2016年9月
【寝起き】
広い背中にくっつき目を覚ませばボサボサの髪が見える。寝返りをうち見えた顔にはヒゲが伸びている。キラキラしてヒゲまで綺麗だ。ザリザリと触っていると硬い感触が押し付けられる。「リヴァイ」と低く掠れた声で呼ばれ男の先生を知っているのは俺だけ…。
【温泉】
隣で気持ちよさそうに湯につかる姿にあの頃は風呂に入る事もしなかったなと思い出し嬉しく思う。「なあエルヴィン、温泉っていいもんだな」ああそうだな。しっとりと濡れた髪。ほんのり赤く上気した肌。無防備になっているリヴァイも見れるなんて最高だよ。
【おいしい】
放課後の家庭科室。コネコネと捏ねる手つきをヨコシマな視線で見ているとは思いもしないだろう。「今日はお月見だからな。ダンゴだ」「とても美味しいよ」そう言えば少し俯いて顔を赤くする。まだ幼さの残る頬が色づきキミの方がもっとおいしそうだ。
【バカンス】
働きすぎだと連れてこられた南の青い空。「俺と一緒じゃ休んだ気にならねえだろ」「スーツ以外のリヴァイを見ると俺は凄く休みを感じるぞ。夜は何も着ないしな」「…そうかよ」何処へ行ってもキラキラなてめえと陽気な陽射しに照らされて溶けちまいそうだ。
【運動】
運動会の借り物競争。リヴァイは一番にお題の書かれた紙を取ると猛ダッシュでエルヴィン先生の元へ向かう。「ループタイを借りたい」「私のでいいのかい?」こくりと頷きゴールへと走り去る。くしゃりと握られた紙に書かれていたのは「好きな人の持ち物」
10月
【月】
闇夜のような黒髪と透けるように白い肌は見上げてくるシルバーグレイの瞳を月のように思わせる。「先生どうし…」「月は人を惑わすんだよ…」昼間には見せることの無い笑みを浮かべ小さな身体を引き寄せれば月明かりに照されて延びた影が一つに重なる。
【サプライズ】
「おい」デスクに向かうエルヴィンに声をかけ視線があがると唇を重ねる。「驚いたか?誕生日だろ?」「ああ…ではこれを」差し出された小さな化粧箱。「主役はてめえだろうが」「だからリヴァイの人生をくれないか?」「クソッ逆サプライズじゃねえか」
【彼シャツ】
エルヴィンのシャツを着たリヴァイ。袖は三つほど折り返し裾は局部を覆う程長い。「このままヤんのかよ」「お前のシャツを汚して怒られたからね。なら俺のシャツを汚せばいい」「…脱ぎゃいいだろうが、悪趣味な野郎だ」「褒め言葉として受け取っておくよ」
【初めての○○ 】
嫌悪を感じたその行為は次第にヨくなり身体をドロドロにしていく。乱暴に揺さぶっていた男は金の頭を項垂れさせて縋るように触れながら何度も「リヴァイ…」と名を呼ばれれば心も溶かされていく。こんなにキモチイイのも誰かを愛しく思うのも初めてだ。
11月
【読書】
エルヴィンは読書を始めると周りが見えなくなる。お陰で俺はそのお綺麗な顔を眺め放題なのだが…。長い指先で撫でるように捲られるページ。伏し目がちな視線は艶を帯び、たまに長く吐かれる吐息が耳を擽る。そんなに本がいいか?早くこっちみねえかな
【風邪】
「寝坊か?珍しいじゃねえか」「机で寝てしまったようでね、このザマだ」気だるげに横たわり小綺麗な顔には無精髭が生え、乱れた前髪、熱に潤んだ瞳は青くギラつき凄まじい色香を放っている。「寝ていろ」そんな顔でウロつかれちゃたまったもんじゃねえ
【風邪】
放課後。様子の違ったリヴァイを呼び出すと脱力したように抱きついてきた。「先生…熱ぃ…」服の上からでも体温の高さが伝わり、鋭い眼光も熱に浮かされトロリとしている。「今夜はウチに来なさい…」荒い呼吸にドキリとするが風邪のせいだと言い聞かせる。
【帽子】
スウェットと同じ色のグレーのニット帽を目深にかぶり物陰に潜む。ある曜日のこの時間に必ず通る小柄な少年。刈り上げにした黒髪と学ランから覗く白いうなじが眩しく艶かしい。「ねえキミ、落とし物を一緒に探してくれないかな」やっとあの子が手に入る。
【帽子】
白くなり始めた森の中を大きな男鹿が小さなアライグマを背に乗せて歩く。狩りも十分できたしこれで冬も越せるだろう。「てめえも俺も雪の綿帽子みてえだ」紅葉のような手で立派な角に積もる雪を払いフルリと身体を震わす。
急いで寝床に帰るとしよう。
12月
【囁く】
仕事から帰ってくれば待っていましたとばかりに抱き込まれ耳元で囁かれる。こんな時は大抵オネガイだ。「小遣いなら3日前にやったが?」「昨日、スッちゃってね」「…」「ちょっとだけ、な?」財布ごとぶん投げたくなるようなイイ声しやがってクソが!
【香り】
「顔もよけりゃ匂いまでイイんだな、このクソ金髪野郎」「子ネズミかと思えば貴族も足元に及ばない清廉さに恐れ入ったよ」胸ぐらを掴み太い首筋に、艶やかな黒髪に顔を埋め肺を満たすように息を吸う。いけ好かない相手だったのに今では互いの香りが起爆剤。
【記念日】
年末に向け怒濤の激務が一段落し灯りの落ちたオフィスにイルミネーションの光が差し込む。「すまない、何の用意もできなくてね。プレゼントは俺だ、なんて冗談だよ」「いや、それでいい。俺も欲しいと思ってた」「リヴァイ……」二つの影が重なる記念日。
【視線】
「そんなに見てんじゃねえよ」「つい見惚れてしまってね」「奇遇だな、てめえも見てて飽きねえ」
絡まる指先と肌と肌。擦れ合う粘膜と粘膜。こうするようになるまで然程時間は要さなかった。蒼穹の青と月夜の銀灰。視線が交わった瞬間から互いに落ちていた。
2017年1月
【色】
「い、加減に…しやが、れ…ッ!」白い肌に赤を散らし触れた所は熟れたように濃さを増す。素直な反応につい夢中になる。睨み付けてくる瞳を覗けば薄く張った膜で潤み冷たい銀灰も蕩けるようだ。シーツに踊る黒髪をそっと撫で色づくお前に溺れそうだよ。
【学ぶ】
カップに琥珀の液体を注ぐと少し角がある香りが広がる。「リヴァイのようには淹れられないな」「筋はいいぞ」「他にコツはあるのか?」「注ぎながら美味しくなあれと思っている」「…お前にはまだ学ぶ事が多いな」エルヴィンは赤くなった顔を手で覆った。
2月
【我慢】
空き部屋に入り込み性急に口を抉じ開けられ厚い舌に蹂躙される。「はは、ダメだな。お前を見ると抑えが効かない」「早く行きやがれ」閉まる扉にタメ息をつく。こんな事しやがって夜までもつならいいじゃねえかこっちはてめえのせいで我慢が効かねえんだよ。
【唇】
「…っ」プリントを渡そうとしてピリッとした痛みが走り血が滲む指先を眺めていると口に含まれた。「!」「舐めておけば治るよと思ったが潔癖症だったね、すまない」固まる俺に謝ってくれたがそうじゃねえんだ。先生の唇が柔らかくて驚いちまったんだ……。
【温泉】
温泉と聞いても顔をしかめるのはお前くらいだろう。貸し切りという言葉で説き伏せ今に至る。「どうだ?」「ああ、悪くない」のぼせたのか湯酒のせいかトロンとした雰囲気に蕩けた身体はどんなだろうかと反応を隠せない。ここでか戻ってからか葛藤が始まる。
3月
【味見】
目の前に現れた自称インキュバスだという黒髪の小柄な男。「神父のくせにキスがうめえじゃねえか。イイ匂いさせやがって早く飲ませろ」「悪魔と言われたら祓わないわけにはいかない。俺のやり方は特殊でね。最後まで意識を保てていられたら味見させてやる」
【キス 】
週末は部活の後に先生が連れ出してくれる。買い出しだったり外食だったり。誰かに見られないよう遠くまで行くから帰りは送ってくれる。帰りたくない。離れたくない。運転席に座る目線の低い先生に屈むように近づく。触れる事はできないガラス越しのキス。
【刃】
森がざわめき銃声が轟く。愚かな輩が来たのだ。小さい彼を探すと「シャー!」と威嚇する声。子供が逃げ遅れてしまったんだね。駆け降りる速度のまま跳ね飛ばし容赦なく角を突き立てる。動物は武器を持たない。だが愛しい者の為にならこの身全てが刃になる。
4月
【惚れる】
止まってしまった腕時計を持ち古びた時計屋のドアをくぐる。「すみません、直りますか?」「掃除すりゃ動くな。大事にしてんだな」「父の形見で」「年代物だがいいモンだ」部品一つ一つを丁寧に扱い全ての物を慈しむような姿に目も心も奪われてしまった。
【ファッション】
「勿体ねえなあ、何着ても似合うだろうに」長い手足に厚い胸板と高身長。抜群のスタイルを隠すグレイのスウェットの背中をつつく。「急に何?服?まだあったかな、スーツ着ようか?」「……いや、いい」考えただけでダメだ、格好良すぎて直視できねえ……!
【朝】
カーテンの隙間から差し込む光。背中に当たる異物感。「おい、ナニ硬くしてやがる。散々ヤっただろうが」「これは生理現象だよ。だがおさまりがつかなくてね」「ちっ…絶倫野郎が」いい思い出がなかったがベッドで寝るのも悪くねえと思わせたのはこの男だ。
5月
【クラバットとループタイ】
「は……んっ!」「……リヴァイ、痛い。タイを掴むなと何度言えばわかる?」「シャツ握ったら皺になるだろうが」「誰も皺くらい気にしないよ」「なあまたコレ付けんのか?」「ああまだ痕が残っている」「チッ」誰も知らないループタイとクラバットの使われ方。
【秘密】
夜更けの執務室。音も無く動く影を捕まえる。「そんなに知りたいか?ならギブアンドテイクでいこう。お前の秘密も話せ」「あ?俺にそんな物あるわけねえだろ」「ならイイ所を教えてもらおうか」「てめっ……!!」こんな話、素面では聞けないだろうからな。
6月
【誓い 】
今生でももう一度と願った相手が目の前に。「今度は俺も誓う。ずっと一緒にいよう。リヴァイ、お前もまた誓ってくれるか?」「……当たり前だろうが!このクソ野郎っ!!」飛び付く小さな愛しい身体を抱きとめる。二度と離さない。互いに向ける永遠の誓い。
【旅】
大騒ぎとなった式の後、外に出れば真っ白なオープンカー。「まさかコレに乗れってんじぁねえよな?」「リヴァイとのハネムーンだぞ?これくらいしないと。お手をどうぞ、honey」「そーかよ。頼むな、だーりん」笑いを堪え甘く濃密な時間へと走り出す。
【はじまり】
偶然に見た椅子の上でその小さな身体を抱えるようにしている姿とか。思わず目にした倒れるようにしてベッドに横になり苦悩しているような寝顔だとか。一度意識すると気になって仕方がない。それはまるで転がり落ちるよう。はじまりはいつも些細な事から。
【はじまり】
「確かにこの学校に赴任してくる教師がいた。だがソイツの名前はエルヴィン・スミスじゃねえ。先生、あんた何者だ?」「ハハ!まさか勘づかれるとは。元、いや、掃除屋さん。さあゲームを始めようか」柔和な瞳が強く見開かれ作業着だけの背中に汗が流れた。
7月
【願い】
月の光に照らされ山の一角が蒼に染まる。様々な動物たちが竹林へ集まり短冊代わりに笹の葉を取り想いを乗せて川へと流す。「いいか?」「いいぞ」大きな雄鹿の背から降りると小さなアライグマは二枚の葉を放つ。願い事は『てめえといつまでも一緒に』
【和】
縄師と呼ばれる者に縛られると痛みなどはなくただ快楽だけがあるという。的確に配置された結び目が身動ぐだけで凄まじい刺激となり黒髪の小柄な男の身体が震える。流れ落ちる滴が畳に染みを作り金髪の男は愉悦に満ちた笑みを浮かべ蝋燭の灯りが陰を落とす。
【びしょぬれ】
しくじった。バケツの水を捨てようと植え込みにかけたらまさかアイツが居たとは。「あははは!気にするな、キミを誘う口実ができたんだ。今夜付き合ってくれるね?」びしょ濡れの髪をかきあげギラつく眼に気圧されちまったが頷いちゃいけねえやつじゃ……。
【28】
乗り換え待ちに構内のトイレへ連れだって向かえば個室へと押し込まれた。
「なにしやがっ」
「リヴァイ、したい」
「は?」
「疲れ、とやらだな」
「停車時間は?」
「28分だ」
「チッ、ほら出せ」
「いれたい」
「てめえ……さっさとしろ」
発車まであと……。
8月
【熱帯夜】
「リヴァイ」
「明日仕事だ」
「リヴァイ、ヤりたい」
「ベタベタになんの嫌なんだよ」
「エアコン寒いってつけてないからもう汗かいてるだろ?」
「あ、オイ!……っ!!」
エルヴィンの野郎あっちいんだよ、クソっのぼせそうだ……。
【セーラー】
スカーフを靡かせた少年が愛する人を取り戻すためその身を賭けて金髪碧眼の893に挑む。魅惑の清掃員に迫られ教師は教え子との愛を貫けるか。謎のニートに憂いを帯びた保育士。絡む想いは全て愛の為に。
「セーラー服と逆手ブレード」
~公開未定~
【セーラー】
俺は今セーラー服を着ている。それもディスカウントショップの薄っぺらではなく本物だ。
「女呼べばいいだろ」
「わかってないなあ、りばいくんが着るからいいんだよ」
「変態」
跨いだスウェットの下の硬い感触に昂る自分も同じだ。
【ポマード】
「それ必要か?」
フワフワとした金糸がコームで馴染まされた油でカッチリとしていく。
「皮肉にも人員不足のおかけで随分と早く団長になれたからな。箔つけだよ」
こってりとした香りは大人の男を醸す。乱してやりてえな、この色男が。
【ポマード】
片手で容器を開け、二本の指で掬うと髪に撫でつける。
「何でもできんだな」
「そうでもないさ、拭いてくれるかな?」
油でヌラヌラと滑る指先。無意識に喉が鳴り「何を想像した?」とニヤリとされる。
わかっているくせに嫌な野郎だ。
【祭り】
「おにーさん、一本どう?」
プシッと音を立てて差し出されたラムネのビン。
「いや、小銭が無いので」
「いいよ、この後つき合ってくれれば」
金髪をゆるく固め片腕で派手な柄シャツの胡散臭そうな男なのにその青い瞳に頷いてしまった。
9月
【くいせん】(分隊長×ゴロつき)
入団してからも避けられたままどうやって距離を縮めたものか。
「リヴァイ、明日非番だろう?酒でもどうだ?」
「断る」
「命令だ、部屋に来い」
チッ。アイツはダメだ。あんな眩しく激しいもんに触れたら身も心も焼き尽くされちまう。
【ベルト】
「おい!やめろっ……あっチクショウ!」
身体は抑え込まれガチャガチャと音を立ててベルトだけはずされる。
「よく動く手だな」
「手先は器用なんでな、手早く済ませる」
くそっ相変わらずデケぇな……。
この男には抗えない。
【試験】
上位者だけがプリントされた用紙が貼り出される。そこに名前があるのを確かめると社会科準備室のドアをノックした。
「学年で一位とれた」
「よく頑張ったね。約束のご褒美をあげよう」
カチリと鍵を鳴らしこれでやっと先生の……貰える。
【夫婦】
「なあエルヴィン、茶碗も湯飲みもなぜ1つ小さいんだ?」
「夫婦茶碗といって夫婦になったら揃いで使うんだ。リヴァイの口は小さいだろ?だからだ」
「そうか」
ふっと和らぐ表情に顔が熱くなる。お前のチョロさに一生悶えるのだろうな。
【食欲】
拾ったニートが吸血鬼でこれがまた厄介だ。
「お帰り。早く待てない」
仕事から帰るなり抱き込まれ下半身をまさぐられる。
「昨日もシただろうが!この大飯食らい……っ」
「食欲旺盛と言って貰おうか。ではいただきます」
秋の夜も長い。
10月
【夜】
夜の帳が降りて辺り一面を隠す。こんな何も見えない外には誰も出てこないだろう。
折り重なる大小二つの影。
室内では差し支えがある時。服が汚れてしまうのが難点だがどうせ声が抑えられないなら誰ともわかりずらい此処の方が都合がいい。
【準備】
「食えねえモンとかあんのか?」
「いいえ、管理人さんが作るものなら何でも食べられます」
「そうか。甘えモンは?」
「人並みに」
「わかった、気いつけて行ってこい」
「はい」
申請書で見た生年月日。さて、準備を始めるとするか。
【本】
本棚に背を預け夢中で文字を追う青い瞳。
「坊っちゃんは本が好きだな。たくさん読んで損は無い。受け売りだけどな」
「うん、面白い。りばいに教えた人に負けないくらい読むよ」
金髪の少年は微笑む。
(それはなエルヴィン、お前のことだ)
11月
【紅茶】
俺の分のカップを置くとリヴァイはソファの向かいに座る。カップを持ち薫りをかいでから口に含みコクリと喉に通すと心底嬉しそうに柔らかく息を吐き目元を緩める。眠る事をせず湯にも浸からない男に唯一安らぎを与える紅茶に嫉妬しそうだ。
【制服】
「あれ?脱がないの?いつも汚れるのイヤだって言うじゃん」
「着るの最後だから。制服のまましたい」
りばい君なら卒業してもいつまでも着れると思うけど。ま、確かにホンモノなのは今日までだからな。一度その黒を白くしてみたかったんだよね。
【眼鏡】
身体のラインに合ったスーツ、金髪を綺麗に整えた姿は隙がなく完璧だがかけられたシルバーフレームが柔和に感じさせ昼間は頼れる良き上司だ。
だが夜も更けベッドに上がればそのレンズの奥の瞳が深く濃く獰猛な碧になるのを俺以外誰も知らない。
12月
【白or黒】
遥か昔。戦場には天使と悪魔がいた。
黄金の髪と美しい長身の体躯は人々を惹きつけ死地へと導いた。
冷たい相貌をした小さき深暗は怖れられたが何者をも赦し安らぎを与えた。
そして出会った二人は手を取り消えたという。
白い悪魔と黒い天使。
【スーツ】
就業時間も過ぎたオフィス。人気のないフロアのミーティングルームで小さな身体を組み敷く。
「どういうつもりだ?皺になんだろうが」
「ずっと気になってた。スーツは着崩してこそだよ」
軽口が効いたのかフッと緩んだ薄い唇にむしゃぶりついた。
【一緒】
可愛がりすぎた身体はかわいそうなくらい反応をみせる。学校では控えめに話しているがベッドの上では必死に名を呼び続けその違いがたまらない。
「せんせ、い、一緒に……」
「リヴァイはイイコだね」
のしかかるように抱きしめ一緒のぼりつめる。
2018年1月
【初夢】
クラバットをほどきシャツのボタンをはずす。
「なあシようぜ?」
ズシッと腹の上にのられ薄い唇が首筋に触れる瞬間、目が覚めた。
年の始めになんという夢をとエルヴィンは頭を抱える。妙にリアルな重さと温もり。今夜彼を呼んでみようか……。
【雪】
冷たい空気にふるりと震え目を覚ます。
「さみい、閉めろ」
窓枠に腰掛けビールを煽るグレーのスウェットの男。
「雪が降ってきたからさ、雪見酒してた。冷えちゃったからもっかい暖めて」
缶を放り投げ布団に潜るとまだ熱い身体に入り込む。
【コスプレ】
「また着てくれねえか?」
やや興奮気味に渡された服を受けとり着替えを済ませると飛びつかれる。
「弾力のある膨らみに凄ぇ反り、たまんねえ!」
ギュウと抱き締め豆の形をしたその感触を楽しむ。そうリヴァイはエルヴィーノにハマっている。
2月
【猫】
「おいで、エルヴィン。なあいつ本物に会えるんだろうな」
庭先で金色に近い毛を毛繕いしていると小さな黒猫が飛び込んで来る。じゃれあう二匹。
「リヴァイ、ダメだよ。勝手に入ってすみませ……」
互いに焦がれた姿がそこに。猫がつれてきた縁。
【左手】
「なあエルヴィン。俺はお前が片腕になって苦労してるってえのに食われたのが右手でよかったと思っている酷でえ男だ」
「いいや、俺も嬉しく思っているよ」
互いの左手を合わせその存在を確かめるように重ねる。それは二人だけの永遠のリング。
【惚れる】
薄暗い場所で生まれ育ち色といえば女たちが唇にひく紅だけ。
見慣れないヤツらが動き回っていると警告されどんな輩だと探りを入れるまでもなく見当がつく。
長身のベルトを巻いた服装。緑のフードの奥にある金と青を見た時からきっと俺は──。
【看病】
地下という環境は悪いが一定した気候だったからか地上に出た頃のリヴァイはよく体調を崩した。
「具合はどうだ?また椅子で」
「……構うな、おい!」
「ダメだ、ちゃんと休め」
ベッドに押し込み手を握れば小さな舌打ちの後に寝息が聞こえてくる。
3月
【太陽】
焼けつく陽射しに抜けるような青い空。
「コンニチハ。一人?」
声をかけられ見れば太陽の光を反射したようなブロンド。派手なアロハシャツが胡散臭くも様になっている。
「ガイド、いる?」
「ああ」
あてもなく来たんだ身を焦がすのもいいだろう。
【可愛い嫉妬】
夜会の話がくると呼んでも来ないような彼が毎夜部屋で待っている。普段はしないのに自ら唇を合わせ跡をつけようとするのがたまらない。
「可愛い嫉妬だね」
「チッ俺のは重い」
もう少しお前にそうさせたいから何も無い事はまだ黙っていよう。
【結婚しました】
結婚したとお堅い教師の弟が連れてきたのは身体の付き合いをしていた少年だった。
「兄さんまたそんな格好で」
「ハジメマシテ。お義兄さん」
「ヨロシク、りばいくん」
知らぬ顔して緩いスウェットのズボンをあげる。
これは先が楽しみだ。
4月
【花見】
課の花見にも飽きた頃。
「花見のし直しをしないか?」
アイツの誘いに乗ったのがいけなかった。
「クソッ騙された」
「酷いな、絶景なのは本当だろう?」
高層マンション。揺さぶられながら眼下に広がるは桜の絨毯。桜の花びらのように白濁が散る。
【チャームポイント】
大きな鹿の背中を小さなアライグマがよじ登る。
「いつみてもデケエ角だな。今日も俺が磨いてピカピカに毛繕いもしてやるからな」
「器用な手だね。モサモサした毛も気持ちいい」
互いの特徴は好きな所。鼻先を合わせクルクルと鳴く。
【おめかし】
新しくオーダーした夜会服。タップリとポマードをつけ髪を流し普段はつけぬ香りも纏う。
「随分とめかしこんでるじゃねえか。どこの美人をタラシこむんだ?」
「ご婦人も、だ」
「気の毒にな」
誘惑の色を宿した濃青の瞳に堕ちない者はない。
【木漏れ日】
清掃員という大企業に学校施設など合法的に入れ人探しにもうってつけだと就いてみたが早々うまくはいかないもんだ。
新しい配属先のハイスクール。
広大な敷地の一角で掃き掃除をしながら思いを馳せれば春の木漏れ日に輝く金髪の長身に出会う。
5月
【お出かけ】
「何処か行くか?」
「リヴァイのバイクに乗りたい!」
「……また親父さんに叱られるぞ」
「違うよ、あれは帰りが遅かったから。ほら、メットも買って貰ったんだ」
「そうか。じゃあ行くか」
「うん!海に行きたい!」
「了解だ、エルヴィン」
【わんわん】
学校が終わり互いの家につくと始まるアソビ。
「わんわんごっこをしよう」
どうやらアイツは舐めるのが好きらしい。しつこく嬲られすっかり主張するようになった胸の飾り。
「コッチもいい?」
「ソコは……!」
そんなトコまでこの犬野郎め。
【ネクタイ】
「なあ先生、もう授業はねえんだろ?」
「……ネクタイを引っ張るんじゃない」
「ジッパー下げたらどうなっているか見たくねえのか?」
「まだ職員会議がある」
「わかった、それまでな」
タメ息と熱い吐息。清掃員さんのお楽しみな休憩時間。
【セクシー】
ワイヤーを引いて空中に放り出される小さな身体。だが不安定になる事がなく恐ろしい程によく動く。捻る腰、降り下ろされる腕、マントから覗くバネのようにしなやかな全身はなんてセクシーなんだろうか。リヴァイの飛ぶ姿は何度見ても興奮する。
6月
【抱きしめる】
連日の徹夜続き。
「寝ねえのか?」
「ああそうだな、リヴァイが抱きしめてくれたら眠れそうだ」
視線は書類に向いたまま。適当な事を言いやがって。
少し崩れた金髪を抱え込めばピタリと動きが止まる。
驚いたか?ざまあみろ。早く寝ちまえ。
【寝る】
金髪で無精髭の男は煙草を放ると見かけない学ランの少年に近づく。
「ココが何だか知ってんの?オジサンとネル?」
「寝る?そんなんでいいのか?」
「そう、ネルだけ。お金欲しいんでしょ?」
そんな意味も知らないで。頷く少年に口元を歪める。
【事後】
汗どころか顔色ひとつ変えない男たちが体液まみれになり肩で息をし頬を上気させ悩ましく眉間に皺を寄せる。
「あぁ……クソっ!なんて面してんだ」
「汗で濡れたお前はとびきりヤラシイよ」
互いにしか見せない姿とは果てる程の高揚をもたらす。
7月
【七夕】
「チッ、一緒に居たって溺れやしねえってのに」
「まあそう言うな仕事をしていれば一年なんてあっという間さ」
「時間がねえんだ、さっさとヤるぞ」
「そうだね、思う存分楽しむとしよう」
離された二人が年に一度交われる日。今年も濡れる天の川。
【アイス】
「締めにアイス食うなんて変わってんな、先生」
「飲んだ後は甘いものが食べたくなってね」
コンビニのソフトクリームを大きな口で頬張る姿に悪戯で口づけすれば冷えた口内は案外気持ちよく、押さえ込まれて互いの温度が馴染むまで貪られる。
【癖】
乾いた発砲音。振り下ろされたナイフを銃身で受け止める。
「指、引っかける癖直ってねえんだな」
「お前こそ手癖の悪さは変わらないぞ」
「こっちはどうなんだ?」
「確認してみるか?」
股間を撫で互いの獲物を取り上げると胸倉を掴み唇を合わす。
8月
【ずぶ濡れ】
久しぶりのどしゃ降りの雨。建物の影に踞っていたずぶ濡れの大きな男を拾った。
「片腕ねえのか?」
返事は無かったが担いで連れて帰った。まずは風呂に放り込み洗ってやればくすんだ髪がキラキラになる。目が覚めたら面白い話が聞けそうだな。
【視線】
銀灰の瞳は静かなようで色をよく変える。口数が少ない分、余計に目は口ほどにものを言ってくる。
ガラス細工みてえな青い目ん玉はこっちまで見透かそうとしやがる。口も達者だが黙ってても眼がうるせえ。
視線が合っただけてどうにかなりそうだ。
【深夜】
「まだ終わらねえのか?今も昔も変わらねえな」
「そうでもないさ。昔はお茶だけだったが今はリヴァイ自身が癒してくれるだろう?」
「前もだろうが」
「そうだったな」
肩を寄せ耳打ちするように笑い合い紅茶の香りを楽しんだ後は二人の時間。
【デート】
「海、見たことねえのか?」
「ないんだ」
「そんなに遠くねえ、行ってみるか?」
「いいの?!行く!」
夏休み前に転入してきた金髪の少年。青い瞳をキラキラさせ見せてやりたいと思った。
着替えとタオルと少しのお金を持って。初デートは海へ。
【宿題】
「一緒にやらないか?」
そう誘われ暫く会えない寂しさが吹っ飛んだ。だか真面目に取り組んでいれば休みも半ばでほぼやり終えてしまう。
「よし、明日からは遊ぼう!」
「毎日か?」
「毎日だ!」
新たな口実は心踊らせ長い夏休みはまだまだ続く。
【宿題】
「どんな感じ?見せて」
コクコクと頷く黒髪の少年の頬が赤いのは暑さのせいだけじゃない。
「もう取りてえ、なんかヘンだ」
ズボンと下着をおろした真っ白な双丘の間にはあやしげな器具。
「反応してきたね。まだまだ続けるよ」
僕だけの観察日記。