指切り。嘘をついたその時は、稲妻に平和が訪れた次の日。
起きてから一時間が経過したというのに、私は未だふわふわとした感覚に包まれていた。
(当然か)
目狩り令の真実、淑女との死闘、そして影……。
現実感がまるでない体験をしたのだ。今日一日、ずっとこんな姿を晒しているかもしれない。
まあこれくらい許されるだろう。旅人は休憩、明日からまた頑張る。
寝転がり、煎餅の入った袋をズルズルとだらしなく引き寄せる。宵宮に勧められて中毒になっているお菓子だ。
(にしても、ほんと良かった)
外から聞こえてくる人々の明るい声に微笑んだ。これからの稲妻は見違えるほど素敵な国になる。確信があった。私は影と八重神子の邂逅をこの目で見たのだから。
(何度も死にかけたけどほんと良かった)
8244