Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    おたぬ

    @wtnk_twst

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🍁 ❄ 🍰 🍪
    POIPOI 122

    おたぬ

    ☆quiet follow

    🍁が欲求不満になりやすいDom/Sub🍁❄

    Dom、Subと呼ばれる2つからなるダイナミクスは、一般的にDomの方が欲求が満たされやすいとされている。それはSubの意思に関わらず、DomにはSubを支配する力が備わっており、また、そうすることで欲が満たされるDomが割合多く存在しているからだ。それとは逆にSubが己の欲求を満たすことは難しく、そのダイナミクスの特性ゆえ、体調を害してしまうことも多々あり、欲求を完璧に満たしてくれるパートナーに出会えることは非常に稀であるとされていた。だから、Subと違い、Domが欲求不満に苦しむことはあまりない。そういったイメージを持たれている。

    (……その、はずなのだが……)

    どこまでも広がる青空が気持ちいいお昼休み。旧校舎近くのベンチに座り、売店で購入した昼食を食べ終えた俺は腰に巻きついた腕をひと撫でして、ふぅ、とため息をつく。自身よりも背の高い俺を膝に乗せ、後ろから抱き締めている彼は「うー……」と苦しそうに小さく唸りながら、俺の背にグリグリと頭を擦り付けていた。

    「……彰人」

    その様子に心配になり声をかけてみるが、腕に力を入れられ、さらに強く抱き締められるだけ。どうやら今回は相当参っているようだ。

    「彰人、辛いなら軽いコマンドを出してくれてもいいんだぞ?」
    「…………いや、ダメだ」

    見かねて、彼が最もしたいであろう、普段なら学校では控えているそれを促してみるが、少しの逡巡の後、きっぱりと断られた。けれど、辛いことは辛いようで、また小さな声で唸り始める。

    世間が持つ『Domの欲求は満たされやすく、Subの欲求は満たされにくい』というイメージは、たしかに本当ではあるのだろうが、俺と彰人に限ってはそうではなかった。欲求とひと言に言っても、その方向性、求めるものは様々であり、だからこそ互いに満たせる関係を築くのは難しいとされる。その中でこんなにも相性のいいDomに出会えた俺は、とても幸運なのだろう。

    サッカーで疲れた彼に、冷たい飲み物を用意してあげる。汗をかいたら、それを拭うタオルを。ネクタイが曲がっていれば直してあげて……そして、彰人と同じ夢を見て、それを叶えるために日々、共に歌を歌う。たったこれだけで、俺の『尽くしたい』という欲求は満たされていく。彼のコマンドを受けたいという我儘が時々顔を出してしまうこともあるけれど、それも彰人は嫌な顔せず、俺の信頼を受け取ってくれた。そんな彰人のおかげで、Subが満たされないことの多い社会に住みながら、俺の欲は日々の暮らしの中で自然と満たされている。

    これで、パートナーである彰人も満たされてくれていたらよかったのだが、さすがにそう上手くはいかない。彰人はよく俺を褒めてくれるし、世話も焼いて、甘やかしてくる。それこそが彰人のダイナミクスの方向性であり、欲求なのだ。しかし、俺と違い彼の欲求はかなり強いもののようで、日々のやり取りでは満たしきれなかったものが、突然爆発してしまうことがある。

    彼曰く「もっと甘やかして、もっと褒めたい」のだそうだ。
    俺としては十分甘えさせてもらっているのだが、彰人からすればまだまだ足りないらしい。こうなった彼は本格的にプレイをしなければ収まらない。

    「彰人、今するのが嫌なら、今日は練習を休んでホテルに行こう」

    校内であっても軽いコマンドであれば問題ないが、どうしてか彰人が妙に嫌がるため、今度は代替案として放課後にホテルへ行くことを提案してみる。今日も練習の予定ではあるものの、こんな状態では何も身につかない。それならいっその事、欲を満たしてスッキリしてから明日、今日の分も頑張ればいい。そう思ってだ。けれど、俺の背中に当てられた頭はふるふると横に振られる。

    「いくらドロップのないDomでも、欲を溜めすぎるのは体に毒だぞ」
    「…………週末……」

    ポツリとそれだけを言うと、彰人はまた俺を抱き締めて黙ってしまう。週末は何かあっただろうかと思考を巡らせてすぐに、主催に呼ばれて参加する予定のライブが週末であることに俺は行き着いた。ライブが終わり次第、すぐにしたい、ということのようだ。

    「それまでもつのか?」
    「……もたせる」

    俺を甘やかし、褒め殺したくて堪らない欲求を必死に押し殺している彼の声に、今すぐコマンドを出してくれればいいのに、と、そう思う。そんな俺の疑問を察した彰人がおもむろに俺の手を取って優しく握り、口を開く。

    「1回やったら止められそうにねぇし。お前、始めたら即行スペース入って暫く戻って来れなくなるだろ……ここじゃスペースに入ってくれても、落ち着いてケアしてやれねぇし」

    だからやんねぇ。そう言って、自身の肉体に溜まる不満を吐き出すよりもパートナーであるSubを気遣って耐える彰人の優しさ、強さに、俺の内にあるダイナミクスが大きく声を上げた。

    彰人にすべてを委ねたい。彰人に自分のすべてを明け渡したい、と。

    Domの欲は満たされやすい、なんて、周りの大人達は言うけれど、それはきっと嘘だ。だって、俺のDomはこんなにも、俺を求めてくれるのだから。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖❤😭👏🙏👏👏👏☺💗💗🍌💖😭☺
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works