かたわら「大般若さん、お話があるんですが」
「ああ、なんだい?」
「また……引っ越そうかと思って」
「……そうかい」
あのアンティークのテーブルが売れてから半年経った。相変わらず客足は途絶えず、親戚筋の方の往来も増えた。彼らはいろいろな国を飛び回っている人が大半で、そんな中一人この店を構えている大般若さんは本当に天然記念物のようだと思った。
私はそんな大般若さんが好きで、でももうここにはいられないと思った。
「行く当てはあるのか」
「ひとまず実家に身を寄せようかと。母が足を怪我して以来歩きづらくてしょうがないとこぼしているのもあるので、手伝いに」
「そうか。ご母堂の健康を祈っているよ。もちろんあんたのも」
「ありがとうございます」
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