ミラの話ー1ー
俺の髪の毛は小さい頃は両親と同じで金髪だったんだよねって言うと大抵の人は若干驚いた顔をする。
染めたんじゃ無いの?と聞かれたときに俺は笑いながら言うんだ、この毛先はある時から淡い青色をしてるんだよと。
大体はそこで話が終わるんだけどさ?たまに詳しく教えて欲しいって言う人もいるんだ・・・教えたいと思わない限り俺は教えたことが無いんだよね?だって、突拍子も無いし嘘だと思われるのがいつもだからね?ねぇ、本当に聞いて後悔しない?
俺、この話をして友人が去った事があるから、後悔しないって・・・・離れないでいてくれるって分からないと話したくないんだ。
・・・・分かったよ、覚悟はあるんだね?なら、話すよ・・・リヴィエラさん。
ー2-
あの時は些細なことだから気にしなくて良いと笑っていたミラだが、どうしても俺は気になったのだ。
水鯨の中で眠るミラの毛先が淡く光って綺麗だった事に驚いたのもあるが、それ以前に悲しそうに笑ったミラが何を抱えてるのかを知りたいと思ってしまった。
そして、後悔をしないかと聞いてきたミラの表情は泣きそうな顔をしていて、そんな表情は見たくなくて抱き寄せれば大人しく俺の背中に手を回して、最後に小さな声で話すよ・・・リヴィエラさんと言われた。
ー3-
じゃあ、どこから話そうかな・・・・俺はね、昔から海が好きだったんだ。
家からも海が近かったのもあるのかな?だから、本当に小さい頃から海で遊んだりする事が多かったんだ。
ある日、父さんに海で遊んでくると言った日に普段は止めておけと言わない父さんが「今日は高波が来るかも知れないから止めておきなさい」って言ったんだ・・・でも俺はどうしても海で遊びたくて、父さんが書斎で読書をし始めて母さんが昼食を作ってる隙に外に抜け出して海に行ったんだ。
ちょっと、そこで父親のいうことは聞いとけとか言わないでよ。
海に着けば、波なんて一切無くて静かな浜辺でさ?父さんも冗談がキツいなって思って、何時もみたいに靴を脱いで海に入ってのんびりとしてたんだ。
目を瞑りながらのんびりと海に浸かってた・・・数分か数十分はいたのを覚えてるんだけどね?
突然全ての音が聞こえなくなったんだ、そして強い何かに引っ張られる感じがして目を開いたら、高波に飲み込まれてたんだ・・・流石に幼いながらにも死んだなって思ったよ。
その後は意識が途切れてさ?本当に死んだな、終わったなって思ったんだけどね・・・どれくらい経ったかなんて分からないけど、目が覚めたんだ。
大きな何か、いいや・・・あれは鯨が俺を助けくれたんだよ。
驚いて一度目を閉じて次に開いた時にはとても綺麗な人がいたんだ・・・可笑しいと思うだろ?でも、忘れられない記憶なんだ。
その淡い青い髪をした綺麗な人は俺に対して「鯨に愛された者か・・・貴殿の死を悲しんだ鯨が一度だけ、助けて欲しいと願った」って言ったんだ。
あははっ、そんな驚いた顔しないでよ、リヴィエラさん。
漠然とやっぱりあの高波に攫われて死んだんだなって10歳だった俺は理解して泣きたくなった。
「鯨に愛された者よ・・・貴殿は確かに死んだが、とある鯨が助けてと願い命を差し出した・・・その命を貴殿に与えれば、生き返るだろうが少し変わるかもしれない、それでもお前は生き返りたいか?」なんて言われたらさ、生きたいって言いたくなっちゃうじゃない?だから、俺は生きたいって言ったんだ。
「叶えよう・・・次に目が覚めた時には生き返って浜辺にいるだろう・・・ミラ・ケートス、次に死んだ時は俺の眷属だと言うことを忘れるな」って綺麗な顔をして嗤ったんだ。
そして、綺麗に嗤った人はこう言った「俺の名はウェール、お前を影ながら見守ろう」と耳朶に触れて、その後は意識が遠のいたんだ。
次に目を覚ませば、俺は浜辺に横になってたんだ・・・大勢のレスキュー隊と泣いてる両親が見えた。
あぁ、俺はあの綺麗な人に本当に救われたんだなって思ったけど、やっぱり人ならざるモノって怖いね・・・ピアスなんてしてなかったのに左耳には水鯨の様に青くて、ウェールと名乗ったあの人みたいな、青色のピアスが開いてたんだ。
後は微かに見えた毛先が淡い青色になっている事に気がついたよ。
変わった事は海がもっと好きになったのと、溺れなくなった事かな?
「まぁ、こんな感じかな・・・気持ち悪いでしょ?」
リヴィエラさんがどんな顔をしているのか、気になったけど俺はリヴィエラさんの顔が見れなかった。
だって、気持ち悪いという表情をしていたら立ち直れる気がしないから、だから俺は静かに立ち上がればいつものように明るい声で言うんだ。
「それじゃ、俺はそろそろ部屋に帰るよ・・・またね?リヴィエラさん」
歩き出すけど動き出す気配がないから、やっぱり話さなきゃ良かったなと思いながら部屋から出ようとすれば思い切り手を引っ張られて、そのままリヴィエラさんの腕の中に収まっていた。
「気持ち悪いなんて思うわけ無いだろ」
「あはっ、無理しなくて良いんだよ?一度死んでるなんて怖いでしょ」
「怖くない、むしろミラ・・・お前がいなくなる方が俺は怖いよ」
そう言ったリヴィエラさんの腕は微かに震えていて、あぁ本心から言ってるんだなって分かって思わず笑いそうになったけど嬉しさを噛み締めて言葉を紡ぐ。
「リヴィエラさん、俺が死んでも泣かないでよ?」
「泣く自信ならある」
「あははっ、最期の時まで側にいるよ」
ー4ー
何故、戦わないで欲しかったと言われたか
いつの日か死んだら神様の眷属になるという事があるというのを知ってるのはミラだけの筈なのに、両親は何となく、ミラが何かに愛されたからこそ戻ってこれたのだと分かったからこそ、死ぬかもしれない仕事について欲しくないと思っていたという事からの
ミラには戦って欲しくなかったという言葉。
そして、ミラを助けて欲しいと願った鯨は(ディフダ)である。
その鯨の願いを叶えたのが海にいた鯨の神様(ウェール)だったというね。
だから、ミラのサブスタンスの名前は2つのディフダウェールって名前なんだよね。
なんの縁があったのかな?という話。