似ても嬉しくはない『英雄とはなんだろうか』
そんな話を振ったのがどっちだったか。
熟考するタイプのようだし、レオーネさんだったかもしれない。
いや、場の空気を適当に良くしようと、考え無しに話を振るのが癖になりつつある私の方だったろうか。
ともかく、明確な答えの出なさそうな、そんな話が先ほどから続いていた。
私は多少飽きつつあった。
「英雄なんてものはどの時代にも存在していた。
君の生きる現代にだって、多くはないだろうが何人かは思い当たるだろう?」
「まぁ言われてみればそうですけども」
「ここにいるのだって立派な功績を残してきた人ばかりだ、当然君も含めて。」
「…………なんだか自分は含まれてないみたいな言い方しますね…?」
「…そうかい?でも自分で自分を英雄だと名乗るのもなかなか勇気が要ると思うよ、俺は。」
そんなあなたのお兄さんは、初対面で堂々と名乗りを上げておられましたけどね。
いや別にいいんですけど。
「つまり何が言いたいかって言うと、英雄なんてのはどの時代に何を結果として残しても、誰も彼も価値は変わらないってことさ」
空返事がバレてたらしく、微笑みと共にまとめられた意見が返ってきた。
だが、その答えには私に思うところがある。
「求められるものは同じってことですね。
助けてほしい。手を差しのべてほしい。」
「…?」
話が終わることを想定していたのだろう、レオーネさんが困惑したような顔をしているが気に留めず続ける。
「何とかしてほしい。強い。すごい。かっこいい。あんな人になりたい。……羨ましい。」
「…」
「……あれ、違いました?」
「…君は……」
「……レオーネさんは頼られるの好きですか?」
「……まあね」
「平和な世界好きですか?」
「……………勿論」
「私もです」
私はニッと笑ってみせた。
向こうは笑っていなかった。