一刻も早く会いたい。本当はもうひとときだって離れていたくない。そんな気持ちで日々過ごしているのは、自信の無さの現れだと思う。
不死川実弥は今世、次男として生まれた。鬼に家族を奪われ、最愛の弟だけを残し、仇敵と戦い続けた前の人生の記憶を抱えて。ただ一人、せめてお前だけは幸せになってほしいと願っていたのに、逆に実弥を守って死んでしまった弟、玄弥。兄弟なのだから幸せになってほしい気持ちは同じだと、散りゆく中で伝えながら。
愚かだった。願いが同じならば、ずっとそばにいて手を離すべきではなかったのだ。二人を隔てる体質ゆえにそばにいられないと離れて守ることを決めたけれども、結局失ってしまったのだから自分の選択肢は間違っていたのだろう。神が微笑んだのは、手を離さなかった者達だけだったのだから。
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