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    koto_yurano1476

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    見る専ですが、時折文章書いてます。
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    koto_yurano1476

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    書けば出ると信じて書いたジェイ監です。
    次回イベント(渚のセレブレイト)の始まる前の控え室での一幕という感じで書きました。
    22日に萌え死する予定なので、今のうちにアップしておきます。
    早く来て欲しいけど、来たら死んでしまう…イベント楽しみですね!

    #twstプラス
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    #ジェイ監
    jayJr.

    『紺青のベールに触れた日』「はぁ……どうして、こんなことに……。似合ってないし……結婚式なんて、参加したことも無いし……自信ないな……。」

    淡く陽の光が差し込む控え室。
    壁に沿って並べられたドレッサーの前に立つユウは、ため息混じりに呟きながら、大きな姿見の前で身じろぎもせず佇んでいた。
    彼女が身に纏っているのは、深い海のような青を基調としたドレス。
    光の加減によって藍にも紺にも見える上品な布地は、落ち着いた印象を与え、胸元には繊細なレースが施されている。
    ウエストには淡いブルーのサテンリボンが柔らかく結ばれ、裾には銀糸で描かれた花の刺繍が、風も無い室内でそっと揺れていた。
    普段は男装姿が定着しているユウにとって、この姿はあまりにも異質だった。
    ただ着慣れないだけでなく、動きにくく、守りも効かない。
    どこか落ち着かないその姿に、鏡越しに視線をそらしながら、口をへの字にする。

    「やっぱり、今からでもオンボロ寮に帰るしか……」

    控えめな声でそう呟いた瞬間――。

    「ダメですよ。手伝うと仰ったのですから、最後まできちんとお付き合いください。」

    不意に背後からかけられた低く澄んだ声に、ユウの肩がぴくりと跳ねた。
    驚いて振り向いた先に立っていたのは、見慣れた制服姿ではなく、漆黒に近いスーツを身に纏ったジェイドだった。
    彼の胸元には真珠のピンブローチが控えめに輝き、きちんと上げられた前髪の下の瞳が、冴えた光を宿している。
    その姿は、まるでどこかの上級貴族のように洗練されており、年相応の学生とは到底思えない気品があった。
    思わず目を奪われてしまいそうになったユウは、自分でも無意識に首を振り、無表情を取り繕うように表情を整える。

    「ジェイド先輩。ここ、女性用の控え室なんですけど。」
    「ええ、承知しています。ですが……あなたの後ろ姿が、あまりにも美しかったもので。つい。」
    「つい、じゃないですよ。っていうか、美しいって……。どう見ても“馬子にも衣装”ってやつです。」

    そう言いながら、ユウはそっぽを向いて再び鏡へと視線を戻す。
    その頬にはわずかに朱が差していたが、彼女自身がそれに気づくことはない。
    鏡越しに見る自分は、どこか気恥ずかしさと違和感の塊だった。
    そんな彼女の背後へ、ジェイドが静かに近づく。
    そして両の手でユウの肩をそっと包み、柔らかな声音で言葉を紡いだ。

    「本当に、美しいですよ、ユウさん。いつもの凛とした制服姿も素敵ですが……今日のような装いも、思わず見惚れてしまうほどです。」
    「……からかってますよね、それ。」
    「とんでもない。本心です。」

    彼の声に嘘はない……けれど、どこまでが本気で、どこまでが冗談なのか分からない。
    それがジェイドという人間だった。
    静かで、丁寧で、柔らかく、何より読めない。
    アズールやフロイド以上に、心の底が見えないのだ。
    そんなジェイドの言葉に困惑しながらも、ユウはふと、彼の視線が窓の方へ逸れたことに気づく。
    レースのカーテンが、微かな風に揺れていた。

    「……あなたが、誰かの隣で誓いの言葉を交わす日。僕は、こうしてただ……その姿を見るだけなのでしょうかね。」

    ジェイドはそう呟きながら、ふわりとカーテンを摘まんで持ち上げると、それをユウの頭上にそっと掛けた。
    まるで、即席のベールのように。

    「な、に……?」

    驚きに硬直するユウの目を見ながら、ジェイドは微笑みを浮かべ――どこか切なげな声音で告げる。

    「ほんの少しだけ、夢を見させてください。もしあなたが“僕の”花嫁だったら、なんて。」
    「……はい……?」

    それは、あまりに不意打ちの言葉で、ユウの表情が一瞬で崩れる。
    目を見開き、唇が震える。
    ジェイドはその様子に微笑むと、彼女の手を優しく取り、そのまま片膝をついた。

    「――ユウさん。あなたを迎えに参りました。今日から、どうか、僕の隣で生きてくれませんか?」
    その声は真剣で、誠実で、少しだけ不器用で――けれど、目だけは冗談を許さぬほど真っ直ぐだった。
    それを見て、ユウの理性は一瞬吹き飛びかける。

    「じょ、冗談……ですよね……?」
    「ええ、冗談です。……“今のところは”ですが。」
    「はあぁっ!?なんですか、“今のところは”って!」
    「ふふっ。ユウさん、顔がトマトのように真っ赤ですよ。」
    「誰のせいですかっ!」

    思わず怒鳴ってしまった声を、ジェイドが立ち上がってそっと指先で撫でるように遮る。
    そしてそのまま、頬に触れた手は、彼女の耳元へと導かれる。

    「……いつか、今日という夢の続きを、見てもいいでしょうか。僕だけの、花嫁として。」
    「ッ……ずるいですよ、先輩。そんな言い方……。」

    言葉にならない感情に、ユウは視線を伏せ、頬を紅潮させながらスカートの布をぎゅっと掴む。
    ジェイドはそんな彼女の仕草ひとつで、心の揺れを読み取る。
    そっと額にキスを落とすと、彼女の細い身体を優しく抱き寄せた。

    「――では、“いつか”は、僕にください。あなたの全部を。」
    「……ダメ、です。」
    「おや。ダメですか?」
    「だって……私たち、ただの先輩後輩、ですし。」
    「では、その“ただの”を越えるお返事を、今すぐいただいても?」
    「だーかーらっ!そういうところがずるいんですってば!!」

    結婚式の始まりを告げる鐘が、遠くの広間から鳴り始める。
    その音を聞きながら、ジェイドは微笑んだ。
    大切な彼女の戸惑いと、真っ赤な顔と――すべてを、愛おしそうに見つめながら。
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