the far shore 春、夏、秋、冬。
うんざりするほど多様な姿を見せるこのヴァイガルドには、四季があった。ついこの間までしとしとと降り続いていた雨はすっかり忘れ去られ、眩しく照りつける太陽が空の真上でうるさく主張していた。
もしもこの移り変わりを、ヴィータの短い人生に重ねるとしたら、きっとこの夏は生命力に溢れた、あのくらいの年頃を云うのだろうと、少し先の水しぶきを見ながらカイムはぼんやりとそう思った。
「おお、我が君…まったく、日差しにも負けぬほど、眩しくおられますな……」
いつもの飾りの多いセリフもこのむっとした熱気の最中では、蜃気楼のように霞むよう。しかしこれでも、まだ涼しくなったほうだ。木々、山々に囲まれたここは、王都の先の北、避暑地としても人気のある湖水だった。
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