脱走者。 何処か知らぬ人も住めなくなった外の世界で、命懸けで逃げ延びた主人公は倒れていた。
「りゅーが!おい、りゅーが!しっかりしろって!なぁ!頼むよ!くっそ……俺を機械にすんなら筋力ぐらいもうちょっと増やしとけっつーの……っ」
機械ゆえに意識も外装も無事であったテルアキが竜牙を抱え、廃れ誰も住んではいない一つの空き家になんとか転がり込み、状態を確認する。あれだけ出血しているはずにもかかわらず、相棒の外傷はかすり傷程度しかなさそうに見える。だが彼は目を覚ます様子もなく、ぐったりとしたままだ。
「っ、どうしたらいーんだよ……!!」
死んだはずの自分を勝手に機械として生かしておいて、自分は逃げ出すだけ逃げて死んでしまうなど冗談じゃない。メンテナンスには高度で緻密なエンジニアの技術が必要不可欠でもあるし、第一自分にももう家族という家族はいないのだ。だからこそテルアキはこの手を離さず外へと出たのだから。死なれては自身の精神的にも肉体的にも多大なダメージだけが蓄積するということは考えずともわかる。どうしたものかと周囲を確認してみても、大半の人間、それもエンジニアなどという職種につく人間は滝臼竜牙のように、あの人工都市へと居住と職場をとっくに移している。
4172