備を頼むよ」
「了解、了解」
「おう、任せなァ!」
アヴィケブロンは地下へと降りていき、俺とクー・フーリンは地上に残る。
「お前さん、釣りが趣味だっけねぇ。ここにくる途中に川があったから釣りでもしてくれば?俺はここの守りしながら木馬でも彫ってるからさ」
「釣りねぇ……。あいにくとそんな気分じゃなくてよ。お、そうだ。ここはひとつ、手合わせしようぜ」
クー・フーリンは持っていた朱槍を俺に向けた。その瞳にはギラギラとした闘志の火が点っている。似たような瞳を持つアカイアの大英雄を思い出し、げんなりとした。
「半神相手って俺にとっちゃ死亡フラグなんですけどー」
「そういやアンタの死因はあの駿足の小僧だったな」
「そうだよ。鎧の隙間から喉笛を刺されてね。まあ、もう過ぎたことだけど」
過ぎたこと。口で言うのはこんなにも簡単だ。今だって抱えきれず、形容もできない気持ちが足枷のようにまとわりついてる。石のように放り投げられたらいいのに。そんな憂さを小石に込めて俺はあいつに石を投げている。