あどけない面影(あなたを愛せたら) ギノの部屋には写真が数枚飾られている。デジタルフォトフレームじゃなく、今では珍しいフィルムカメラで撮ったものだ。そこには小さな犬と戯れるギノがいて、そこに確かに彼の面影はあるのだけれど、どうもしっくり来なかった。それでもこの写真を撮った誰かはギノを心から愛していたのだろう、構図は美しく、賞にでも送ればいいのに、と思ってしまうほどの出来だった。でも、俺は聞いたことがない。旧一係の皆で撮った写真の横に置かれた自分の幼い頃の写真を並べる彼が一体何を考えているのか、それを尋ねたことはない。
「ママー! ママどこぉ! ママー!」
行動課も参加した海外調整局のチャリティで、迷子が数人見つかった。彼らは皆デジタルデバイスを持たされているから親の発見は容易だったのだが、それでも広い会場だ、中々親子の感動の再会とはいかない。俺たちは自分たちのブースを終えて暇だったから監護を請け負っているのだが、鳴き声の輪唱には少し気が狂いそうになる。子どもだから仕方ないというのに。
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