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    おたぬ

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    おたぬ

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    猫な🍁❄♀

    東雲家にて飼われている元野良の彰人は、家猫でありながら拾われる前のように外に出て散歩をするのが日課であった。今日この日、彼が目指すのはここ最近ずっと通い詰めているとある家。猫の彰人は家の大きさなどまったく興味はないが、きっと人間から見れば豪邸であろうそこである。尻尾をピンと立てて家々の塀を伝い歩いていくと、お目当ての家が見えてくる。彰人は1階の窓を見下ろせる庭先の木に移動して、そっと腰を下ろした。

    (………いた)

    見えたのは日当たりのいい窓辺に丸まって、気持ちよさそうにすよすよと眠る1匹の雌猫。首輪が埋まってしまうほどふわふわとした毛はよく手入れが行き届いており、大層大切にされていることが伺える。

    ここのところ、彰人は彼女が気になって仕方がなかった。どうこうしたいという訳でもないが、猫なのにずっと家の中にいて、まったく出てこない彼女のことが。そうやって眠る彼女を眺めて、目が覚めたらそっと立ち去る。そんな自分でもよくわからないことを繰り返していた。



    (………また、来てる)

    ガサガサと木の葉の揺れる音に、ピクンと冬弥の耳が揺れる。元々眠っていた彼女にはいつからかはわからなかったが、1匹の雄猫が庭によく来るようになった。彼は特に何をするでもなくこちらを見つめ、そして彼女が彼を見ようとするとどこかに消えていってしまう。何がしたいのだろうか、と冬弥は首を傾げた。が、それと同時に彼のことが気になった。去り際に首輪が見えたから、彼は自分と同じ飼い猫である。なのに、かの雄猫は外を悠々と自由に歩いている。狭い部屋に閉じこもっている自分と違う生き方をする猫。

    (話してみたい)

    外の世界とは、どんなものなのか。それは冬弥の中に生まれた小さな好奇心。だから冬弥は彼が来る時間を見計らい、鍵の閉められていない窓を器用に開けて外に出た。出てしまった。そこが危険な場所であるとは知らずに。



    (………いない?)

    いつものように彰人が木の上から窓辺を見るとそこに彼女の姿はなく、観葉植物のプランターだけが鎮座していた。はて、どうしたのだろうか、と考えていると、下から威嚇の声が耳に届き、何事かと目を向ける。そうして飛び込んできた光景に彰人は息を飲んだ。

    そこには怒りを顕にした大柄な黒猫と、気圧されて震える彼女の姿があった。

    (あの黒猫は……)

    そいつには見覚えがあり、彰人の記憶が正しければこの辺りで幅をきかせている生粋の野良だったはず。この家の庭まで縄張りにしていたのかと、彰人は苦虫を噛み潰したような気持ちになった。

    彼女の耳は可哀想なほどペタリと後ろに伏せられており、怯えているのがわかる。当たり前だ。安全な家の中しか知らないような家猫が、野良の気迫に勝てるはずはない。彰人は木を飛び降りて、まっすぐ彼女の元へと駆け出した。
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